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四本場32

 東三局、ドラ③。親は木村。

「うーん結構差がついちゃったなぁ。親で何とかしたいところだけど……」

 現在一九八○○点持ちの木村は三着である。沙夜は三九七○○点、ほぼ二万点差である。ここで逆転とは行かなくともせめて親満ツモで点差を縮めたいところである。

 親連荘したい木村であるが、九巡目に沙夜が中野の捨てた八で手を倒した。


三四五六七①②③④⑤⑥5()


「ロン、三九○○の一枚……」

「あいたダマテンか」

 リーチして警戒されるより、三面張でもダマテンで確実に和了を取る。この点差なら無理をする必要はないのである。

 暫定二着だった中野もこうなると苦しくなってくる。沙夜以外は僅差である為、こうなれば焦点は二着争いになってくる。

 東四局、ドラ東。親は中野。

 現在の点棒状況は以下の通り。


奥方 一七八○○

沙夜 四三六○○

木村 一九八○○

中野 一八八○○


 沙夜以外はほぼ和了って二着である。四着の奥方でも二○○○点以上なら二着である。中野は親満直撃でも逆転出来ず、奥方は跳満を直撃しても沙夜を逆転出来ない。

「沙夜ちゃんダントツだねぇ」

 木村はパネルに表示されている点数を見ながらそう言った。

(今こそ早く和了る時……)

 役牌の対子でもあれば喰い和了りは自分の十八番だ。沙夜はそんなことを考えながら配牌をめくった。


八九②③③④1466南北北


 喰い仕掛けが効きそうにない為、手格好としては絶好とは言えないが、七対子か平和に出来れば守備も効くだろう。

 沙夜は2をツモり、1を切った。

 木村の第一打は5であり、チャンタか、あるいは染め手であろう。どうやら逆転狙いらしい。

 木村以外の二人からは一二○○○点を喰らっても逆転とはならない為、警戒すべきは木村だ。沙夜はオーラスの打ち方の方向性を決めた。

 八巡目、沙夜の手牌は以下の形になった。


②③③④④2466南南北北 ⑤


 索子が重なるか②引きなら文句ナシの七対子だったのだが筒子が順子で二面子になってしまった。七対子を追うならツモ切り、または24のどちらかを落とすことになるが、沙夜はしばらく考えた。

(このツモならこの手は七対子じゃない……)

 沙夜は七対子受けではなく、両嵌受けになる6を切った。

 次巡ツモったのは、ズバリ狙い通りである3であった。役無しだが聴牌である。

 沙夜は卓上を見渡した。

(中野くんが南を一枚切ってる……北はまだ見えてないから多分北家の店長が一枚以上は持ってる……)

 木村は捨て牌からして萬子で染めているらしく、字牌の捨て牌は一枚も無く、一巡前に九が手出しで捨てられていた。聴牌の可能性ももちろんなくはないが、字牌の捨て牌が一枚もなく門混聴牌は考えにくい。好くて一向聴だろう。

 となると、リーチを掛ければ、対子でない限り回りたくなった木村が自風である北を出す可能性はある。

 木村からの跳満直撃の可能性はあるが、一向聴での自分の選択はミスにならなかったし、この手には自信がある。沙夜は6を捨て、曲げた。

「リーチ」

「ダントツからリーチか……うーんキツいな」

 木村はツモり、たまたま現物が引けたようで、そのままツモ切った。

「今日のセンパイは乗ってるからな……とりあえず」

 そんなことを言いながら中野も現物を切った。奥方も現物である。

 一周して、沙夜は盲牌しながらツモった。

(字牌……?)

 幾何学的な図柄ではないことが指先から伝わって来る。沙夜はツモった牌を見た。その牌は發であった。

 和了り牌ではない為沙夜はそのままツモ切ろうとしたが、ふと河に三元牌がほとんど出ていないことに気付いた。

(出てるのは中野くんが切ってる中一枚だけ……何だかざわざわする……)

 沙夜を不意に悪い予感が襲った。しかし和了り牌ではない為ツモ切らなくてはならない。

 初牌の發が場に飛び出した。

「……ポン!」

 若干の間があり、発声したのは木村である。木村は何とドラの東を叩き切ってきた。混一色狙いで字牌のドラを切るとはただ事ではない。

 その東に対しては誰も発声しなかった。

「ドラは通るのか……」

 中野は切りきれなかったのか、手出しで東を合わせ打ちした。更に奥方も抱えていたらしく、東を合わせ打ち。

(混一色狙いでドラを切ったってことは……?)

 混一色対々和役役、で跳満である。

 沙夜を取り巻く悪い予感が増してくる。沙夜はツモった。

 ツモったのは、白であった。

(……!)

 再びの初牌である。沙夜の予感は確信に変わった。

「ロン!」

 木村は勢い好く手を倒した。


五五六六七七白白中中(發發發)


「大三元にはならなかったけど、混一色小三元で跳満!これで逆転だ」

 木村はこれまでにない、満面の笑みを浮かべていた。

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