二本場2
商店街通りを通って駅へと向かう。近年地方の商店街といえば衰退の一途を辿っているといわれているが、この商店街は中々どうして、平日休日を問わず人で溢れている。
駅を起点に東西に伸びる目抜通りを軸として、ちょうど八木アンテナのような形で路地に店舗が並んでいる。
目抜通りには主に日用品や食料品などの生活物資が売られている店が立ち並ぶが、路地に入ってから並ぶ店の方が、エンターテイメント性が強い。
古着屋や古本屋、レコード店にアクセサリーショップ、麻雀部で好く行くクレープ屋もその内の一つである。
そんな雑多な喧騒の中を歩くのもまた楽しいものである。たまに知らない路地にも入ってみたくもなる。彩葉は駅に向かって歩きながら、両脇に伸びる路地を横目に見物していた。
(そう言えば及川さんが中野くんと行った雀荘もこの路地の店だと言っていましたね)
見当も付かないがこの界隈にはどのくらいの雀荘があるのだろう。彩葉はふと気になった。
といっても実際に数えてみるのは休日でないと無理であろう。彩葉はそんなことを考えながらある一画で足を止めた。
彩葉が立ち止まったのは、目抜通りに置かれている内照式の看板の前であった。かなり年季が入っているらしく、隅の部分のアクリルが割れ光が漏れ出している。
その看板に書かれていた屋号が、『麻雀倶楽部 花菖蒲』であった。更にその下に『御一人様からでも遊べます』と一文が添えてあった。
(確か及川さんから聞いた店名は竜王……ということは少なくとも二店舗はある、ということですね)
屋号の横に矢印が伸びている。矢印の先に伸びる路地に店舗があるらしい。
麻雀は死ぬほど打てるが、未だに雀荘に入ったことはない。基本的に十八歳未満は入店出来ないはずだ。しかし中野が出入りしているような例外もあるらしい。
麻雀は部活で打てるため特に雀荘へと行く必要もないのだが、競技ルールとは違うルールならばまた違った打ち方に開眼できるという可能性はある。
例えば東風戦の店なら短期決戦となるため無駄なくテンパイするための手作りが鍛えられるだろう。また金銭の授受が発生するわけだからその緊張感たるやインターハイの比ではない。駆け引きや心理戦も学べる。
彩葉も基本的にテンパイ効率重視のデジタル打ちであるが、勝負をしている相手が人間であるという角度から研究したことはなかった。
要するに、人間である以上全てを計算だけで打つことは出来ない。確率は下がっても高い手を狙いたくなるだろうし、心理的に追い込まれれば考えられないような暴牌をしてしまうこともあるだろう。
麻雀に限らず、人間対人間で行う勝負事にはその辺りにもつけ込んでいく為の技術がある。
自分はテンパイに向かう為に最短のルートを考え、テンパイ出来そうにないと判断すればオリて振り込まないようにするという二進数のような打ち方が多い。
それでも今までは勝てていた。
しかし先日見た中野の打ち筋は全くの逆で、ストレートにテンパイ出来ないという流れの悪さを逆用して勝利を掴んでいた。
あれには目からウロコであった。




