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相合傘 -千春と千秋 そのⅠ-  作者: 関戸守
プロローグ

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1/15

1.

 中学生か高校生の頃、僕と同じような場面を経験した人も多いと思う。そう、例えば昼休みに、教室の黒板に、ふざけて白いチョークで相合傘を書いて、「こいつとこいつが付き合ってるのではないか」と、ハートを生やした傘の下、()の両側に、愛し合っているであろう二人の名前を書くようなことが。

 僕は直接、そんなことに巻き込まれた訳ではないが、そんな場面を、学生時代に何度も見た。当時の僕は、色事にはあまり関心のない、そこら辺によくいるような、女の子とは照れて会話はほとんどせず、男友達とだけつるむ普通の男子学生だったので、遠くからそんな騒ぎを、当時の友人と、ああ、またやってるな、と、何となく眺めるだけだった。

 そんな僕は、特に大きな夢もなく、しかし幅広く様々なことを知ることは嫌いではなかったので、大学は教養を幅広く学べる――いわゆるリベラル・アーツ系の学部に入った。

 大学では、それなりに友人もできたし、軽音楽のサークルに所属し、兄から譲り受けたギターを文化祭などで掻き鳴らしていた。それで、少しは女子にモテたのかもしれないが、あいにく恋愛に感心がない状態は続いていたので、彼女ができるとか、そういうことはないまま、大学三年生の前半を終えた。

 その大学三年生からしなければいけないことといえば、就職活動である。ところが、大した目標もなく、漫然と生きてきた僕は、まず「何がしたいのか」さえ分からなかった。両親は普通の共働きサラリーマン、兄は音楽で生きることを志して海外に行ったが、僕はそこで(つまず)いてしまったのだ。

 そんな折、僕は街をふらついていたが、そこでたまたま、不動産会社の横を通り過ぎようとした。その時、目に飛び込んだのが、別荘を持ちませんか、という広告だった。

 別荘といえば、まず思い浮かぶのが軽井沢の地だった。僕は何を思ったのか、翌日、都心から高崎線、信越線、そしてバスを乗り継いで、軽井沢に向かった。どうしてそこに足が向いたのか、今でもよく分からない。

 分からない、が、一つ、確実に言えることがある。そのことが、僕の人生を変えてしまったとは。もっと言うと、冒頭に相合傘の話をしたが、僕がその相合傘を構成する一部になってしまったのである。しかし、学生がやりがちなあの遊びとは、全く違う形で。

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