【第15話】オクタビア様成分100%! ほっぺた防衛戦(完全敗北)
一方、私オクタビアはそんな事が繰り広げられているとは知らず、呑気に爆睡していた。
ドアが開く音に気づくが、まだ心地よい微睡み中だ。目が開かない。誰かが優しく呼びかけている。
いや、語りかけている。
「オクタビア様、今からおじーさまたちがお越しになりますよ。可愛くドレスアップしましょうねー」
『おじーさま? えっ? 祖父って事? 達って、祖母とかも来るのかな? 私にいたんだ、神様の親って事? そこまで神話の事詳しくないし、どんな人たちなんだろー?』
そんな事を考えていると、完全に目が覚めてきた。
『あっ! リコだ! リコー! あうー! リコー! あうー!』
私は抱っこして欲しくて、リコに両手を伸ばして抱っこのポーズをとった。
リコは目を丸く輝かせて嬉しそうに、膜の中に両手を突っ込んできて、私をそっと抱き上げた。まずは股間の匂いを嗅ぎ、うんちしてないか確認した。そして次にお乳を出して、私の反応を確認した。
私はさっきリーンから飲ませてもらったばかりなので、そんなにお腹は減ってなかったけど、せっかく出してもらったのが申し訳なかったのと、リコへのご褒美として少しだけ咥えて、笑いかけた。
「キャキャ!」
「そうですか、そうですか。このリコの事が大好きなんですね。あー、オクタビア様ー!」
リコはめっちゃ嬉しそうだ。
「ゆっくり飲んで構いませんよ、オクタビア様。ポセイドン様とアムピトリーテー様は、オクタビア様を優先してくれとのお達しですから」
その時、またドアが開く音が聞こえた。リコが私を抱っこして、ドアの方を向いた。
あの酢味噌ジョークの女性とリーンが、さっきリコが言っていた通りに何やらドレスを何着か腕にかけて入ってきた。
「おっ! オクタビア様、起きてらっしゃる! はーい、オクタビア様の大好きなライカ来ましたよー!」
ライカと名乗ったその女性は、私の足を突いて覗き込んでくる。
『あなた、ライカって名前なのね! うん、ライカも大好きだよ!』
「キャキャ!」
と、私は笑って答える。
「いやいや、オクタビア様ー! 大好きなリーンがきましたよー!」
そう言ってリーンが、私のお腹をくすぐってくる。
『うんうん、リーンも大好きだよ!』
また私は笑って答える。
すると、二人は場所取りで押し合いしはじめた。
「ちょっと! ライカお姉ちゃん! どいてよー!」
「あなたこそどきなさいよ!」
「はいはい、オクタビア様がびっくりされてるじゃないの。ここは仲良く行ったら良いんじゃない?」
抱っこしているリコがなだめると、二人は顔を見合わせた。
「おねー様、そうしましょう」
「お姉ちゃん、そうだね。それがいいかもね」
リコはもう私が離していたお乳をしまって、私のほっぺたに自分のほっぺたをスリスリし始めた。
『うん。これ、私ピンチかも。三人に同時は経験ないよね』
「お姉ちゃん! オクタビア様の体勢よろしくね。それじゃぁ、公平にじゃんけんしましょうか」
「いいですね」
「よし! それじゃぁいくよ! じゃんけんぽん!」
『えー! ちょっと、私の体の場所の奪い合いでじゃんけん始めちゃったよー! 怖いよー! 三人の目が、獲物を狙う肉食獣みたいにマジだよー!』
「よーし! 一抜け! じゃあ、私は抱っこしたこのまま、オクタビア様の右頬をいただくわ!」
勝ったリコが宣言する。
『次はライカとリーンの一騎打ちだ』
「じゃんけんぽーん!」
「やったー! じゃあー私は、オクタビア様の左ほっぺたもらうねー!」
リーンが勝ち誇ったように喜ぶ。
「いいもーん。私はオクタビア様のお腹グリグリと、髪の毛スーハーしちゃうもんね!」
負けたライカも負けじと宣言した。
「よし、オクタビア様! 私たちの愛を受け取ってください!」
もうそれからは、私は痛いわくすぐったいわで、完全にオモチャになってしまう。なすすべなく完全に諦めた。
『いたたた! キャキャキャキャッ! いたたた! 息が! 息ができない! いたたた! 顔がもげる! 顔の皮が剥げちゃうよー! 頭の薄い毛も剥げちゃうよー! いたたたーーい!』
それでも不思議と、三人の私に対する愛情を感じてしまうのだった。
『てか、いつまで吸ってるのー! 死ぬー! 死体をオジー様達に見せる気かー! いたたた! あいたー!』
「あー! オクタビア様成分補給完了しましたわー!」
リコが満足そうに、私に頬擦りをする。
私ことオクタビアはもう息も絶え絶えなのだけど。
『ねえ? リコ、私のほっぺた、まだある? 千切れてなーい? なんかびろーんってなってない? ねえ、髪の毛は? 大丈夫?』
「あう! あう!」
と、私はリコに文句を言う。
それを見たライカが、
「そうです、オクタビア様。あうーあうーですね」
と言い、それに続くように、
「あーオクタビア様! そんな可愛いお声を出されたら、もう私リーンも!」
そう言ってリーンがまた、お腹に顔をグリグリと振動させてくる。
『うわー! もう限界!』
「キャキャ! キャキャ!」
『息が、息が! 息ができないよー! だめだ、これエンドレスに続いてしまう』
私はもう声を出さないように、寝たふりをすることにした。
「まあ! オクタビア様の寝顔、なんで可愛いのでしょう! 最後に、最後にもう一回オクタビア様のほっぺたを! ほっぺたをー!」
そう言ってまた、ほっぺたにライカが吸い付いてきた。
『あーもう、だめだこれ。この人たちに何をしても、私のほっぺたは守れないのね。諦めの境地だわ、もう』
天井を見つめる私の瞳からは、スッと光が消えていた。
『しかしやっぱり、この痛みも伴う彼女たちの行為に悪意が全く感じられないし、なぜだか逆に嬉しい気持ちで一杯になる私がいるのよね。えっ!? ひょっとして私、M気質なのだろうか?』
『いやいや、そんな事あるはずないよね。肌を通して伝わってくる彼女たちの異常なまでの熱量と、優しい声の振動……。ただただ、この人たちの愛情が本物だって伝わってくるだけなのだろう』




