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15.歌が裁く逆境の中で

朝日が昇り、神詠騎士団の訓練場が活気に満ちている。

セリアはレオン副団長の指導を受けながら、歌の制御訓練を続けていた。

昨日よりも力の流し方がスムーズになり、光の暴走もほとんど見られなくなっている。


「よし、いい調子だ。歌の制御が身についてきているな」

レオンが笑顔で褒めてくれると、セリアも嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとうございます。副団長のおかげです」

「いや、お前自身が努力しているからだ。自信を持て」



その時、訓練場の方で騒ぎが起きた。

「おい、あれって……!」

「異端者が捕まったって本当か?」

「歌詠士を襲ったらしいぞ」

訓練生たちがざわつき始め、セリアとレオンも様子を見に行った。


広場には、騎士団の隊員たちに取り囲まれた男が一人、膝をついて縛られている。

「こいつが例の異端者だ!」

「歌詠士を襲い、魔法の研究をしていたらしい」

その話を聞き、セリアの胸がざわついた。


「まさか、カイルの仲間なのか……?」

リクが不安そうに呟く。

「いや、違う。カイルは一人で行動していると聞いている」

レオンが冷静に答えた。


異端者の男は薄汚れた布をまとい、鋭い目つきで騎士たちを睨んでいる。

「歌は力の解放だ。神の加護なんかに頼るな!」

男の叫びに、騎士たちが怒声を上げた。

「黙れ! 異端の思想をばらまくな!」

「こいつは神詠騎士団に対する反逆者だ!」



団長室に異端者が連行された後も、訓練生たちは動揺を隠せなかった。

「また異端者が出たってことは、まだ攻撃魔法を求めている奴がいるんだな」

「セリアの力も、もしかして異端の歌なんじゃないか?」

「まさか……でも、暴走するあの力って、やっぱり普通じゃないよな」

セリアの耳に飛び込んでくるその言葉に、胸が締め付けられる。



昼休憩になり、セリアは寮の中庭で一人、歌唱杖を握っていた。

(私の力が異端と同じだって思われている……)

自分を信じようと努力しているのに、周囲の視線が冷たくなっていくのが怖かった。


「セリア、大丈夫か?」

リクが駆け寄ってきた。

「うん……ちょっと疲れちゃって」

「さっきの異端者のことで、またみんなが変な噂をしてるけど、気にするなよ。お前はお前だ」

リクが力強く言ってくれるが、セリアはうつむいたままだ。



その夜、レオンがセリアの部屋を訪ねてきた。

「セリア、少しいいか?」

「副団長……」

「異端者の件で、君が不安を抱えているのはわかっている。でも、君の力が異端かどうかを決めるのは他人じゃない。君自身がどう使うかだ」

レオンの言葉に、セリアは目を伏せた。

「でも、私の力が暴走した時、みんなを傷つけてしまうかもしれない……」

「それでも、君が歌う理由は何だ?」

セリアはハッとして顔を上げた。

「私は……誰かを守りたいからです」

「ならば、その思いを貫け。力を恐れるのではなく、どう使うかを考えろ」

レオンの言葉が胸に響き、少しずつ勇気が湧いてきた。



翌朝、団長室から呼び出しがかかった。

セリアとレオンが部屋に入ると、グラン団長が険しい顔で座っていた。

「異端者の男から話を聞いたが、どうやら“歌の暴走”について何か知っているようだ」

「歌の暴走……?」

「奴は『制御できない歌は、神の加護を超えた異端の力だ』と言っている。つまり、君の力を指している可能性がある」

セリアは息を呑んだ。


「君にはもう一度、その異端者と面会してほしい。もし何か知っているなら、真実を聞き出せ」

「わかりました」

レオンが毅然と答え、セリアも小さく頷いた。

「私も行きます。自分の力がどうして異常なのか、確かめたいです」



地下牢に降りると、異端者の男は粗末なベンチに腰掛けていた。

「お前が噂の歌詠士か……」

男はセリアを見上げ、不敵に笑った。

「お前の歌、面白い響きをしてるな。暴走するわけだ」

「私の力がどうして暴走するのか、教えてください」

セリアが勇気を振り絞って問うと、男は薄く笑った。

「お前の歌には“解放”がある。神の加護なんてクソくらえだ。歌そのものが持つ力を引き出している。それが暴走の原因だ」

「歌そのものの力……?」

「そうだ。俺たちは“歌の真実”を求めている。神に依存しない力、真の歌を解き放つためにな」


その言葉に、セリアは深い疑念を抱いた。

(私の歌は……神の加護ではなく、もっと根本的な力なの?)

レオンが厳しい声で問い詰めた。

「その“真実”とやらが人々を傷つけるなら、許すわけにはいかない」

異端者は狂気じみた笑みを浮かべ、つぶやいた。

「お前らにはわからないさ。偽りの加護に縛られた愚か者どもにはな……」

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