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11. 歌が裁く新たな光

朝日が差し込む神詠騎士団の寮。

セリアは窓辺に立ち、朝の冷たい風を感じながら深呼吸を繰り返していた。

(昨日の実験でわかったこと……私の歌が強すぎるから、共鳴が暴走するんだ)

カイルから教えられた制御法を思い返しながら、意識を集中させる。


(力を抑えることができれば、暴走は防げる……)

昨夜、練習していたとき、少しだけ感覚を掴んだ気がした。

(私は……もっと自分の歌を信じていいのかもしれない)



食堂に向かうと、リクがすでに朝食を取っていた。

「セリア! おはよう! 昨日、夜遅くまで歌ってたみたいだけど、大丈夫か?」

「うん、大丈夫。少しだけ制御の感覚がつかめた気がするの」

リクが嬉しそうに笑う。

「それはいい知らせだな! 今日の訓練でも試してみようぜ!」

「うん、ありがとう、リク」



その時、騎士団の鐘が鳴り響いた。

訓練生たちがざわめき始める。

「緊急警報……?」

リクが不安そうに呟いた。


急いで訓練場に向かうと、レオン副団長がすでに指揮を執っていた。

「王都の南門付近に魔物が発生した! 一体だが、異常な魔力反応が確認されている」

訓練生たちの間に緊張が走る。


「討伐隊は既に出発しているが、万一のために後方支援を準備せよ!」

レオンの指示で、歌詠士たちが支援隊として集められた。

アイリスが隊長として指揮を取る。

「支援歌の準備をしておけ。何が起こるかわからない」



やがて、討伐隊から連絡が入った。

「魔物の討伐に失敗! 被害が拡大中!」

報告を受けたレオンが眉をひそめる。

「討伐失敗だと? 状況を確認しろ!」

すると、使者が慌てて駆け込んできた。

「報告! 魔物は“黒炎獣こくえんじゅう”です! 炎を操り、周囲を焼き尽くしています!」

その名を聞いた瞬間、訓練生たちがざわめく。

「黒炎獣……まさか、そんな危険な魔物が王都に……」



「支援部隊、南門へ急行! 怪我人の救護と、前線の強化を行う!」

アイリスが迅速に命令を出し、セリアとリクも一緒に走り出した。

「大丈夫か、セリア?」

「うん……でも、強力な魔物だって言ってたから、気をつけないと」

緊張感を抱きながら、二人は支援隊と共に南門へ向かった。



現場に到着すると、炎に包まれた街並みが目に飛び込んできた。

黒い毛並みと赤い瞳を持つ巨大な獣が、炎を纏って暴れ回っている。

剣士たちが必死に斬りかかっているが、逆に黒い炎で弾かれている。

「なんて強さだ……!」

リクが驚きの声を上げた。


「負傷者を回収しろ! 前線を立て直す!」

アイリスが指示を出し、セリアはすぐに回復歌を歌い始めた。

「――癒しの光よ、傷を包み、命を繋げ……」

光が広がり、倒れていた剣士たちが立ち上がる。

「助かった……!」

感謝の声が聞こえ、セリアは少しだけ安心した。


だが、その時――黒炎獣が咆哮し、周囲に黒い炎を撒き散らした。

「くっ……熱い!」

近くの剣士たちが炎に巻かれて倒れ込む。

「私が回復します!」

セリアが急いで駆け寄り、歌を歌おうとしたその瞬間――。


黒炎獣がセリアに気づき、突進してきた。

「セリア、危ない!」

リクが割り込み、剣で受け止めようとするが、衝撃で吹き飛ばされる。

「リク!」

黒炎獣が再び炎を纏い、今度はセリアを目がけて突進してくる。


(逃げなきゃ……でも、逃げられない!)

絶体絶命の中、セリアは意を決して歌唱杖を掲げた。

「――守護の光よ、護りの壁を作り、炎を断て!」

力を抑えながらも強く歌う。

光の壁が現れ、突進をかろうじて防ぐが、炎が壁を焦がしていく。


「耐えきれない……!」

その時、レオンが割り込み、聖剣クラウディアを振り下ろした。

「光の刃よ、闇を断て!」

剣から放たれた光が黒炎獣を斬り裂き、一時的に後退させた。

「セリア、無茶をするな!」

「すみません……でも、どうしても守りたくて……」

レオンは一瞬だけ微笑み、再び前線に戻った。



「セリア、大丈夫か?」

リクが駆け寄り、支え起こしてくれる。

「うん……なんとか。でも、私がもっと強くなれば……」

悔しさで唇を噛むセリアに、リクが優しく言う。

「お前の歌がなかったら、もっと危なかったんだ。自分を責めるな」

その言葉に、少しだけ心が救われた。


黒炎獣は再び咆哮し、さらなる黒炎をまき散らす。

「これ以上被害を出さないためにも、力を合わせて倒さないと!」

セリアは勇気を振り絞り、再び杖を握り直した。

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