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歌が裁くこの世界で  作者: みずきち


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12. 歌が裁く炎の決意

黒炎獣が再び咆哮し、周囲に黒い炎を撒き散らしている。

その猛威に圧され、前線の剣士たちが次々と倒れていく。

「くっ、なんて強さだ……!」

レオンが必死に聖剣クラウディアを振るうが、黒炎獣の力に押し返されている。


「支援が足りない! 歌詠士たち、もっと強化歌を重ねろ!」

アイリスが声を張り上げるが、焦燥感が漂っている。

セリアは必死に歌を歌い続けるが、力を抑えながらの歌はどうしても威力が落ちてしまう。

(もっと、もっと力を出せたら……)


「セリア、大丈夫か?」

リクが心配そうに声をかける。

「うん……でも、黒炎獣には全然効いてないみたい……」

「歌の力を抑えすぎてるんじゃないか?」

「でも、暴走させたらまた迷惑をかけちゃう……」

自分の力を信じきれないまま、戦場は次第に不利な状況になっていく。



「黒炎獣が突破するぞ! 前線を維持しろ!」

レオンが叫ぶが、黒炎獣が放つ黒炎は剣士たちの動きを封じている。

さらに黒い火柱が立ち、まるでその場全体が灼熱の地獄と化した。

「これ以上は……持たない……!」

剣士たちが崩れ始める中、黒炎獣が大きく口を開け、巨大な火球を生成し始めた。


「やばい……あれを放たれたら、前線が全滅する!」

リクが叫ぶが、誰もそれを止められない。

「どうしよう……どうすればいいの……!」

セリアは絶望の中で叫びそうになったが、その瞬間、頭の中にレオンの言葉が浮かんだ。


『歌を恐れる必要はない。信じて歌い続ければ、必ず答えは見つかるはずだ』


(私は……自分の力を信じるべきなんだ)

覚悟を決めたセリアは、歌唱杖をしっかりと握りしめ、前に出た。

「セリア、何をする気だ!」

リクが制止しようとするが、セリアは振り返り、力強く言った。

「私の歌で、あの火球を止める!」

「無茶だ、暴走したらどうするんだ!」

「でも、このままじゃみんながやられちゃう! 信じて、歌を歌う!」



セリアは目を閉じ、深呼吸を繰り返す。

(私は……誰かを守りたい。そのために、この力があるなら……)

恐怖を振り払うように、口を開いた。


「――炎を断つ風よ、浄化の光で闇を払い、守護の盾となれ……!」

力を抑えつつも、心からの願いを込めた歌が響き渡る。

光が杖から放たれ、黒炎獣の火球に向かって一直線に伸びた。


火球と光がぶつかり合い、空中で衝撃が弾ける。

「があああああ!」

黒炎獣が怒りに震えながら、火球を押し出すが、セリアの歌が力強く反発している。


(まだ……足りない! もっと強く、もっと守りたいって思わなきゃ!)

セリアは歌を続けながら、さらに心を込めた。

「――守護の風よ、光と共に、炎を封じろ!」

光が強まり、火球を包み込み、次第に黒炎を押し戻し始めた。


「やった……!」

リクが歓喜の声を上げたが、その瞬間、黒炎獣が怒り狂い、突進してきた。

「危ない、セリア!」

レオンが叫び、剣を構えて駆け寄る。

だが、黒炎獣がセリアに到達する直前――。

「――炎を浄化し、闇を払い、守護の壁となれ!」

セリアが限界まで声を振り絞り、光のバリアを展開させた。

黒炎獣はバリアに衝突し、そのまま光に包まれて消滅していった。



静寂が訪れ、剣士たちが驚きの声を上げた。

「やった……やったぞ! 黒炎獣を倒した!」

レオンが安堵の息をつき、セリアの方へ歩み寄る。

「セリア、無事か?」

「はい……なんとか……」

力を使い果たし、膝から崩れ落ちそうになるセリアをリクが支えた。

「すごかったぞ、セリア! あんな強い歌、初めて見た!」

「ありがとう、リク。でも……怖かった」

セリアの目から自然と涙がこぼれる。


レオンが優しく微笑んで、セリアの頭に手を置いた。

「よくやった。君の歌が皆を救ったんだ。自信を持て」

その言葉に、セリアは泣きながらも笑顔を浮かべた。



戦いが終わり、王都は再び静けさを取り戻した。

訓練場に戻り、セリアはカイルに報告をした。

「やったじゃないか、セリア。暴走せずに力を発揮できたんだろ?」

「はい。怖かったけど、歌を信じて歌いました」

「それでいい。その感覚を忘れずに、これからも歌い続けろ」

カイルの言葉に、セリアは力強く頷いた

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