第二十七話 種の被害者
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朱美と光希が抱きつきあい、朱美が思いを打ち明け光希がそれで朱美の思いを知ってまた新たに誓いを立てる。そんな姉弟愛を目の前で見ていたハエルは光る球体から人の姿へと戻りコホンと咳払いをして2人に声をかけるのであった。
「えー、姉弟愛を見せつけて頂くのはまたの機会にしていただきたいのですが?こちらもまだ伝えたいことがありますので。」
「み、見せつけてなんかないっ!」
「見せつけるまでもないんだから、このくらいなんともないわよ。」
「いや、朱美姉…何言ってるの…。」
光希のツッコミを受けながらもハエルは、光希のそばにいる朱美に向かって伝えるのであった。
「朱美さん、光希さんは悪魔から執拗に狙われています。それをカバーするために私は彼のそばを離れずについていなければいけないのです。いつ何時にも彼を守れるように。」
「…、光希は悪魔から狙われているんですか?」
「はい。」
「それはなんで?」
「それは光希さんに悪魔が大罪の種を植えていたからです。」
「大罪の種?」
「………。」
光希はある程度前世の記憶で知っているため黙って聞いていたのだが、朱美は初めて聞く単語に頭にハテナを浮かべてハエルに聞いていた。それに対してハエルは大罪の種についての説明をするのであった。
「えぇ、大罪の種とは、人に害を及ぼす七つの大罪の概念を用いて生み出された種のことです。その種は人に植え付けられ、植え付けられた人によってその影響は様々です。光希さんの場合は急に体調が悪くなったりはしたはずです。朱美さまその様なことに心当たりはないですか?」
「あ、あります。」
「それが、光希さんに起きた大罪の種の影響です。」
「っ!!」
「今は私達天使の力により抑制されほぼ浄化寸前ですので安全ですが、もしあのまま何もせずに大罪の種が育っていれば今頃には光希さんは命が尽き亡くなっていたでしょう。」
「そんな、あの時そんなことが起きていたなんて…。っ!光希、今は本当に大丈夫なの?もう体調が悪いとかはない?」
「うん、大丈夫だよ。全然平気。」
「なら、いいんだけど…。」
ハエルから聞いた大罪の種が光希を死ぬかもしれないところまで影響を与えていたということに衝撃を受け、朱美は光希に確認をして少しは安心し、ハエルの話から聞いたことを頭の中でまとめ思考し始めた。
「ねぇ、ハエルさん。さっき光希が体調悪くなった原因は七つの大罪が関係してるみたいだけど、もしかして光希と似たような目にあっている人が他に後6人もいるってこと?」
「えぇ、その通りです。光希さんが体内に植えられていた種は『怠惰』の種、その他にも『傲慢』『貪欲』『邪淫』『憤怒』『貪食』『嫉妬』の6つの種が存在します。」
「なら、後6人も光希みたいに死ぬかもしれないってこと…。」
朱美は光希を失うかもしれないと思った時の絶望を思い出し、それに似た思いをするかもしれない人がいるということに恐怖した。しかし、その言葉に否と答えてハエルは話し始めた。
「いいえ、そうとは必ずもいえません。過去にも似たようなことが悪魔によって行われた際、その種を植え付けられた者が必ず死ぬとは限りませんでした。」
「…そうなの?」
「えぇ、ですが命は助かっても心を失ったりした者や四肢の欠損でことなきを得た者など何かしらの代償がありました。中には悪魔に自分を犠牲に種を植え付けられた者を助けるようになど悪魔に契約を行ったものもいます。その者はそれにより大罪の種を植え付けられた者を助けはできましたが、その後に自身の存在を契約により悪魔に奪われたという記録もあります。」
「そんな、その人は存在が悪魔に奪われた後どうなったのですか。」
「悪魔の糧となり、この世の人間達からは忘れられ、この世に存在しなかったことになりました。」
「そんなっ…。」
朱美は大罪の種と関わった者の末路をハエルから聞き、その被害者の人達にあった不幸を悲しんだ。光希はある程度前世の記憶により代償がどのようなものかを知っていたためそこまでのショックはないが、自分がアニメで知ったこと以外にも知らなかった話がハエルから話され朱美が聞いていた横でその情報を頭で整理していた。
(過去にも悪魔達により大罪の種を植え付けられた人達がいたのか。しかも中には生き延びた人もいた。もし今も生きていて意識がはっきりしてる人に大罪の種に関してや悪魔のことを聞けばまだ知らない何かを知ることができるかもしれないのか。あれ、でもそういうことなら昔はどうやって悪魔達に対抗したんだ?昔も魔法少女がいたということになるのか?これはまたハエルに聞かないといけないことが増えたな。まぁハエルはここにいつくみたいだし、いつでも聞けるようになるか。)
光希はひとまず気になることはあるがハエルに聞くことにして、最初のここに集まる原因となった問題を片付けようと切り出した。
「ハエル、そんな情報量の多い話をして朱美姉を混乱させるなよ。朱美姉もそこまで深く考えないで、まだみんな俺みたいに死ぬかもってほどの状態までいってる人はいないかもしれないし、とにかく今はわかってることをまとめてから他のことを考えよう。今は大罪の種の1つが植えられていた俺がこうやって元気にいることを喜んでよ。悲しい顔をしている朱美姉を見てるとこっちも悲しくなるから。」
「う、うん。そうだよね。まだ悪いと決まったわけじゃないんだよね。うん、よし!ごめんね、光希ちょっと動揺しちゃった。けど、もう大丈夫。もう光希を悲しませるようなことはしないから。」
「うん、朱美姉は元気でいてくれている方が良いよ。……ハエル。」
「なんでしょうか?」
「もし知ってるのなら教えてほしいんだけど。他の大罪の種を植え付けられた人物を知ってはいるのか?」
「えぇ、全部の種を確認したわけではありませんが、現在2人確認しております。」
「その2人の今の状況は?何か問題はないか?」
「現在はございません。ですが順調に種は成長してはいますので、いつ危険な状態になるかは私ども天使でも分かりません。」
「そうか、ならその人達を助ける方法を今からでも考えよう。方法がないわけじゃないんだろ?」
「はい、その通りでございます。今回は昔と違って対抗できる力を持った者がおりますので、その方達には協力をお願いしないといけませんが。」
「私はやるよ!助けられるかもしれないなら絶対に。光希が死んじゃうかもしれなかった時の苦しみは今でも覚えてるほどにしんどかったから。他の人達にも同じような思いをしてる人がいるから私は助けたい。」
「これで1人は決定ですね。あとは…。」
ハエルの力を持った者には光希も含まれるのだろうが、ハエルは朱美の前で光希のことを隠すため言葉を濁した。その濁しは自分の中で推測した朱美にハエルのいう力を持った者を、自分と桜崎はるのことだと思い込ませて光希を選択肢に入れさせないようにしていた。
「はるちゃんには明日にでも聞いてみるわ。一緒に大罪の種を植え付けられた人を助けようって。けど、はるちゃんなら私と一緒に来てくれると思う。はるちゃんも私と同じ思いだと思うから。」
「ええそうですね。彼女もわかってくださると思います。」
ハエルは想定ではるも同じく戦うであろうという朱美の言葉に素直に同意した。
(あの方も大罪の種の被害者ともいえますからね。)
(はる先輩も両親が大罪の種を植え付けられたせいで喧嘩していたからな。きっとハエルもそのことをはる先輩と会った時に話そうとしてるんだろうな。そしてはる先輩は覚悟を決めて朱美姉と一緒に戦うんだろうな。アニメでもそうだったし。この流れは変わらないんだな。けど俺はこんな時になんだか、好きだったアニメの出来事を目の前で見られるということに喜んでいる自分と、今はこの世界が現実だからここからはかなり厄介だなと思ってこの先の展開に頭を抱えている自分がひしめき合っている複雑な気持ちでいるんだよな。なんともいえない。)
大罪の種を植え付けられた人を助けるために朱美は悪魔と戦うことを決意し、ハエルはその後無事に光希の近くにいることを朱美から許可をもらい、光希はこれからの展開に向けて準備をしつつ日課のトレーニングに励むのであった。
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