第二十六話 朱美の思い
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コーラ塗れの人の姿をした天使のハエルを伴って、光希は自宅へと帰宅したのであった。
「た、ただいま〜。」
「ちょっと光希、遅かったじゃない。コンビニ寄るにしてもちょっと遅すぎるわよ。はるちゃんはちゃんと送れ……。誰よ、その子。」
「どうも、ハエルと申します。夜分遅くにお邪魔いたします。」
光希の帰りに遅いと文句を言ってはるを遅れたかとリビングから玄関を見てハエルの存在に気づいた瞬間、光希は朱美の目がスッと細くなるのを見て、それ以降目をまともに見ることができなくなった。
「ねぇ光希、はるちゃんを送ってコンビニに行っただけなんだよね?その子は誰なの?お姉ちゃんに教えて欲しいな?ねぇ、光希?」
その言葉一つ一つにまるで重みがあるかのように、光希の心にはドシンドシンと乗っかってきた。
(ヤベェ、朱美姉めっちゃ怒ってる!やっぱりいきなり知らない子をしかもこんな夜中に連れてきたから怒ってるじゃん!おい、ハエルやっぱりダメだ風呂は諦めてくれ、頼む。)
光希は朱美の言葉でもうダメだと諦め、自分の後ろにいるハエルに風呂は諦めろと目でチラリと訴えた。それを見てハエルは絶対に嫌だと目で訴え返して朱美へと言葉を発するのであった。
「突然押しかけてしまい申し訳ありません。私はこちらの光希さんにうっかり吹き出したコーラを頭からかぶってしまいベトベトになってしまったところをこちらの光希さんに助けてもらい、家でよければ身体を綺麗にしてはいかがかと誘っていただきこちらにお邪魔させて頂いたのですが、どうやらなにか誤解を与えてしまったみたいで申し訳ありません。やはりすぐにお暇させていただきます。」
「ふぇ?えっ、あっそうだったんですか?えっと、なんだかすみません?なんだか分からないけどとりあえず!ちょっと待ってくださいね。すぐにお風呂を沸かしますので!」
先程までの光希を責め立てるような目線が、ハエルの言葉によって混乱を与えうやむやになりそのままハエルにお風呂が用意されることになった。
光希はそれにホッとするも自分を窮地に追い込んだのも、そこから救ったのも同じ人物のため複雑な気持ちで後ろに立っているハエルを見るのであった。
「お待たせしました。お風呂が沸いたのでどうぞ、ゆっくりつかっていってください。」
「ありがとうございます。それでは失礼して、お邪魔いたします。」
コーラ塗れのハエルを部屋に上げるわけにもいかず玄関で待っていると、しばらくしてお風呂を入れたと朱美が戻ってきてハエルを風呂場へと案内するのであった。その間光希もハエルとともに玄関で立って待っていたためハエルが家へ上がると同時に自分も靴を脱ぎ始めた。そんな光希へと朱美がスッと近づいたと思ったら今まで聞いたこともないような低い声で光希に囁くのであった。
「後で話があるからリビングで待ってなさい。」
そう言い残して朱美はハエルを風呂場へと案内していった。光希は朱美の言い残していった言葉によってずっと心臓の鼓動が鳴り止まない状態でリビングで待機することとなった。
(朱美姉まだ怒ってるじゃん!怖ぇ、前世でも美人が怒ると怖いって言ってたけど思ってたよりめちゃくちゃ怖ぇ!そりゃあ、アニメのヒロインだからみんな可愛いかったり美人なのは当たり前だけど、まさかここでその美人さが悪い方向に行くとは思いもしなかった。こんなシーンなかったからここまで怖いとは思わなかったわ!アニメでもこんな怒るシーンあったら怖すぎてクレームくるわ!あぁ怒られるなら早くすませて欲しい。この待っている間もめちゃくちゃ恐ろしい。頼むから早く楽にさせてくれ。)
そう祈って待っていると祈りが届いたのかその後すぐにリビングの扉が開き、朱美がリビングへと帰ってきた。光希が朱美をみて自然にゴクリと生唾を飲みこんでいると朱美の口が開き光希への尋問が始まった。
「ねぇ光希、質問だけどあの子は一体誰?」
「ひゃ、はい!あの子はハエルと言って帰りの道中で出会い喉が渇いていたようなので飲み物を渡しただけの(人間の姿では)あったばかりの子です!」
「ふぅん、あったばかりの子を光希は家に招いてお風呂まで貸してあげるんだ。ふぅん、随分と手の早いことね、光希。」
「いや、あの、そういう意図は全くなくて。その、どちらかというとあの子が入りたそうだったので提案したというかそのぉ。」
「そう、あの子からお風呂を貸してと言ったのね?どうなの?光希?」
「はいっ!そうであります!向こうから風呂を貸して欲しいといってきたので、自分はちょっと面倒だなと思いながらも連れてきたのであります!」
「なるほど、ならば光希が悪いんじゃなくてあの女が悪いってことね。」
「えっ?それはどういうことなの?朱美姉?」
「大丈夫よ、光希。今の話で大体わかったから。私があなたを守るから待ってなさい。今あの女にガツンといってきてやるわ。弟を守るのは姉として当然の務め!」
「えっちょっと!朱美姉!待ってって!それもちょっと違うから!朱美姉ぇ!」
光希の静止を聞かず朱美は今ハエルのいるであろう風呂場へと突撃しにいき、その後風呂場から何やら言い合う声がしてその数分後朱美と風呂上がりの血色の良くなったハエルがリビングへとやってきた。その時ハエルは光希へと一瞬だけ睨みを効かせ光希はまたも恐怖に怯えた状態になるのであった。
「で、結局はどういうことなのか、説明してもらえるかしら?あなたの目的でもあったお風呂には入れたんだからもう隠すこともないでしょ?全部吐き出しなさいよ!光希を利用してどういう要件なのよ!」
「……はぁ、仕方ありませんね。分かりました、真実をお話し致しましょう。私は光希さんと契約しております天使です。このたびは光希さんを守るためにも普段から彼の身近なところに常に居られるようにすることを目的としてこちらに伺いました。」
「えっ、ちょっ!!なんか聞いてないこともあるんだけど!」
「色々気になるけどとりあえずは天使?それはいったいどういうこと?本当に天使なら何か証拠を見せてもらえるかしら?」
「分かりました。それではこの体も綺麗になったので失礼して。」
そう言ってハエルは2人から少し離れたところに立つとまた光希の前で人になった時と同じように光りその光が収まるとそこには光る球体がふわふわと浮いているのであった。
「これでご理解いただけるでしょうか?」
「え、ええ。とりあえずあなたが人ではない何かだということは信じるわ。まだあなたが天使なのかは信じられないけどね。」
「それは難しいですね。私は天使ですがそれを人間に証明するものを持ち合わせていませんから信じて頂く他にはありません。」
「まぁ朱美姉、悪い感じはしないから悪魔とかではないと思わない?こっちも嘘ついてて申し訳ないけどこんなこと言っても普通は信じてもらえないて思って。ごめんなさい。」
光希は朱美に対して嘘をついていたことや今もまだ隠していることがあることに罪悪感を感じて謝罪の言葉を送った。そんな光希に朱美は近づいてそっと抱き締めるのであった。
「あっ、朱美姉?どうしたの?」
「ごめんなさいね。私じゃまだ光希の信用を得られるほどの安心を与えてあげれない。光希を守れるほどの力がないから本当にごめんなさい。私、もっと強くなって光希からどんなことも頼ってもらえるようになるから。もっと頑張るからね。」
朱美がそこまでの思いを持っていたとは知らず光希は朱美の思いを知り、その重みに自分はこんな重みをこんな華奢な体をした姉に背負わせていたのかと気付かされ心の中ではるだけでなく絶対に朱美にも笑顔でいられる結末を迎えられるように頑張らなければとまた自分に誓うのであった。
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