第二十五話 天使の存在
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はるが急に走り去ってしまったため、光希はこのまま追いかけるべきかどうか迷っていた。
「どうしよう、参ったなぁ。このまま追いかけていくのはなんかストーカーみたいでおかしいだろうし。うーん、とりあえず何かあったらいけないししばらくこの辺りにいて少ししたらはる先輩に連絡するか。それではる先輩が大丈夫そうだったら俺も帰ろ。」
そう考えて光希は近くの座れそうなところで腰を下ろし、携帯をいじりながら少し時間を潰ししていた。
「何をしているのですか。」
時間を潰していた光希の元にふっと現れた光る球体の天使、ハエルが声をかけた。
光希はトレーニングの時にもふっと姿を表すハエルには慣れていたので、そのことには驚かずその質問に普通に答えるのであった。
「ん?あぁ、ここ最近で何か変なことが起きてないか調べてたんだよ。不可思議なことが起きてたらその辺りで悪魔達が何かしているかもしれないだろ?てかハエル、出てきて大丈夫なのか?お前は光ってるから目立つだろ?」
「光を抑えてはいますが、確かにそうですね。ここでは目立つようです。ならば目撃する者も現れないようですし、今のうちに人のかたちになりましょうか。」
そういってハエルは光り輝き、光る球体から4本の手足のような棒が生え上の部分に頭らしい丸い球体ができたかと思うと、それが徐々に人のかたちをとっていきやがて中学生ぐらいの背丈の銀髪の美少女へと変化した。
「ふぅ、これで他の方から見られてもなんとも思われないでしょう。」
「…えっ?」
光希はいままで光る球体でしかいなかったハエルが、今中学生ぐらいの美少女へと変わり目の前に立っていることに衝撃を受けていた。
(こんなことある?今まで一緒にいた光る球体がいきなり女の子になるなんて予想できるか!できないだろ!そんなの!てか天使ってそんな簡単に人になれたりできるのか?天使ってみんなそうなのか?)
光希は理解できないことが目の前で起きて頭の中が少しパニックになった。
「ちょっと待ってくれ。お前はハエルなのか?いつもトレーニングで一緒にいる、ハエルなんだよな?」
「えぇ、そうですよ。いつもあなたのトレーニングに甲斐甲斐しく付き合っているハエルです。私の顔をお忘れになりましたか?」
「いや、顔見たの今日が初めてだし…。てかいつもは光る球体だから顔とかわからないし。」
「あら、そうでしたね。それは失礼しました。それでは改めまして、どうもあなたと契約しております天使のハエルと申します。今後とも末永くよろしくお願いいたします。」
「はぁ、どうもって、いや、いやいやいや。いろいろ聞きたいことあるけど、とりあえずなんで人の姿になれるんだ?いままで光る球体でいたから天使ってそういう姿をしたものだと思ってたんだけど。」
「はぁ、何をいっているのですか?あなたは私の他にも鳩の姿をした天使と会っているのでは?天使はさまざまな姿をとることができ、その姿でこの人間界の観察をおこなっているのです。まぁほとんどがあなたのいう光る球体で姿を隠しての観察をしていますが、中には虫や動物などになって観察を行うこともあります。私の場合はあなたと行動するのに人の姿の方が良い場合もあると判断し今のこのような姿を用意いたしました。そもそも天使には決まった姿はありません。同様に悪魔もです。悪魔は人間相手に声をかけ契約を持ちかけやすいように人の姿を模しています。天使は人に知らせを届けるために動物や虫などの生物に姿を模したりすることがあるのです。人間の遺した文献にも鳩が人に知らせを持ち帰るなどの伝承があるでしょう。そういうことです。ご理解いただけましたか?」
「あぁうん、色々とよく分かったよ。ありがとう。」
「えぇ感謝してください。ところで、この姿になるとほとんど人と同じような仕組みになるようなのですが、先程の説明で喉が渇きました。何か飲み物を恵んでいただけないでしょうか?」
先程まで色々と天使についてを語っていたハエルは、今の姿では人と同じような活動になるためとりあえず飲み物を寄越せと口調では丁寧だが目で光希に訴えていた。
「えっ、あっはい。じゃあそこの自販機の飲み物でいいですか?」
「…仕方ないですね。それで構いません。」
ハエルから説明を聞いた後、光希は半分脅しのようなかたちで飲み物を要求され急いで近くの自動販売機へと走るのだった。
(あれ?なんで俺自然と奢ることになってんの?てか初めに会った時よりあいつ天使なのになんだか人間身がありすぎてどちらかというと人のような身近な感じがするんだけど…。天使でもそういうのはあるのか?まぁあいつにはまだ短いけどお世話にはなってるしこのくらいはいいんだけど。)
光希はハエルに飲み物を奢らされることに対して少しハエルの天使としてのイメージに違和感を持ちながらも、トレーニングで一緒にいた時のやり取りなどを思い出しハエルはそういう個性的なやつなのかもと思い、気にしないことにした。そして、光希はペットボトルを2本持ってハエルの元に戻っていった。ハエルには水を、自分用にコーラを買って戻った光希はハエルへと水のペットボトルを渡すのであった。
「ほら、水でいいか?なるべく自然な感じのものの方がいいと思ってそうしたけど。」
「えぇ、構いません。あなたも飲み物を買ったのですか?」
「あぁ、ついでにな。」
「…あなたのそれは一体どのような飲み物なのですか?黒い液体の中でなにか泡立っていますが。」
「あれ?コーラを知らないの?天使でも知らないことってあるんだな。」
「あなたは何か勘違いをされているようですが、天使はなんでも知っているわけではありません。人が何かをしたのは分かっても、それが何かは分かってはいないということがほとんどです。いちいち人の行ったことを細かく気にしていては長期にわたっての観察はできませんから。そういった知識は一部の天使のみが担っております。その方達さえ知っていれば下位の私達はそれでいいのです。」
「ふーん、天使ってそういうものなんだ。なら上の人が何かを企んだら疑わずに行動するってことだよな?なんかブラック企業みたいに思えたわ。」
「そのようなことはあり得ません。私達の主がそのようなことをなさるはずがありませんから。いくらあなたでも主を侮辱するのならばここであなたに裁きを与えなければならなくなります。特別に一度は見逃しますが次はないと思ってください。」
「ハイ。スミマセン。」
光希にとってはふと思ったことをいっただけであったが、ハエルには主の存在は絶対であり侮辱するなんてことは万死に値すると警告も込めた威圧を光希へと放った。光希はその威圧を受けハエルは怒らせねはいけないとその日から心に誓おうと思ったのであった。
「はぁ、まぁいいです。ところで話は戻しますが、その黒い液体は一体なんなのですか?私もたまに観察している時に人がそのようなものを飲んでいるのを見かけたのですが、何かまでは知らないので少し興味があるのです。」
「あー、これはコーラっていって幅広い人間に人気のジュースだよ。中の泡は炭酸で二酸化炭素が入ってるからあるんだけど、気になるなら少し飲んでみるか?」
「よろしいのですか?」
先程まで、主への侮辱は許しませんと威圧してきた天使としての威厳は一切なく、純粋な興味を持つ少女らしい仕草をするハエルに光希はなんだか人間みたいだと思いクスッと笑うのであった。
「なんですか。私の顔を見て笑うだなんて、私をからかっているのですか?」
「ごめん、からかったりしたわけではなく、ただ天使もそういう顔をするんだなと思って。」
「?私はどういう顔をしていたのでしょう?変な顔をしていたのですか?」
「いや、別に変な顔なんてしてなかったよ。ただ知らないことに興味を持った顔っていえばいいのかな?そんな人間らしい顔をしてて天使もそんな顔をするんだなと思いつい笑ってしまった。すまん。」
「釈然とはいたしませんが、まぁ馬鹿にはしていないようなので許します。とにかく飲ませて頂けるのであれば、あなたのそれを頂けませんでしょうか?」
「あぁはいはい、どうぞお試しください。」
「では頂きます。」
「あっ、ペットボトルの開け方はわかるか?」
「開け方は普段のあなたの飲む様子を見ていたので知っています。見ててください。」
「あっいや待て、それは炭酸だからもうちょっと待たないと…。」
光希がコーラの炭酸について注告する間も無く、勢いよく開けたハエルにプシュッという音ともに噴き上がる泡が襲いかかった。彼女はコーラの泡を頭からかぶり身体中コーラ塗れになった。
「あちゃあ、やってしまったな。炭酸はちょっと置いておかないとそうやって吹き出してくるんだ。それを言おうとしたのに勢いよく開けてやがって。天使はそのまま光る球体になったら体の汚れとか消えないのか?」
「……このままではどんな姿になろうとこのベタベタとした感じはずっと残ったままとなって気持ち悪い状態が続きますね。というよりもこの姿から変化することもできません。一度汚れたりすると汚れたということになり、綺麗になるまでは天使としての力は使えませんので。はぁ、仕方ありませんあなたの家の水浴び場で綺麗になるしかありませんね。さぁあなたの家へといきましょうか。」
「は?えっなんで?なんでそうなるの?」
「なぜとは?私はあなたと契約しているので基本的にこの人間界では私に何かあればあなたが私に助力するのが妥当でしょう?」
「ソンナン知らないんですけど!」
「そうですか。ならば今知ったので頼みましたよ。あなたのご家族への説得はよろしくお願いいたします。」
「えっちょ待て、待てよ!待ってって!俺は他にもしないといけないことが、あっ!はる先輩に連絡しないと!ちょっと待ってくれ!こっちの用事をしてからにさせてくれ!」
光希はハエルに振り回されながら、とりあえずこの場に留まっていた理由でもある桜崎はるへの連絡をし、少し変な反応をしながらも家に帰っていることをはるから聞くことができてそれを確認し、それからもういいやと諦めて自宅へと帰るのであった。
人の姿をしたコーラ塗れのハエルを伴って…。
小説を読んで頂きありがとうございました。
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