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第63話:深淵の帝王(5)

 バルディッシュという名前には聞き覚えがなかった。

 ロゼの反応も同じであるため、魔王軍にも天魔神教にも属さない別の勢力の長である事は彼の口ぶりから推察できた。

 さて、こういう場合取れる俺達の対応は二つ。

 友好的か、そうでないか。

 それを判断する一つの根拠として今回の日蝕異変と繋がりがあるのかを探る必要がある。


「バルディッシュ陛下でございますね。私はルクスという武人です。こちらに足を運んだ理由としては現在国で発生している日蝕の原因を調査しているからでございます」

「太陽を消したのはこの俺様だ」


 なんと!

 バルディッシュはごまかすこともなく堂々と犯人であると名乗った。

 事の元凶とはいえ奴の豪胆さには目を見張るものがあり、俺達は自然と感服した。


「それでしたら、太陽を返していただきたいのです。太陽がなければ我々人間は困ります」

「ならぬ。太陽は俺様にとって最も忌まわしい存在。太陽がない世界こそ俺様の理想なのだ。ルクスといったな、太陽を取り戻したくばこの俺様を打ち倒してみろ」


 バルディッシュは威厳がある口調でそう答えて、ゆっくりと立ち上がった。

 遠目からでもデカいと感じていた奴の巨体が立ち上がったことでさらにデカく見えた。


「どうやら戦わないと返してもらえないみたいね」

「それは薄々予想していたよ。犯人がわかっただけでも大きな収穫だ」

「私が戦いましょうか?」

「いや、ここは俺が戦おう。最近情けない姿ばかり見せてきたし、たまには頼りがいがあるところも見せないとな」


 俺が冗談交じりにそう答えるとロゼは頬を赤く染めた。


「べ、別にそれくらいのことで、ルクスのことを嫌いになったりはしないわよ」

「いずれにせよ、先日の件もある。アリアンナへの罪滅ぼしだと思って俺に戦わせてくれ」

「ええ、わかったわ。でも、あまり無理はしないでね」


 ロゼの許可も得たことだし、久しぶりにかっこいいところ見せてやるぞ。

 俺はいつも以上に張り切って、掌に収まるほど小さな雷龍刀を構える。

 そして、霊力を込めて真の力を解放した。


「雷天剣奥義『天龍雷姫』」


 俺の目の前に美しい諸刃の剣が顕現した。

 刀身には、竜の鱗がうっすらと浮かび上がっている。

 その全長は標準的な片手剣と同じ長さ。

 これこそが雷龍刀の真の姿である。


 雷天剣は一子相伝。

 その正統後継者のみが使用できる真の姿。


「全体の形状が変わる剣とは珍しい。低く見積もっても一級品なのは間違いないだろう。だが、どんな優れた剣であろうとこの俺様には絶対勝てんということを貴様に教えてやろう!」


 バルディッシュは壁に掛かっている槍斧を手に取った。


「これは俺様と同じ名前のバルディッシュと呼ばれる武器だ。突く、斬る、叩くを同時にできる便利な代物なんだぜ!」


 そう叫ぶと、こちらに一直線に向かってきて槍斧を鋭く真横に大きく振るう。

 武器全体にはすでに赤いオーラが込められており、その射程は5メートルにも及んだ。

 俺はそれを真正面から剣で受け止める。

 刃が接触し、受けた側の腕に強い衝撃が走ったが、構わず無視して奴の懐まで一気に駆け抜けていく。

 光すら届かない深淵の世界で、雷姫と槍斧の間に、閃光のような強い火花が一本の道のように走った。

 超至近距離まで迫り、俺の姿にバルディッシュが意識を奪われている間に奴の胴体を一刀両断した。


 しかし、刃がすり抜けたような感覚を覚えたので、

 それを不審に思い、切り口を確認してみると、刃の接触した部分が蝙蝠の群れに変異している事に気づいた。

 蝙蝠の集合体。

 それが脳裏を掠めた。


 バルディッシュは、斬られた自分の体を無視して反撃を繰り出した。

 倒したものだと油断していればやや危なかったが、すでに気づいていたので、冷静にそれを刃で受け流して、カウンターを入れる形で今度は首を狙った。

 バルディッシュの首が刎ねられた。

 だが、胴体と頭部が切り離されても、バルディッシュは問題なく動いてきた。

 頭部は宙に浮いてその状態で反撃を仕掛けてくる。

 

 斬撃が通じないのは今ので大体把握した。

 剣士である以上不利な対面であることは否定できない。

 しかし、俺は気にせず戦闘を続けた。

 奴の特性はたしかに厄介であるが、剣の技量で上回っていれば決して負ける事はないからだ。


 バルディッシュの次の反撃も剣で弾き返し、三発目の一撃を入れる。

 その後も俺は淡々とダメージを与えていく。

 四撃目、五撃目と刃を交えるたびに俺の反応速度が上がっていく。

 十数回撃ちあった頃には、敵の分析も完了したため、もはや一方的な虐殺となっていた。

 バルディッシュは抵抗すらままならず、ただただ俺に蹂躙されるのみ。


 その後、トドメと言わんばかりに俺は槍斧を下から勢いよく打ち上げる。

 先端が天井へと深々と突き刺さる。


 攻撃を一旦中断して、地面へとぐしゃりと音を立てて倒れるバルディッシュを見下ろす。

 特性ゆえに生きてはいるが、抵抗する気力などとうに失せたようで、恐怖の宿った瞳で俺を捉えていた。


「まだ戦いたいか?」


 静かな声で殺気を発しながら奴に尋ねる。


「ま、まいった……。俺様の負けだ」


 格の違いを見せつけられたバルディッシュは震える声で敗北を認めた。

 

◇強さの水準

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

ルクス:化境の武人。

ロゼ:天魔の一人娘。


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