第60話:深淵の帝王(2)
その日の夕方頃。
俺は朱雀館の会議室に招待された。
会議室には、青龍団と朱雀団のメンバーが全員揃っており、俺の姿を確認すると恭しく頭を下げた。
「今日みんなに集まってもらったのは他でもない。異変を解決するための現地調査を明日にもう一度行おうと思っている」
「記念すべき第二回目の調査ってやつだね!」
「第三回、第四回と続かなきゃいいけど……」
「嗚呼、今日もルクス様はイケメンで素敵ですわ~」
団員たちはそう感想を呟いた。
一部は俺の顔の感想になってるが、イケメンと呼ばれるのは悪い気がしない。
「アテはあるのか?」
イーノックがザインに尋ねる。
するとザインが小さく頷いた。
「異変の調査は他の街でも同時並行で行われているんだけど、その中に有力な情報があったんだ」
「有力な情報?」
「千鬼谷の近くでシャルロットとよく似た容姿の女性がうろついていたらしい」
「ああ。あの黒幕もどきか……あいつ結局なんだったんだ?」
「それはたぶんここにいる全員が抱いている疑問だと思う。でも、奴が今回の事件に関わってる可能性は完全には捨てきれない」
「だから明日そこを調査するってことだな」
俺がそう確認を取ると、
「さ、流石だ。今のやり取りで状況を把握するなんて」
「おっさんすげぇ……!」
「今のルクスさん、饅頭100個分です♪」
「「「「「す、すごい……!」」」」」
その場にいた全員が皆同じ反応で俺を賞賛した。
こいつら一周回って俺を馬鹿にしてないか?
俺を神格化している彼らに呆れつつ、ザインの提案はアリだなと内心思った。
怪しい場所は積極的に調べていく。
これが一番真相にたどり着きやすい手法だ。
もし違っていたらまた別の場所を探ればいい。
俺達は全員同意してザインの提案に乗っかった。
そして、第二回異変調査隊が結成された。
今回の参加者は前回の参加者に加えてロゼが追加されている。
昨日退院したばかりなので、本当はあまり参加させたくなかったのだが、ロゼ本人が力になりたいと言い出したので無理をしないようにと念押しして参加を許可した。
さて、今回俺達がいく千鬼谷であるが、霊脈が乱れている場所とされており、あまり良い場所とは言えない。
霊脈が乱れていると霊力の制御が普段以上に難しくなるし、走火入魔にも陥りやすくなる。
「ロゼ。わかっているとは思うが今回は絶対に無理をするなよ。言っておくけどフリじゃないからな」
「私を信じなさい。私が自分の体調も管理できないような人間に見える?」
「見える」
「ふっ……よくわかったわね。アナタもだいぶ私のことが『理解』できているみたいね」
「あのーすいません。ちょっとこの子を街まで送り届けてくれる親切な人いませんか?」
ロゼは相変わらず平常運転だった。
「ルクス。ロゼが倒れた時は私が治療するので安心して下さい」
俺の隣を歩いているイェルが口元を隠しながら微笑んだ。
化境のイェルが今回の調査でも参加してくれるのはとても心強く、俺達の中の最高戦力と言えた。
仮に、またこの前のシャルロットみたいな超一流武人が現れても、その時はイェルが瞬殺してくれるだろう。
イェルの言葉にロゼは気を良くしてイェルの背中を威勢よく叩く。
「流石イェル先生! アナタって本当に便利な人ね!」
「命の恩人を便利呼ばわりするな馬鹿」
「あはははは! 久しぶりに暴れられそうで腕が鳴るわ!」
しばらく療養していたせいか、その反動でめちゃくちゃテンション高い状態になっていた。
「くすくす。すごく元気な方ですね」
「もう少し大人しくなってくれたほうが一緒に旅する側としてはちょうどいいんだけどな」
俺はため息交じりにそう答えた。
【強さの段階】
神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人
【登場人物】
ルクス:化境の武人。
イェル:尸解仙。
ロゼ:天魔の一人娘。
ザイン:朱雀団団主。
イーノック:青龍団団主。
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