表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/110

第38話:快刀乱麻(7)

 しばらくロゼのあとをつけてると、30人近くの男達が現れてロゼを取り囲んだ。

 よく見ると全員さっき俺がボコした奴等であり、俺への復讐のためにロゼを連れ攫おうと計画しているようだった。

 俺への復讐は全然構わないのだが、殺気を撒き散らしながら歩いてる今のロゼによく話しかけようと思ったな。

 ロゼの霊力量を察して、関わったらアカン奴だとわからないのだろうか。

 まあ、それがわからないから三流未満なのか。いずれにせよこのまま放っておけばロゼによって処刑されるのは明白だったので、彼らの尊い命を守るためにも俺の方から姿を現した。


「……! あら、ついてきてたのねルクス。すぐに約束を守るなんて悪い子ね」

「俺程度の追跡にも気付けないのに敵討ちをしようと考えていたのか?」

「アナタがどう思おうとこれは小教主である私の果たすべき義務なの。説得なんてしても無駄よ」

「そう言うと思った。だから俺と勝負しろ」


 すかさずそう答えて雷龍刀を構える。

 ロゼと初めて出会った時、アビスベルゼでは決闘によって物事のすべてを決めると教えられた。

 だから俺もそれに倣い、決闘に勝利してロゼの強行を止めようと思い至った。


 俺の意外な言葉にロゼは目を丸くしている。

 やがて、口の端を引き上げて柔らかな笑みを浮かべる。


「いいでしょう。ルクスとは常々本気で戦いたいと思っていたの。私の暗花神剣とアナタの雷天剣のどちらが優れているか。この決闘を通して白黒はっきりつけさせてもらうわ!」


 ロゼは俺との勝負に応じた。

 先ほどまでの冷たい殺気が消えて、武人としての熱い炎が彼女の目に宿る。

 こういうさっぱりしたところは彼女の魅力である。

 とはいえ、戦いは本気だ。

 ロゼはこういう場で手を抜くような人間じゃないのは容易に想像できた。


「こ、こいつら! 俺達がいるのにガン無視して話してやがる!」

「ば、馬鹿にしやがって。絶対に許せねえ!」

「おいお前ら。ちょっと強いからって調子にのるなよ! 人数では俺達の方が数十倍も優ってい………」


 彼らが言葉を言い終えるよりも先にロゼが霊力を解放する。 

 すると衝撃波が周囲に発生して雑踏のごとく悲鳴と共に何十メートルも後方に吹き飛ばされた。

 宝剣を顕現させて右手で構える。


「天魔神教小教主、ロゼ=アルティメス。全力を以ってアナタの決闘に応じるわ」


 数日前に内傷を負ったとは思えないほどの威圧感だ。

 感情が昂っている分、以前よりも目に見える霊力が大幅に大きくなっている。


 最初に攻撃を仕掛けたのはロゼ。

 姿勢を低くして右奥から左へと振り抜く構えを取り、足裏を爆発させて稲妻の軌道で急接近してくる。

 剣で迎え撃とうとしたが、突如としてロゼが急加速し、一瞬にして距離を縮められてしまった。


(……《追魂飛蝶》か。なかなか厄介な歩法を習得しているな)


 追魂飛蝶とは、高等歩法の一つであり、緩急差を利用して相手を倒すというものだ。

 緩急を活かした攻撃は達人であっても対応が困難とされる。

 人間は無意識のうちに一つ前のスピードに目が向いてしまうため、柔と快の双方を活かした攻撃は特に注意する必要がある。

 死風刀血戦では、最初のスピードがトップ速度だったので俺は自然とそれがロゼの全力だと勘違いしていた。

 どうやら奴との戦いの中で一段階ランクが上がっていたようだ。

 ロゼの躍進を心の中で祝福しつつ、思考は冷静であった。


 距離は詰められたが、俺なら十分対応できる速さ。

 雷天剣はスピードには何よりも自信がある。

 雷龍刀を握る手を素早く動かしてロゼの斬撃を受け止める。

 すると今度は俺の死角へと潜り込み、攻撃を放つ。


 甘いな。

 その死角は俺が意図的に作ったものだ。

 さっきのお返しと言わんばかりに、刃をギリギリまで引きつけて身をかわし、カウンターの要領でロゼを蹴り飛ばした。


 綺麗に一撃が入り、ロゼが地面を転がる。


「か……はっ……!?」

「すまないなロゼ。手加減は失礼だから思いっきり蹴った」

「いいのよ……ルクス……。当時の事を思い出すようで、すごく懐かしいもの……」


 ロゼはみぞおちを左手で押さえながらフラフラと立ち上がる。右手の剣はまだ手放してはいない。

 どうやらまだ戦闘続行のようだ。


「はあああ!!」


 大きな掛け声を上げて再度迫ってくる。


 頭部に向けて剣を振ってきたので、身を捻り攻撃を避ける。

 だが、今度は先ほどのような隙を見せない。

 ロゼは攻撃の手を緩めることなく二度三度と剣を振るう。

 俺はそれを素早く避けつつ、どうしても避けられないものだけをコンパクトに剣で対処していく。


 前述の攻撃が通らないとわかるや、今度は大技を連打して物量で俺を押し殺そうと動いてくる。

 狂風暴雨、魂魄滅壁、神龍流水。

 以前俺に使った技もあれば、紫霞暗花や無限剣海や瓢雪穿雲剣といった初めて見る技まで余す事なく使用してくる。


「ルクス! アナタはやっぱりすごいわ! 全力で剣を振ってるのに全然勝てる気がしない! 圧倒的な実力差があるのを剣を通して体に伝わってくる!」


 ロゼは嬉しそうにそう叫ぶ。

 彼女の口の端から血が垂れている。

 塞がっていたはずの傷が開き始めているのだ。

 しかし、彼女は笑みを絶やさない。

 綺麗な赤い瞳が爛々と輝いて俺の姿を映し出していた。

 

 嵐の夜の豪雨のように剣撃もいっそう激しくなっていく。


「それでも私は剣を止めるわけにはいかない! たとえアナタが化境だったとしても、一人の武人としてアナタに勝ちたいもの! だから受け取りなさい、ルクス!」


 ロゼはゆっくりと剣を上段に構え直して剣先を上空へと大きく掲げる。


「これが私の全力の一撃! 暗花神剣奥義『乾魂天華』!」


 ロゼの全霊力が解放されてロゼの背後に巨大な魔法陣が形成される。

 その後、剣にチカラが集約していき、彼女の一振りと共に、街一つを消し飛ばしかねないほどの凄まじい衝撃波が放たれた。


 本気の一撃にはこちらも本気で迎え撃つのが武人の礼儀。

 雷龍刀に霊力を集約させ、雷龍刀の封印を解く。


 すると、雷龍刀の『真の姿』が解放される。

 その長さはロゼの宝剣と同程度。竜の鱗が刀身にうっすらと浮かび上がる美しい諸刃の剣が顕現した。


「雷天剣奥義『天龍雷姫』」


 そして、俺は両手で剣を振い、迫ってきた全霊力を一発でぶった斬った。


【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

ルクス:化境の武人。

ロゼ:天魔の一人娘。


【読者の皆さまへ】

この小説を読んで


「面白い!」

「続きが気になる!」


と思われたら、↓の☆☆☆☆☆ボタンを★★★★★に変えて応援していただけますと嬉しいです!

多くの皆様に読んでもらうためには、どうしてもブックマークと星が必要となります! 

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ