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第37話:快刀乱麻(6)

「彼らは天魔神教の影。この周辺一帯の地理に詳しいわ」

「ふむ、その言い方。エリアごとに支部がありそうだな」

「よくわかったわねルクス。流石だわ。万が一、拠点を襲撃されても被害が最小限に済むように情報はエリア毎に分かれてて、それをすべて集積してるのが本部なの」

「本部はどこにあるんだ?」


 俺の質問にロゼは笑う。


「その場所を知ってるのは天魔と天枢だけよ。娘の私も教えられていないわ。それに知ってても、天魔神教の重要機密だから教えられないわ」


 どうやら情報の守秘は徹底しているようだ。

 これでロゼがペラペラ話し始めたらそれはそれで不安になる。

 彼女は人がいいので悪い人に騙されそうな性格をしてるからだ。


「ところで天枢って誰だ?」

「天魔神教の軍師よ。神教の中ではナンバー2の地位に位置してて国の中で一番頭がいいわ。霊力は最低でも10万はあるわ」


 霊力10万!?

 一般修行期間に換算すると273年分の霊力を保有してる計算になる。

 超一流武人の中でもトップクラスなのは間違いなく、化境の領域に足を踏み入れてる可能性すら充分考えられる。

 俺は膨大な霊力を持つ巨魔の上弦に畏怖の念を覚えた。

 天枢と関わることはほとんどないと思うが、敵に回すのだけはやめておこう。


 ロゼはその後、影に話しかけて、ここらで何かしら問題があったか尋ねた。

 すると影は抑揚のない平坦な口調でとんでもない内容を答えた。


「昨晩何者かの手によって螺旋城が襲撃されて城主が殺されました」

「え!?」


 影の言葉にロゼは驚愕し、怒気を強めて詳細を尋ねる。

 影は特に慌てる様子なく淡々と説明していく。


「生き残った者の話では、襲撃者が『白髪の獣人女』とだけわかっています」

「心当たりは?」

「ないわ。螺旋城主は巨魔の中でもトップ5に入る上弦巨魔なの。彼を倒せる武人なんてそれこそお父さんくらいよ」

「そんなに強いのか。でも、襲撃者はその螺旋城主を倒したんだろ?」

「とても危険ね。放っておけないわ。早急に処理をしないと……」


 ロゼの目から光が消えて、殺意の宿った冷たい声になる。


「ルクス。私は少しやることができたからアナタは朱雀館に先に帰ってなさい」

「一人で襲撃者を殺しに行く気か?」

「ええ。小教主として危険因子は見過ごせないもの。ルクス、これは天魔神教の問題だから止めないでね」


 ロゼはそう答えると、殺気を漂わせながら部屋から出ていった。

 彼女の背中を見送りながら俺は小さくため息を吐いた。


 ここしばらくロゼと一緒に過ごしてわかったことだが、彼女はやはり、家族や仲間への愛情が非常に強く深い性格のようだ。

 これが一概に悪いというわけではないが、本教が関わると冷静さを失うのは少々考えもの。

 霊力の暴走で廃人に繋がる『走火入魔』の引き金にもなる。


 また、彼らの話を聞く限り、相手は巨魔の上位を倒している超一流武人。

 ロゼも超一流ではあるが、内面的にも武功的にも、まだまだ不安定な部分が残っている。

 あちらの問題なのであまり関わるべきではないのだが、ロゼはアビスベルゼでできた最初の友達なのでこのまま見過ごすわけにもいかない。


(……仕方ない。ロゼに見つからないように彼女のあとをつけるか)


 俺は霊力を完全に消し、ロゼの後をこっそりと追った。


【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

ルクス:化境の武人。

ロゼ:天魔の一人娘。


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