第14話:謎の少女(8)
【ロゼ視点】
ただ者ではないと思っていたけれど、本教所属の官に喧嘩を売るなんて最高にクレイジーだわ。
でも、相手の階級に囚われず、武人としての役目を遂行する彼がとても魅力的に映る。
天魔神教は実力主義の風土だと言われてきたけど昨今では忖度などが蔓延して、かつてのような武人らしい武人はいなくなっていた。
例えるなら、騎馬民族が定住したことで、自分達が本来持っていた騎馬術への誇りを失うのと同じで、魔徒達も武人としての誇りを失っていた。
実力主義ということを盾にして、武人が武人ではない者たちをいじめているという現実。
弱い者いじめ。
それがまかり通っていた。
私はそれが許せなくて、修行の旅と称しながら各地を巡り、武人としての本質を失っている輩を粛清しようと考えていた。
だけどそんな時に現れたのが彼!
ルクス。
彼は相手の地位には一切囚われない正義と実力を持っている。
彼なら今の本教の武人達を変えることができる。
私はそう確信した。
さて
この地で正義を貫くために必要なものは二つだ。
実力と権力。
その二つが揃っていればすべての武人を屈服させることができるだろう。
彼には前者がある。しかし、後者は持っていない。
今の彼には後ろ盾が一切ない。
このまま彼を放っておけば、本教に所属するすべての武人から命を狙われるようになるだろう。
それは私の望むところではない。
だったら、彼に足りない分の"絶対的権力"を私が授ければいい。
私は、彼と戦ってなお抵抗しようとする官軍共の目の前に立った。
「どけ小娘!」
「これが目に入らないかしら?」
私はそう告げて、手のひらで覆い隠せるミニサイズの宝剣をサラザールに見せつけた。
「!!!?」
すると、目の前にいたサラザールが驚愕し、うろたえる。
「どうかしましたか?」
「おい! お前ら、今すぐ彼女に頭を下げるのだ!」
「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」
サラザールはすぐにひれ伏した。
そして、全員に聞こえるように私を紹介した。
「ここにおわす方を誰だと心得る。恐れ多くも教主様の娘様『天魔宝剣』様にあらせられるぞ!!」
サラザールの言葉にすべての武人達が驚愕した。
「えええええええええええ!?」
「天魔宝剣といえば……!?」
「我々の最高権力者である天魔様の……実の娘!?」
「一同! 天魔宝剣の御前である! 頭が高い! ひかえおろう!」
「「「「「「「ははああああああああああああ!」」」」」
サラザールの言葉によって、あっという間にすべての武人がひれ伏した。
さて、この現状に同行者であるルクスとアリアンナも目を丸くしていた。
私は頭を下げながら彼らに謝罪する。
「二人とも、正体を隠していてごめんなさい。実は私、天魔の実の娘なの」
【強さの段階】
神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人
【登場人物】
ロゼ:天魔の一人娘。