第15話:謎の少女(完)
まさかロゼが天魔の娘だったとはな。
神書の在処を把握してたりと一般人ではないと思っていたが、彼女が天魔の娘であると考えれば辻褄が合う。
天魔神教において天魔は絶対的な武人とされており、その影響力は他国にも及ぶほどである。
俺はロゼになぜこの村にいたのかを訪ねた。
すると、彼女は世直しの旅をしている途中であると伝えた。
「騙してしまってごめんなさい」
ロゼはぺこりと頭を下げた。
「いえいえ、そんなことないですよ。私達だってロゼさんに話してないことがたくさんありますし」
「アリアンナの言うとおりだ。人は誰しも口には出しづらいことがあるものさ」
俺だって勇者パーティをクビにされた過去はあまり人に話したくない。
俺達の言葉にロゼは照れくさそうにはにかんだ。
「それにしても……彼らは本当に野蛮ですね。ルクスさんは何も悪くないのに剣を抜いて襲ってくるなんて。もしルクスさんが殺されでもしたら私は絶対に許せません」
「まあそう言うな、アリアンナ。彼らの大半は上司に命令で動いたに過ぎない。本当に悪いのはそれを指揮した奴だ」
俺はそう答えてサラザールを睨む。
臆した彼は悲鳴をあげて小さく体を縮こまる。
末端がここまで腐っており、上司がそれに気づけないのだから、実際はもっと多くの屑武官がいるのだろう。
彼らは氷山の一角に過ぎない。
屑を一人ひとり見つけて処罰するのは部外者である俺には不可能。
モグラ叩きのような悪循環に陥るのは目に見えていた。
故に、俺は迫りくる脅威のみを排除していく予定だったのだが、ロゼの登場で流れが変わった。
天魔の娘である彼女の権威は俺の予想以上であり、武官全員が彼女にひれ伏している。
最初から正体を明かせば俺が手を下す必要はなかったかもしれないが、彼らは腐っても武人なので一度叩きのめさないと事が進まないのかもしれない。
さて、ロゼの正体もわかったことだし、まずは彼らの処断から行わなければならない。
ロゼはどのような処罰を彼らに下すだろうか。
「処罰を下すのは私ではなくルクス。アナタに任せるわ。天魔神教において強さは正義。一番強い奴が一番偉いの。天魔宝剣として、アナタの決断を、第一に尊重するわ!」
どうやらロゼはこの国に残っている風習を優先するようだ。
大義名分を俺に授けるので、自分の代わりに悪党共を処罰してほしいのだろう。
少し回りくどい気もするが、強い奴が一番偉いという流れからは外れていない。
俺としても悪い話ではないので、彼女の望み通りに行動してやるか。
「サラザールと言ったな。今回の騒動。どうやって責任を取るつもりだ。武官のまとめ役であるにも関わらず、悪党の専横を見過ごすとは言語道断! これまでに悪事をした者たちを今すぐ全員見つけ出して全員処刑しろ!」
「はは~!」
俺の言葉にサラザールは地面に額を擦り付けた。
その後、今回の直接の原因となったあの武官は、当日の内に処刑されて晒し首となった。
また、他にも屑武官がわんさか現れて、彼らは全員即刻処刑。
サラザールも責任をとって官位を二段階下げ、全財産をすべて村へと寄付した。
悪はすべて処刑された。村人達はみんな笑顔になってこの村に真の平和が訪れたのだ。
数日後、俺達三人は村を出発するために正門の前に訪れる。
だが、そこには、大勢の村人達が俺達を祝福するためにやってきていた。
「天魔宝剣万歳! 救世主万歳!」
「ルクス様ありがとう! アナタのおかげでこの村から屑武官が全員いなくなったわ!」
「またいらしてください! アナタは真の武人だ!」
老若男女問わずすべての村人が俺に感謝の言葉を贈る。
皆から祝福される俺に一緒に旅をするアリアンナも笑顔になる。
「ルクスさん大人気ですね。もうすっかりみんなのヒーローじゃないですか」
「俺は当たり前のことをしただけだ。別にヒーローになろうと思ってやったわけじゃない」
「その当たり前が一番難しいのよ。ルクス、アナタは本当に素晴らしい武人よ!」
ロゼも笑顔で俺を褒めたたえる。美女二人から褒められて俺はつい照れてしまう。
「結局、ロゼも俺達と一緒に旅をするんだな」
「ええ。今回の件で、ルクスともっと一緒に旅をしたくなったのよ」
「ははん、ロゼさん。もしかしてルクスさんに恋をしちゃいましたね」
「ち、違うわよ!?」
アリアンナの上段にロゼは顔を真っ赤にして否定する。
やれやれ、騒がしいのが一人増えてしまった。
俺はただ平和に、スローライフを送りたいだけなんだがな。
騒がしい仲間達に頭を悩ませながら、俺達三人は次の新天地を目指した。
【強さの段階】
神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人
【登場人物】
ルクス:化境の武人。
アリアンナ:エルフの女の子。
ロゼ:天魔の一人娘。




