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第9話:謎の少女(3)

 手合わせが終わり、気を失っていた少女が目を覚ます。

 少女は目を輝かせて俺の手を握る。


「アナタってすごく強いのね! もし良かったら名前を教えてくれる?」

「ルクスだ」

「ルクス……すごく素敵な名前ね。正直負けるなんて思いもしなかったわ。これ、私に勝利した戦利品よ」


 少女はそう告げると獣の皮でできた財布を俺に渡した。

 中身を確認してみると大量の金貨が入っている。


「こ、これ本物の金貨ですよね。しかもこんな大量に……」


 国によって多少の違いはあるが、金貨は硬貨の中で最も価値のある存在。

 それがこんな大量にあれば一軒家を買えてしまってもおかしくない。


「大金だが、本当に貰ってもいいのか?」


 確認のために一度尋ねる。


「もちろんよ。この国では、すぐれた武功を持つ者には、地位と名誉と褒美を与えるのが常識なの。アナタはこの戦いに勝利した。だからそれを受け取る権利があるわ」

「そういう慣習なのか。それならありがたく頂くとしよう」


 俺は財布を袂にしまった。

 話で聞いた通り、この国は実力主義の考え方が根付いているようだ。

 王国の常識とは大きく違うので困惑する部分もあるが、郷に入れば郷に従えという言葉もあるように、この国でトラブルなく暮らしていくなら素直に慣習を受け入れるべきだろう。


「二人はこれからどうするの?」

「この町には砂漠越えの準備をするために立ち寄った」

「それなら地図が絶対必要ね。精度のいいものをあげるから私について来なさい」


 これはラッキー。

 詳細な地理が記された国内地図をもらえるみたいだ。

 俺達は少女のあとについていく。


「私はロゼ。お父さんのような最強の武人を目指して今は修行の旅を続けているわ」

「修行の旅……なんだかカッコいい響きですね。お父様が目標ということは、ロゼさんのお父様はそんなに強い方なんですか?」


 すると、ロゼは目を丸くして、くすりと笑った。


「ええ。すごく強いわ。たぶん世界最強なんじゃないかしら」

「それならロゼさんを怒らせるのはやめた方がいいですね」

「そうだな。流石の俺も世界最強には勝てない」

「もし私の発言が原因でロゼさんを怒らせてしまうと、ロゼさんのお父様が飛んできて、ルクスさんがボコボコにされちゃいます」

「さりげなく俺を巻き込むな」

「かわいそうなルクスさん」

「可哀想な目に合わせてるのはお前だよ」


 俺達のやり取りを聞きながらロゼは柔らかい笑みを浮かべた。


 ロゼに案内されて俺達が到着したのは町外れにある小さな古本屋。

 背中の曲がった白鬚のお爺さんが店主を務めている。

 てっきり、顔の広い商人あたりを紹介してくれると思っていたので目的地が古本屋なのは意外だった。

 たしかに地図も売ってそうだけど、あまり古すぎても使い物になるか心配だ。


 ロゼは俺達をいったん待機させて店主に近づいた。


「どんな本をお探しですか?」


 と店主が質問する。

 ロゼは自身の顎に手を添えて、考え方をするように


「随分昔に頼んだ本なんだけど、魔功海書という本を探してるわ」


 と、明らかに地図ではない別の名称を答えた。

 すると、店主の顔つきが変わる。


「その本なら、奥の書庫にあるかもしれません。一緒に探してくれませんか?」

「もちのロゼよ」


 は?

 ロゼはそう答えて店主と一緒に奥の部屋に入る。

 扉が閉まり、二人の声が聞こえなくなったので、俺はロゼの右腕にこっそり取り付けた霊糸によって二人の会話内容を盗み聞く。

 この霊糸は先ほどの手合わせでロゼに触れたタイミングでつけたものだ。


 距離が離れると声が聞こえづらくなるので、俺は意識を集中させる。

 その際、本棚から適当な本を手に取ってカモフラージュ。


 あのやり取りはなんとなく暗号のようにも聞こえた。

 一応聞いておいた方が安全だろう。


 霊糸を通して二人の会話が途切れ途切れに聞こえてくる。


「失礼ですが、身分を確認できるものはお持ちですか?」

「はい」

「こ、これは……!? た、大変失礼しました。まさか教祖様の……だったとは……。えっと、どういった本を……お求めですか?」

「《潜魔神書》」

「!!!!!!!!!!!!!!? 潜魔神書ですとおおおおおおおおおおおおおお!!?」


 店主の驚く声がドア越しに聞こえてきた。

 俺自身も声には出さないが、彼女の放ったその名称に驚愕している。


 潜魔神書

 300年前の大戦で焼失とされる伝説の地図。

 すべての武人の位置を特定する神法が施されている。

 元は、天魔神教を滅ぼすために作られた神器だが、戦乱の中で焼失したと思われていた。

 まさか天魔神教自身が現在は保管していたとは……。


 どうやらあの少女。

 そこら辺にいる一介の武人ではなさそうだ。


「ル、ルクスさん!? なんて破廉恥な本を読んでいらっしゃるんですか!!?」

「え?」


 俺が先ほど手に取った本。

 表紙には、大勢の水着の女性とガッツポーズを取っているパンツ一丁の男。

 本のタイトルには『ハーレムパラダイス!』と書かれていた。


「ち、違うんだアリアンナ。偶然手に取った本がたまたまこれで」

「その割にはめちゃくちゃ真剣な顔で読んでたじゃないですか! ルクスさんのえっち!」


 アリアンナは顔を真っ赤にしながらそう叫んだ。

 彼女の誤解を解けるまでに結構な時間を要した。

 その間にロゼは交渉が終わったようで、いつの間にか俺達のところへと戻って来ていた。


【強さの段階】

神和境>入神境>化境>超一流武人>一流武人>二流武人>三流武人>一般人


【登場人物】

ルクス:化境の武人。

アリアンナ:エルフの女の子。


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