第20話 実情はすごい単純なんだよ
(……バイタルサインも正常値になったし、そろそろ意識が戻ったかな?)
おぼろげに意識が覚醒する。
目も開かない。耳も聞こえない。口も利けない。身体すら動かない。全身が麻痺している。しかし何故か水の中に漂っているような気がする。
だんだん意識がハッキリとしてきた。
そして自分が『金田翔太郎』であることを思い出す。
(おや、目が覚めたようだね。聞こえるかい?)
『誰だ? ここはどこだ?』
(私はどこ? ここは誰? とは言わないんだね。まあ、通じてるみたいだから、そのまま声に出さなくても考えるだけでいいからね。覚えてるかな? ミニメカ○ジラと戦ったでしょ?)
『ミニメカ……あっ、アンドンはどうなった!』
(落ち着いて、今治療中だから、バイタルが乱れてるから)
『治療中……それよりアンドンは?』
(自分のことより他人の心配かい? 男だねえ。アンドンって一緒にミニメカ○ジラと戦ってた子かな? 死んではいないよ。魔力がなくなって気絶してるだけだね。転んだ時に怪我くらいしてるかもだけど)
『……あれからどれぐらい時間が経った? 騎士どもは?』
(一時間くらいかな。騎士たちはとっくに逃げたよ。まだダンジョンの途中だろうけどね)
『クソっ、本当に見捨てて行ったのかよ!』
(だから落ち着いて。治るものも治らなくなるから)
『なあ、オレを助けてくれるんだったら、アンドンも助けてやってくれないか?』
(残念だけどエネルギーの関係で治療槽はキミが使ってるの一台だけなんだ。それに彼は治療が必要ってほどじゃないよ。寝てれば魔力が回復するし。まあ、この寒空に外で寝てたら凍死するかもだけど)
『何とかならないか? せっかく命が助かって自由になれるのに』
(彼はキミの親友か何かかい? どうしてそこまで?)
『そこまでというほどじゃないだろ? 同じように国のお偉いさんに酷い目に遭わされた同士だ。むしろオレのとばっちりでここに連れて来られたらしいんだ。死なれたら目覚めが悪いだろ? なあ、何とかならないか?』
(あははは。いいね。わかったよ。何とか彼が目が覚めるまで保護しよう。近くの人里まで送ってもいいし)
『頼む。あと、裸だって言うんなら、服と食い物と水と、それから武器に金めのものがあれば……』
(ちょっと、ちょっと。要求がエスカレートしてるよ? キミ、そんなに図太い性格だっけ?)
『こんなの最低限だろ? せっかく助けた命がちょっとした配慮不足で無駄に終わったらそれこそ助け損じゃないか』
(わかったよ。何とかしてみる。その代わり、とはあまりいいたくないけど、僕のお願いも聞いてもらえるかな?)
『おう。何でも来い』
(いや、よく考えてからにしてね? 無駄にポジティブでも周りに迷惑掛けることもあるからね)
『わかってる。で、条件は何だ?』
(彼を助けるとか関係なく元々そのつもりでキミをここに招いたんだけどね、実はある依頼を引き受けてほしい。その一環として僕の遺産を相続してもらいたいんだよ。運良くキミは相続権を持ってるからね。ああ、遺産は報酬の前払いも兼ねてるからね)
『相続権? なんでオレに? 血縁関係があるのか? ここ異世界だろ? アンドンじゃダメなのか?』
(流石に血縁関係はないけど、キミが相続権を持ってるのは確かだよ。異世界なのにね。これって天文学的確率ってヤツだね。僕としてはこんな奇跡みたいなチャンスを逃したくはないんだ。まあ、無理強いはしないから前向きに考えてね)
『わかった。その依頼引き受けた。だからアンドンのこと頼む』
(えー、決断が早いなあ。もうちょっとよく考えてもいいんだよ。詳しい説明もまだだし。うわー、ドーパミンの量増えてる。やる気満々だね)
『説明を聞いても結局受けることになりそうな予感がする。だったら今しても同じだ』
(そんなことないよ? どんな依頼か、遺産が何かすら聞いてなくない? あのね、世の中には『負の遺産』みたいなのがあるし、権利には義務も付き物だし)
『わかってる。しかしな、自分の命がもう長くないってわかったとき決めたんだ。やらずに後悔するよりやって後悔した方がいいってな』
(命が長くない? ああ、癌のこと? それなら治るよ。言ったじゃん、治療中だって)
『え? そ、そうなのか? いや、決断したのはホントだ! 今更曲げない!』
(そ、そうかい。じゃあ、遺産を受け継いだ上で依頼を引き受ける意思があるってことでいいんだね? 後悔しない?)
『後悔はするかもしれない。それも含めてオレの決断だ』
(わかった。駒扱いはするつもりはないけど、期待するよ。僕はこのチャンスに全て賭けた!)
『話が決まったなら、アンドンは助けてやってくれ』
(それならもう手配してるよ。とりあえず船内で休ませておくから。後は目が覚めてから決めてね)
『話が早くて助かる。ありがとう』
(いえいえ。後継者の頼みですから)
『ところで……お前何者だ?』
(そこから!? え? 何なの? 知ってて相続を決めたんじゃないの?)
『何なのって、自己紹介された記憶はないが』
(そりゃそうだけど、こんだけ会話してたし、わかってるもんだと……)
『まあ、予想はできたが、候補が二つあって絞りきれなかった』
(へー、それ、聞いた方がいい?)
『最善と最悪の二つで迷った』
(へ、へえ~。じゃ、じゃあ最善から聞こうかな?)
『ダンジョンコア。これでオレもダンジョンマスターになれる!』
(ざ、残念だけど、ここはダンジョンの隣であってダンジョンそのものじゃないんだ……)
『じゃあ、やっぱり……』
(うわっ、アドレナリン全開! 抑えて! クールダウン! えい! セロトニン追加だ! ど、どう? 落ち着いたかい?)
『何を言っている? オレはいつも冷静だ』
(そ、そりゃよかった……でも、余計に正体を現しづらくなっちゃったじゃないか……一応こういうのはお約束だから最後まで聞こうか。最悪の予想では僕は誰なのかな?)
『……お前、神か?』
(……はい。神です……って、落ち着いて! ほら、バイタル乱高下してるから! 待って待って! 神は神だけどキミの思ってる神じゃないって! 別人、別神なの!)
『……じゃあ、何者だ? 大穴で『邪神』か?』
(何だい? 三つ目の予想があったのかい? 大穴って、ここが大穴の底だからかい? って、ウソウソ。落ち着いて、もう遊ばないから)
『説明しろ』
(そうだねえ。実情はすごい単純なんだよ。複雑に感じるのは固有名詞が出てこないからかな。キミこっちの世界に来てから聞かなかった? 歴史とかいう与太話をさ。あれに出てくる神がプタルカで、まさにキミを拉致した神さ。んで僕がアーテラス、アーたんって呼んでいいからね)
『……その名前で大体の事情がわかるな』
(あ、やっぱり? 流石は日本人。サブカルチャーにどっぷりハマったサブ中毒患者だね。うん、そうなんだ。千年前の先史文明って僕が管理してた世界なんだよ。いい世界だったと思うよ、地球と似たような文明だったからね。キミの生まれるよりちょっと前ぐらい、昭和レベルまでは発展してたんだ。これからサブカルチャーも日本並みに発展してくれるのを待ち望んでいたのに、あのプタルカにさぁ、いきなり攻め込まれて、何あれ? 人の世界に魔力撒き散らすとかってテロリストの域を超えてるよね)
『つまり、マッチポンプだったってわけか。まあ、ありそうな話ではあるな。じゃあ、邪神っていうのは……』
(うん、僕のことだろうね。向こうは殺す気満々だったけど、神の死体なんてないし、後で辻褄を合わせられるように封印したことにしたんだろうね。実際僕も何とか逃げ出せて今まで潜伏してたから。復活したのは最近。といっても200年以上前だけど)
『そうか。歴史の話を聞いてどうも胡散臭いと思ってたんだ。まあ、どこの国の歴史も怪しいもんだがな。とりあえずお前の話を信じたほうがピンと来る』
(うん。そう言ってくれるとうれしいよ。何てったって相続人なんだからね)
『依頼のこととか聞きたいことは山ほどあるが、まずその話だ。オレに相続権があるってどういうことなんだ?』
(えーと、偶然に偶然が重なったというか、僕の絶え間ない努力のおかげで天文学的確率の賭けに勝ったというか……)
『簡潔に頼む。それとも神の秘密なら聞かないが』
(相続人に隠し事はしないよ。でも、そうだねえ、本当に簡潔に言うと、キミの脳内にはマイクロチップが埋め込まれてる、かな?)
『は?』
(やっぱり簡潔すぎてもダメだね。まあゆっくり説明するから。キミにはいくらでも時間がある。とりあえず安藤君だっけ? 彼が起きるまでこの件を順を追って説明するから)
『……アンドンな。続けてくれ』
(はいはい。神にも派閥があってね、これに関してはいずれまた。とにかく僕の属している派閥が管理している星間連盟で、あるプロジェクトが発足してね……)
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『鋼の精神を持つ男――になりたい!』 https://ncode.syosetu.com/n1634ho/ 月水金0時投稿予定。
『相棒はご先祖サマ!?』 https://ncode.syosetu.com/n1665ho/ 火木土0時投稿予定。




