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130・夢の跡

「なんだか、奇妙な戦いだったね」


 雪雨(ゆきさめ)とジーガスの戦いが終わって、魔王祭予選の閉会式の後。宿に帰っている途中、リュネーがそんな事を呟いていた。


 あの戦いは確かに少し異様に見えただろう。だけど――


「ジーガス殿があのような体たらくを晒したのです。最初から、雪雨(ゆきさめ)様は気付いておられたのでしょう」


 涼しげな表情で尊敬の念を込めている雪風の言う通りだろう。最初の一撃から、ジーガスは殺気を放ってはいた。

 だけれど実際に誰かを殺めた事がない彼の斬撃は鈍っていた。雪雨(ゆきさめ)はそれに気付いたからこそ、怒ったのだろう。


「だけどよ、誰かを殺すなんて、そんなの誰でも初めてだろう? 今だって別にそんな事してないし」

「まだ先の話だが、弱い魔物を狩って殺す事に慣れる訓練が始まる。もちろん、出来なくても問題はないが、魔王祭には参加できないな」


 ベルーザ先生の話に、ウォルカは軽く嫌な顔をしていた。彼は小さい妖精族の方だから、その分体格差が現れる。魔物とだって厳しい事になりそうだからだろう。


「お前達は次代の魔王祭候補生として期待されているが、出来ない事を出来る様にしろとは言わない。どうしても性格や実力に関係するところだからな」

「それは……安心しました」


 出来なかったら退園になるのかも……とでも思っていたのか、レイアは多少安堵していた。


「それにしても……凄かったね。彼」

「当然です。雪雨(ゆきさめ)様は出雲大将軍様の実子。あれぐらいの事、なんら不思議ではありません」


 雪風は本当に雪雨(ゆきさめ)の事が好きなんだろう。ウォルカの言葉にまるで自分の事のように誇らしげにしてるんだもの。


「先生。これからはどうするんですか?」

「少し予定は早いが、明後日にはドラグニカに向かう。お前達も、セントラルの大国を見てみたいだろう?」

「見てみたい!」

「ドラグニカに行っただけで自慢できるし、僕も早く行ってみたいな」


 男子二人がベルーザ先生の言葉にはしゃいでいるのを、私を含めた女子四人はそれぞれ違う感情を浮かべていた。

 雪風は涼し気に受け流すように。レイアは若干嫌そうに。リュネーは『あんなにはしゃいで子供みたい』って感じだ。


 私は……うん、ちょっと楽しみだけれど、とりあえずどうでも良さそうにしておくことにした。大人だからね。


「よし、明日は自由行動だが、あまり羽目を外しすぎないように。明後日の事も十分に考えておけ。何かあったら宿にいる僕を尋ねなさい」

「自由行動が多いですけれど……よろしいのですか?」

「構わない……が、社会勉強したいというのなら、城や王都の貴族区の近くに博物館がある。そこに行くといい」


 随分と投げやりな感じだけれど、ベルーザ先生がそれでいいのだろうか? 何か考えがあるんだろうけど……。


「……社会勉強は確かに大切だが、お前達がどう行動し、何を学ぶか自分で決める事も同じくらい大切だ。それに、次に行くドラグニカではエンドラル学園の世話になる事が決まっている。そこではリーティファ学園からやってきた自覚をよりはっきりと持ってもらわなければならない。なら、今くらいは好き勝手にしてもいい……だろう?」


 にやりと笑ったベルーザ先生は、そのまま宿の方に歩き出した。要はエンドラル学園に行ったら、自由に見て回る事なんて出来ないかもしれないから、今のうちに見て回ってこい……という事なんだろう。


「よし、せっかくだからここの鍛冶屋でも見て回るか。なんでも自分の力に変えろって事だろうしな」

「なら僕も共に行きましょう。あれだけの決闘を見せられては、血が高ぶって仕方ありませんから」

「そういうのって普通、武器を振るって落ち着かせるもんじゃね? まあいいけどな」


 フォルスと雪風が鍛冶屋に行くのを見届けて、ウォルカが空中で軽く伸びをして、ふよふよと浮かんでいた。


「それじゃ、僕は博物館に行ってみようかな」

「あら、先生に言われたから?」

「そういう訳じゃないよ。獣人族はずっと昔から妖精族と仲がいいからね。そういうのが残ってそうなところに行ってみたかったんだ」


 まるで楽しみを最後にとっておいたようなわくわくとした雰囲気が伝わってくるようだ。


「それじゃ、私も一緒に行ってもいい? せっかくだし、ね」

「僕は別にいいけど……後ろの二人はどうするの?」

「私は……どうしよう。とりあえず適当に歩いてみようかな」

「……迷惑とかじゃなかったら、一緒に行ってもいい?」

「構わないよ。二人で見るより、三人で見るほうが楽しそうだしね」


 珍しくリュネーと別行動するようだけど、リュネーの方は少し気が逸っているみたいだ。エンドラル学園には彼女のお兄様もいるんだし、早く会いたいって気持ちはわかるけれどね。心を落ち着かせるには、一人の時間も必要だろう。


「それじゃあ僕達も行こうか」

「ええ」

「はい」


 私達はリュネーと別れて、まずは博物館の方に向かう事にした。

 ……そういえば、ウォルカとは初めて行動を一緒にする。せっかくだから、妖精族の事を色々聞いてみても良いのかもしれない。

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