106.異世界美少女美女美男野獣受肉精霊
『あら。それでしたら、貴女様の”魂の姉弟”たちに仰っしゃられたらよろしいのに』
────は?
魂の姉弟って……もしかして?
『ええ、そうです。<雅楽の女神>が貴女様のためだけに創造しお授けになった、あの精霊たちのことです』
<祭りと舞踊の女神>ちょっと待って。
いつの間に【音の精霊】たちが、俺の姉弟ってことになってんだよ?
そりゃ、何を思ったのか最近になって皆急にウザいキャラ付けし始めてンな……とは、内心ツッコミたかったけどさ。
『貴女様のやれること、できること。あの子たちは、全て成せますので』
だからってさ、魂から同類ってなぁ、流石に暴言じゃね?
まぁ、俺の魂に直接紐付けされてる訳だから、繋がってるのは確かだけどさぁ。
『それです』
──どれだよ?
『貴女様の魂との結び付きが、より強固になったからこその”進化”なのですよ。今のあの子たちは、精霊でありながら、限り無く人間に近い存在に……なりかけています』
? 良く解らん。
つまりは、どういうことだってばよ?
『元々あの子たちが獲得した”個性”とは、<雅楽の女神>の力の”残滓”によるものなのです。貴女様との魂の結びつきが、あの子たちの魂により権能を与え、そして進化を促した──あの子たちは貴女と共に在りたい。そう強く願ったのでしょうね……』
<祭りと舞踊の女神>の身体が悩ましげに揺れる度に、鈴の音が凛と響く。
『──ですから、少し多めにわたくしの”加護”をあの子たちに施したら。その……ね?』
おい。
ね? って何だよ、ねっ? って。
『ええと。”もしかしてわたくし、また何かやっちゃいましたかー?” って』
『……つまりは、そんな案件なんだ。すまない』
頼むよ、<魔法と自然法則の女神>。
こいつの管理は、あんたに一任してンだからさぁ。
いくら神さまとしてド新人だっつっても、流石にやらかし多過ぎンだろ、ええおい?
『彼女、確かにやらかしは多いのだけれど。でも直接被害を被るのは、結局キミだけだしなぁ』
何気に酷ぇこと言いやがんな、このクソ眼鏡め。
……で?
俺に謝らなきゃあかん”被害”レベルのやらかしって結局何なんだよ?
『──それは、貴女様が起きてからのお楽しみ。と云うことで、ひとつ。お願いできませんかぁ?』
不安要素を強制的に先送にりさせられるだけで、俺にとっちゃ充分被害だよ。
てか、正直に今すぐ吐けよ。
そうすりゃ、拳骨の一発だけで勘弁してやっから。
『痛いのは嫌ですぅ』
てか、お前さんが確実に痛い想いをするレベルのやらかしってことで良いんだな?
『でも、でも。少なくとも、貴女様のお役に立つ”加護”なのは、絶対間違いありませんからっ!』
……はぁ、解った。
クソの役に立たんと判断したら、お前の神像の胸を削るわ、真っ平らに。
『うひぃー』
『ワタシの胸はやめてくれる、よな?』
気分によってはやるから覚悟しとけ。
何なら、ついでに眼鏡も外しちゃる。
『それを外すだなんて、とんでもないっ!!』
……なんで、お前さんが過剰に反応してンだよ、<祭りと舞踊の女神>よ。
てか、お前さん眼鏡スキーだったんだな。
◇◆◇
『『うん? 護衛の数が足りないのなら、わたしたちががんばるよー?』』
『『『『よー?』』』』
ドレミとファがそう云うと、他の女子声の【音の精霊】たちも一斉に太鼓判を。
ドレミ、ファ、ソラ、エル、アール、サックスは、何となく女性的な声だなぁ、と思っていたら。
『失礼な。わたしたちのパーソナリティは、歴とした女性だよー』
とのこと、らしい。
ってこたぁ、シド、セントラル、マイクは?
『そら、野郎に決まってっだろうさ』
うん、まぁ声からそんな感じだもんね。
特にセントラルなんか、如何にもゴツい系の渋めのおじさんを想像しちゃう声だし。
『人間形態も、そんな感じだが?』
────は?
人間、形態??
『踊りの女神様から貰った”加護”が、それだったんだぁ。これからは、わたしたちも一緒に踊れるよー☆』
うっへ。
【呪歌】だけでなく、これからは【呪舞】も、頑張れば重ね掛けができちゃうって訳なのか。
それはヤベぇな。
てーか。
まだ踊りの方は実験段階で、実用レベルのものは一個も無いんだけどなぁ。
名称も考えていかんと……【呪舞】ではさすがにダサい気も。
……うん。
俺に名付けのセンスなんか無いから、諦めよう。
で。
色々と試した結果。
【音の精霊】たちが人間形態……と云うか、受肉するためには、俺の生命力が一定量必要であることが判明。
魂の形質が、限り無く人間のそれに近付いたのだと云っても。
結局ドレミたちは、肉の身を持たぬ精霊であることに変わりは無い訳で。
そうなれば当然、生命力が必要な行為全ては、俺の方から支払わねばならない。
効率の悪い”俺魔法”を無理に使うのと比べれば。
大した量を要求される訳でもないのが、まだ救いだと云えるのかも知れない。
受肉した【音の精霊】たちの戦力だけど。
【クリスタル・キング】のふたりと模擬戦を繰り返しやらせてみた結果。
「技量は、<継承者>どのとほぼ変わらない……といった感じ、ですか」
「ワタシも、キングの感想とほぼ同じ、ですね」
ちょっと気持ち悪い表現になっちゃうけど。
純粋に”俺が10人に増えた”……のだと思えば。
「戦力アップ! と、素直に喜んでれば良いのかなぁ?」
「一先ず、それでよろしいかと。”戦力”の確保は、これで一定の目処が付いたとも云えましょう」
そうこうしている間も、天井やら窓やら暗殺者の影がちらほらとある訳だし、何かが起こる前に、そろそろ物騒な王宮からお暇すべきだろう。
本音は暗殺者を発見次第首を刎ね、見せしめを兼ねて部屋の外に綺麗に並べて差し上げたいんだけど。
流石に王宮の中を血で汚すなんて不敬、一介の子爵令嬢にゃできねぇって。
「そもそも、普通の子爵令嬢は、その様な発想を」
ええい。クリス、うるさい。
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【音の精霊】たち 本来の姿:人間形態時外観
ドレミ :エレキギター :金髪ストレート長髪少女
ファ :ベース :金髪ポニテ少女
ソラ :二列鍵盤シンセサイザー :茶髪長身女性
シド :電子ドラム :茶髪ロン毛細マッチョ男性
エル :大型スピーカー(左) :黒髪おかっぱ少女
アール :大型スピーカー(右) :白髪おかっぱ少女
セントラル:ウーハー付き超大型スピーカー(中央):スキンヘッド超マッチョ大男
サックス :(姿は名前の通り) :赤髪巻き毛巨乳女性
マイク :(姿は名前の通り) :オレンジ髪細マッチョ男性
誤字脱字等ありましたら、ご指摘どうかよろしくお願いいたします。
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