第92話 小型戦闘艦
格納庫に着くと他のメンバーは既に集まっており、俺が乗船するのを待っていた。
小型戦闘艦は全長30メートルぐらい。鉛筆の尖った先みたいなデザインで、天井と両舷にはレーザー砲がついている。
一般的な量産タイプの船で、珍しい船でもないそうだ。
乗り込むと直ぐに出航した。
艦内はそれ程広くはない。
生活に必要な物は最低限搭載されているが、休憩室や娯楽室などはない。
打ち合わせをする時は食堂に集まってするそうだ。
「部屋は空いているところを自由に使ってくれ。特に決まっていないので」
ローズが船内を案内してくれる。
トイレにシャワールーム、それと医療室。洗濯機はシャワールームに2つ置いてあった。
「コンパクトに収まっているな」
「生活できるエリアは限られているから上手くまとめないと全てが収まらないんだ。中型船クラスになれば、休憩室やトレーニングルームも置けるが、小型艦ではこれが精一杯。格納庫を小さくすれば広げられるが、そうすると荷物が積めなくなる。長距離移動しなければ格納庫は小さくてもいいが、俺たちは未開拓宇宙地域に行くので食料と燃料は多く積まないといけない。特に水は重要だからな、どうしても場所を取る。だから普通よりは狭くなっている。船の内装は目的に合わせて変更することができるので、好きなようにカスタマイズすればいい。船を買ったらそれが最初の仕事になるよ」
目的に合わせて船をカスタマイズする。
傭兵は宇宙海賊を相手にするので大きな格納庫はいらない。その代わり多くの武装を装備しなければこちらがやられる。
商人は荷物を多く積みたいので格納庫を大きくしたい。だから生活エリアは狭くし武装も最低限な物しか積まない。その代わり護衛を雇うので武装のことは気にしなくても良い。
職種に合わせて船をカスタマイズするのが基本で、船を入手してもその分の費用は別に用意しておかなければならない。
この先の事を考えるとこういった知識は必要だ。
戦艦とは違い学ぶことが多かった。
「コクピットに案内するよ。シューイチもエミュレーターで訓練したから操縦はできるはず。だから当番のメンバーに入れてあるから操縦を頼むよ」
6人乗るには理由がある。
小型戦闘艦にはAIが積んでいないので全て自分達でしなければならない。だから夜間の見張りも交代でやっており、常に誰かが起きていないといけない。その分、人が必要になるということだ。
金を掛けてAIを積む人もいるそうだが、その費用を考えると人を雇った方がはるかに安い。小型戦闘艦1隻分の値段がするそうだから。
「エミリーさんにはオペレータを頼んである。ロズルトさんも操縦はできるそうなので、サポートを頼むつもりだ。俺が休んでいる間の当番も頼むつもりだよ」
24時間操縦席に座っていることはできないので、その間の当番もお願いしていると言う。諜報部の2人は船に乗ったことがないので、レーダーの監視を頼んでいる。モニターを見ているだけでいいので誰でもでもきるそうだ。
コクピットに入ると全員が揃っていた。
エミリーはオペレーター席に座り、ロズルトが操縦桿を握っている。とはいっても自動操縦にしてあるとのことなので、ただ座っているだけだった。
諜報部の2人はエミリーの背後に立ち、操作を教えて貰っていた。
最低限の事ができれば良いとのことで、通信方法とレーダーの見方を習っていた。
「それじゃ艦長としてみんなに話すよ」
ローズが話し出すと全員の視線がそちらに向く。
急に決まったことなので何も決まっていない。だからこれから話して決めると言う。
「当番は3交代制で8時間で交代だ。2人ペアでやって貰う。操縦士とオペレーターと。残りの人は自由に過ごしてくれ。食事の時間も決まっていないので、勝手に食べていいから。ただ、コクピットには必ず1人は残るようにしてくれ。緊急通信とか入る場合があるのでね。緊急の場合は全員を起こしてくれ。判断がつかない時は俺か乗船経験者かエミリーに相談してくれ。黙っていないように。後で面倒なことにならないように報告だけはしてくれよ。今回は長距離移動がないので、水と食料の制限はない。自由に使って食べてくれ。後は何かあったか……そうだ、帝国軍から通信が入ったら俺に回してくれ。艦長の俺が話すから。何か質問はあるか? ……なければ当番の順番を決めて終わろう」
順番はロズルトと諜報部のジャックが最初で、次は俺とエミリーになった。最後はローズとニクス。時間になったら呼びに行くとのことで自由に過ごすことになった。
「チャージが終わったらワープに入る。それまで自由に過ごしてくれ。エミリーさんはもう少し付き合ってくれ。ルートを調べ、座礁入力をしないといけないから」
全員がいる必要がなくなったので、俺とロズルトは食堂に向かった。
諜報部の2人はコクピットに残り勉強中だ。エミリーもワープ先の座標を入力しないといけないので付き合っている。
「航海士がいないんだな」
「普通はいない。全て自分達でしないといけないのが小型艦の辛いところだな。でも、慣れるとそんなに難しいことではない。それに一度通ればメモリ登録できるので、次回からは簡単にワープできるようになる。最初だけだ、面倒臭いのは」
商人とかは毎回同じルートを使うので、一度メモリ登録すれば、後は作成する必要もなく簡単にワープができるようになる。カーナビみたいなものだな。
だから、慣れると難しいことではないので誰でもできるという。
「ただ、メモリの内容を知られると海賊とかに待ち伏せされるので、基本は内緒になっている。クルー以外には知られないようにしなければならない。とても大切なことだぞ」
どこを通るかあらかじめ知っていれば待ち伏せして襲うことができる。
だからメモリ情報は重要で、持ち出しできないように厳重に管理されている。
「ルートはその船ごとに違うのか?」
「そうだ。自分達で調べて安全なルートを選んでいる。だから、他の船とかち合うことが無いので安全だ」
他の船とルートが重なると危険だと言う。
そのルートを海賊に売って小遣い稼ぎをする悪い船がいるからだ。安全だと思っていたルートに突然海賊船が現れる、ということにもなりかねない。
中には船に忍び込んでデータを抜いて海賊に売っている輩もいるとかで、だから知らない人を船に乗せる場合は監視を付けて1人にさせない事が大事だ。自分達の命にも関わることなので船のデータ管理は重要になる。
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