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異世界に来た僕は器用貧乏で素早さ頼りな旅をする  作者: 紙風船


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第二百六十三話 帝都での再会

12月3日ということで本作品が投稿から1年が経過しました。

色々ありましたが、こうして更新出来ているのも支えてくださる読者様方のお陰です。ありがとうございます。

これからも末永く、よろしくお願いします。


では、本編をどうぞ。

 冒険者ギルドヴェルフロスト本部は今日も相変わらず大きく、そして賑やかだった。大体の冒険者は朝貼られるクエストを見て仕事に行くが、帝都では随時更新されるようで、いつ来ても人が沢山居た。

 そんな人の群れを抜け、カウンターへと進む。目指すカウンターは『質問・その他』のカウンターだ。


「やっぱり人が多いな」

「列は嫌いだ」


 うんざりした顔のダニエラだが、並ばないと順番はまわってこないのだ。大人しく並ぶ他無い。


 僕に言わせればうんざりする程ではない長さの列の最後尾に並び、ボーっと天井の染みを数える。しかし掃除が行き届いているのか、特に数える程無かった。



  □   □   □   □



 10分くらいだったろうか。全然僕は疲労感は無いが、ダニエラはちょっとお疲れ気味だ。お腹いっぱいだったのも影響しているのかもしれない。……いや、ないな。此奴の胃袋は宇宙そのものだ。


「次の方」

「すみません、冒険に役立つポーションを売ってるお店が知りたいのですが」

「畏まりました。では地図を用意いたします」


 こういった質問にも慣れているのか、ギルド員さんはささっと町の地図を用意してギルドから薬屋さんまでの道筋を書いてくれる。線を引くだけだから簡単だ。賢いな……。


「此方のお店にポーションが各種取り揃えてあります」

「ありがとうございます。助かりました」

「いえ。お気をつけて」


 地図を受け取り、礼をして列から離れる。僕のすぐ後ろに居た人が前に進んで、ギルドの業務は滞りなく進む。


 受け取った地図に視線を落とすと、なるほど。ギルドからは少し離れた場所に店はあるようだ。ちょっと曲がりくねってるけど、迷いはしないだろう。

 ギルドを出て僕とダニエラは並んで歩き出す。地図もあるし、気楽なもんだ。


 気楽ついでにダニエラの腕輪から出して貰った串焼きを片手に町を歩く。こうして歩いていると、結構見慣れたつもりでも新しい発見というのはまだまだある。流し見をしていた店が、実は結構評判の良さげな店だったり、誰も入らないだろうなんて思っていた路地から子供が飛び出してきて、その奥を覗くと公園があったり。帝剣武闘会を経て、住みにくくなったなんて偉そうな事を言ってはいたが、まだまだこの都に滞在したい……なんて気持ちが湧いてくる。


「こっちだな」


 地図に引かれた線が折れ曲がり、少し先の路地へと入っていく。その線の通りに2人で路地へと入る。割と狭いし、左右の建物は2階建てのようで空も狭い。

 見上げていても仕方ない。道はこの先、路地を抜けた裏通りをまだ歩くようだ。ダニエラに背中を小突かれた僕は足を動かした。


 途中、住人とすれ違いながらも路地を抜けると、大通りとはまた違った雰囲気の場所に出た。あまりこういう道は歩かないから新鮮な雰囲気がする。

 大通り側は、ぶっちゃけ観光客とかそういうお上りさんが多い。だけどこの裏路地は帝都市民や、仕入れに来た商人風の人間が多い。都会に遊びに出て、ちょっと違う道に入ったら急に生活感溢れる道に出たような、そんな感じだった。


「新鮮な野菜だよー!」


 帝都なんて大都市でも八百屋は存在する。あ、そうだ。ついでだし買っておこうか……ダニエラの屋台飯オンリー疑惑はまだ晴れていない。


「おじさん、野菜ください」

「お、若いのに野菜を食べるとは偉いね! 若いのは肉ばかり食うから野蛮になるんだ。野菜を食えば心穏やかに過ごせるってもんさ!」


 独自の理論を展開するおじさんに曖昧な笑みを返して、並んだ野菜を見る。勿論、この世界に農薬なんて薬品はない。せいぜい唐辛子を混ぜた水程度だろう。なので、野菜はどれも無農薬でいい味の物ばかりだ。


 ダニエラの嫌そうな視線を背中に浴びながら、いくつかの野菜を選び、銀貨と引き換えに鞄の中に詰めていく。鞄を見たおじさんの目がギラリと光ったが、手を出してくるようなことはなかった。


「ありがとうございました」

「おう! また来てくれよ!」


 次回は多分ないだろうけれど、繁盛すると良いなと心の中で祈っておいた。



  □   □   □   □



「野菜なら買わずともこの腕輪の中にあるのに」

「ほう? なら見せてみろ」

「今は調子が悪いみたいだな……」


 コツコツと腕輪を叩いてみせるダニエラだ。今度から食料調達は僕の仕事だな。まぁ、こうなるのは分かってはいたが……。


「ふん、野菜ばかり食べていたら戦うべき時に戦えないぞ」

「肉だけ食べてたら旅は出来ません。物事にはバランスってものがあるんだ、ダニエラ」

「むぅ……」


 肉屋で山程の肉を食べるダニエラだから野菜を食べずとも、もしかしたら大丈夫かもしれないが、万が一ということは誰にでもあるものだ。


「ダニエラには健康で居て欲しいんだ。長く生きる為にもバランスの良い食事は大事だぞ」

「…………はぁ、そこまで言われたら、従うしか無いな」


 元々野菜が食べられない訳じゃないダニエラ。以前の旅ではほぼ毎晩肉と野菜のスープを平らげて、おかわりまでしていた程だ。此処に来て肉料理が多い所為で肉食化が進んでしまったのかもしれない……。人の道に戻さねば、ダンジョンなんて攻略出来るはずがない。


 ダニエラの今後の食育方針を思案しつつ、薬屋を目指して再び歩き出す。が、数歩進んだところでダニエラが立ち止まった。


「ん? どうした?」

「あれ」


 ダニエラが並んだ店を指差す。肉のおねだりかと呆れ半分に見るが、別に普通の店だ。ならば何を指差したか。

 ダニエラが指したのは店ではなく、その店の前に立つ客だった。


「お……あれは確か」

「アエネウスだな」


 ユッカの町で会った三叉槍の冒険者。確か帝剣武闘会に出ると言ってたはずだ。見なかったが。


「おーい、アエネウス」

「ん? やぁ、君か。久しぶりだね」


 いつもの落ち着いた雰囲気のアエネウスだ。特に代わり映えのしない顔を見てちょっと安堵する。


「珍しい場所で会うね」

「いや、帝剣武闘会に出るってお互いに言ってただろう」

「ははっ、君が出ると聞いて参加は中止になったよ」


 なんだそりゃ……。


「バンディ=リーも出るって聞いたしね。回れ右で観客席だよ」

「ん? バンディは知り合いなのか?」


 アエネウスの口からバンディの名が出た事に少し驚く。


「いや、面識はないよ。でも彼女は有名だよ。槍使いの中ではね」

「なるほどな」


 アエネウスもバンディも得物は槍だ。槍使いネットワークでは彼女は有名。なら、参加をして直接対決したくなるもんじゃないかと思うが、アエネウスは外側から観察するのが好きなんだそうだ。


「君の戦いも見ていたよ。いやぁ、参加しなくて本当に良かったよ」

「それはそれで悲しいな……」


 朗らかに言うアエネウス。ま、出る出ないは本人の自由だから、僕がどうこう言えるものじゃないな。


 その後も世間話は盛り上がったが、お店の店主の咳払いで解散することになった。営業妨害だった。ちなみにダニエラはアエネウスに手を上げて挨拶した後は他の屋台をブラブラと買い歩いていた。


「んじゃあそろそろ行くわ。また何処かで会えるといいな」

「きっと会えるさ。その時は、僕もバンディみたいな有名な槍使いになってるかな」

「なってるさ。兄貴の槍に恥じない立派な冒険者にな」

「そうだといいな……じゃ、またねアサギ君。ダニエラさんも」

「あぁ、元気でな!」

「達者でな」


 元気よく手を振るアエネウスに手を振り返し、ダニエラは串を振り返す。帝都には来てるとは思ってたが、こんな場所で会うとは……分からんもんだな。


「行くか」

「あぁ」


 僕達も踵を返してポーション屋を目指す。きっと素敵なポーションが並んでいるに違いない。今からもう、楽しみで仕方なかった。

12月は何かと忙しいので更新が遅れる可能性がありますが、ご了承ください。

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