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異世界に来た僕は器用貧乏で素早さ頼りな旅をする  作者: 紙風船


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第百七十一話 ダニエラの防具探し旅

 まずは服が出来上がった。ダニエラは試着室を借りてすぐに着替える。出てきたダニエラの姿はそれはもう『可憐』の言葉を体現したかのような姿だった。くっそ可愛い。


「似合うな。凄く可愛いぞ」

「ん……」


 照れてしまったダニエラは所在無さげに髪を弄る。その仕草も可愛いから何やっても褒め殺してしまうね!


「やっぱり似合うわね。流石、私が作った服」

「トゥリアちゃんの服はアスク一の服だもんねぇ」


 トゥリアさんとセグラさんも揃ってダニエラを褒め称えるのでダニエラの顔は真っ赤になってしまった。ますます可愛い。


「あ、あんまり辱めないでくれないか……」

「でも可愛いしな」

「そうね」

「そうですよっ」


 ダニエラが僕達の顔を恨めしげに睨み、踵を返して試着室に立て籠もってしまい、説得するのに1時間程掛かったのは、また別の話だ。




 『白百合服飾店』の2人に感謝を伝えて店を出た僕達は続いて近くの防具屋に入った。今度はダニエラの壊れてしまった小手の製造だ。ウィンドドラゴン素材はまだ分けてもらったのが豊富にあるので、良い物を作ってもらいたい。


 が、ここで予想外の展開になってしまった。誰も竜種素材を扱えないのである。職人街にあるいくつかの防具屋に入っても、


「ウィンドドラゴンの素材なんて叩いたらハンマーの方が駄目になっちまう」


 と、請け負ってくれなかった。これには僕もダニエラも頭を抱えてしまい、どうすることも出来ずにいた。しかしこれだけの職人が居て竜種素材を扱えないとはな……鍛冶関連はズブの素人なので、竜種素材がどれほどの物かはっきり判断が出来ない。服は作れても鎧は出来ないのか?

 でもスピリスの『肉球防具店』では竜種の防具を作れた。僕のアイスドラゴン(幼体)の鎧だ。幼体とはいっても十分な防御力で今も現役で頑張ってくれている僕の第二の相棒だ。

 ニックには出来て、ここの職人には出来ない……環境の差か?


「仕方ない。此処には竜種を扱える人が居ないらしいから、帝都に期待だな」

「ダニエラ……うん、そうだな。帝都ならそれなりの職人が居るはずだ。なんてったって帝都だしな」


 帝都に過剰な期待をする僕である。しかし帝都までの繋ぎの装備が必要だな……。


「それなら明日は私の小手を探すとしよう」

「もう滞在期間も無いしな……」


 此処に来て今日でえーっと……何日だ。


「初日は宿を取って、次の日はギルドにウィンドドラゴン持ってって、レイチェルに会って、次の日に解体が終わって、ダニエラとクエストしてカレー食って、その次の日にお金と素材を貰って……」

「白百合服飾店に行って、服の完成に1週間待って、今日だな」


 つまり、11日か。レイチェルの部屋は時間の流れが止まっていたから感覚がどうにもズレてしまう。あと3日か。


「明日はダニエラの防具を探して、次の日は準備と挨拶回り。翌日の朝に出るか」

「そうだな。アサギはいつも世話になった人に挨拶回りをしていて凄いな」

「そうか? まぁ、ちゃんとお別れした方がまた会えた時に嬉しいしな」


 いつの間にか居なくなってたら次に会った時に『挨拶も無しに……』と思われそうで嫌だしな。その点で言えばフィラルドでガルドとネスにお別れを言えなかったのはちょっと心残りだったな。会えた時は喜んでくれたけれど、あれは彼奴等だからだと思ってる。

 だから僕はちゃんと挨拶はする。立つ鳥跡を濁さずってやつだな。違うか。


「じゃあ今日は宿に戻るか。歩き疲れてしまった」

「だな」


 日も暮れ始めたし……ということでその日はお開きとして宿に帰ることにした。



  □   □   □   □



 翌日、色々職人街で見て回った際に良さげだった防具屋さんに行く。


「まずは此処。『バリトの防具屋』」

「此処は魔物素材の防具が豊富だったな」


 入って最初に目にする魔物の骨で作られたという防具が目印のお店だ。店主も優しくて腰の低い人だった。早速入ろう。


「すみませーん」

「はーい。あ、昨日の……」

「先日はご迷惑をお掛けしました」

「いえいえそんな、此方こそ腕が足らず……」


 なんてお互いにペコペコ頭を下げての始まりとなった。切りの良い所で来店理由を話す。


「……ということで竜種装備は諦めて、この町で一番良い装備を探そうということになりまして」

「なるほど……お客様はお目が高い!」


 別に入口から一番近くて良い感じの店だったから入っただけなんだけどな、とかお目が高いってオメガ他界みたいに読み間違えたら最強だよな、とか適当な事を考えながら店主の宣伝文句を聞き流す。


「……なので、防具を探すのでしたらうちが一番ですよ!」

「それは良かった。では小手をいくつか見せてください」

「はい、畏まりました!」


 誠実に対応すれば、ちゃんと見返りはあるのだ。店主はこの店で最高の品です! と自信満々にいくつかの小手を持ってきた。


「これはこのアスクとニコラを分断する川、『フルスリバーリヴィエール川』の上流に現れる水性トカゲ『モスリザード』の皮から作られた小手でございます」

「ということは水属性特化の小手か?」

「はい!」

「すまないが私は風と土だ。他のを頼む」

「畏まりました……」


 店主は自慢の小手を棚に戻して別の小手を手に取る。


「此方は風属性特化型です! 素材はBランク魔物の『ブラストイーグル』の羽で作られていまして、羽なので軽いですが高ランクの魔物の素材なので防御力は折り紙付きです!」

「ふむ……少し装備してもいいか?」

「はい、どうぞ!」


 店主に小手を渡されたダニエラがそれを装備する。


「ふむ……」


 握ったり開いたり、腰の剣を抜いて何度か振ってみたり、弓を取り出して矢を番えてみたり。一連の動作を確認する。


「軽すぎるな」

「駄目ですか……」

「もう少し重くて良いのはあるか?」

「あとは……ソードタートルの小手がありますね。ダメージ反射の特性を持った小手なのですが、かなり重いですね」


 テーブルの上には手の甲の部分から剣が伸びるというギミックのついた小手がある。衝撃を受けると小手のギミックから剣が飛び出すのだとか。ちょっと心を擽られる。


「ちょっと危ないな……下手したら怪我する」

「そうですね……扱いが難しいということで売れ残っている品ですので……」


 でも、良い物なんですよ! と、店主は縋るがダニエラは首を縦には振らなかった。結局、此処では何も買わずに店を出た。


「んー……高望みし過ぎだと思うか?」

「元が良い物だった分、同じレベルを望むのは当然とも言えるしな」


 何とも言えない。このまま防具店を回っても良い物が見つかる気がしないというのが今の僕達の結論だ。だが装備無しというのも心許ない。何か良い物はないものか……。


 と、ダニエラが一軒の店の前で立ち止まった。


「ダニエラ?」

「此処を見よう」


 それだけ言うとダニエラはさっさと店の中に入ってしまった。


「あ、おい……ったく。……『ソロ骨董防具屋』、ねぇ」


 骨董防具か……ガチャ感が強いが、当たりさえ引けば文句なし、か?


 かつて夜勤のバイト代をガチャに注ぎ込んだことのある僕は嫌な予感しかしないが、ダニエラが入ったのなら付いて行くしかない。遅ればせながら、僕もその店の中へと入っていった。

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