158『愛宕山《三折表》物語スタート!』
○二折裏物語から、『三折表』の物語へ
〈二折裏〉を完全解読・解釈した結果、浮き彫りになった――
明智光秀の、織田信長への《師弟愛》。
その“ラブストーリー”は、次の〈三折表〉にも続いて行きます。
まずは、〈二折裏〉の最終句からの流れを見ていきます。
50 山は水無瀬の霞たつくれ 昌叱
「山」は、もう『愛宕山』のことでしょう。
「水無瀬」は、『忍ぶ恋』、そして――
「霞」は、山にでる霞のことなので、
愛宕山の日がくれて霞がたってきたら、忍ぶ恋が始まります。
となり、49の光秀の上の句と合わせて一首とすると――
秋の色を 花の春迄 移しきて 光秀
山は水無瀬の 霞たつくれ 昌叱
光秀「儂は西行法師のように、自らの望む最期を迎えたい。
――そのために『福音書』計画成し遂げたい!」
昌叱「いよいよ、日がくれて霞が出てきたら、
――『計画』の始まりますですね」
となる。
しかも、『連歌』は、古典からの引用とともに、前に詠まれた句からの引用もテクニックとして使ったりしますのも、“楽しみ”の一つです。
ここでは、昌叱が、直前の光秀の句を引用していますが、
……わかりますでしょうか?
つまり、
この光秀の句と、続く昌叱の句には、何か“共通”する事柄あるということです。
そう、それは……
――《春》です。
そう光秀は、「花の春」と春という言葉をつかいました。
それに合わせて、昌叱は、『春』の歌を詠んだのです。
何故なら――
昌叱の句の「霞」とは、春の季語だからです。
そして、何故、ここまで“春のこと”について詳しく述べたかといいますと――
次の句から始まる〈三折表〉への理解がしやすくなるからです。
〈三折表〉
51 下解くる 雪の雫の 音すなり 心前
これは、
「雪が溶け出して、その雫が落ちる音が心地好いですね」
みたいな感じでしょう。
そう、読者様もお気付きの通り、この歌も――
――《春》の歌です。
ということで、50下の句と51上の句を一首にすると、
下解くる 雪の雫の 音すなり 心前
山は水無瀬の 霞たつくれ 昌叱
心前「ようやく信長様の活躍で、
――戦乱という吹雪も収まりはじめ、春の兆しが見えてきました」
昌叱「――さあ、愛宕山の日がくれて霞がたってきたら、
信長様と光秀様の“忍ぶ恋”、
――そう秘密の《計画》が始まります!」
――ということで、『三折表物語』堂々のスタートです!




