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157『二折裏の“ラブストーリー”』

○『愛宕百韻』――〈二折裏〉まとめ


――古来から有名な明智光秀の発句や、里村紹巴の第三句で有名な「初折(しょおり)」だけでなく、


本作品では――

今まで解釈してきたように「二折(にのおり)裏」にも注目してきました。


ということで、まず〈懐紙の使い方〉のおさらいです。

連歌では懐紙を二つ折りにして使用し、百韻連歌では四枚。

一ページ目が「初折」の表に八句、裏に十四句、

二ページ目の「二折」と「三折(さんのおり)」にはそれぞれ表に十四句、裏に十四句、最後の四ページ目を「名残折(なごりのおり)」と言い、この表に十四句、裏に八句を記します。


――この『二折裏』で、詠われていく各々の歌の裏側に――

平安の大歌人である西行法師の人生への、強い憧れが――

とくに光秀にあることを、本作で解釈していく中で発見できました。


……もう当時では高齢といわれる六十七歳ですから、

光秀はもう老い先短い中で……いかに人生の終え方を満足いくつものにするかを考えていたと思います。


このように、当然、光秀の心情が解れば解るほど……

『本能寺の変』の真実へ近づくことになると拙者は考えております。

ということで、

まずは『二折裏』のストーリーを振り返ってみます。


37 呉竹の泡雪ながら片よりて     紹巴

38 岩ねをひたす波の薄氷       昌叱


――《朝廷》は長引く戦乱で、疲弊していた。


39 鴛鴨や下りゐて羽をかはすらん   心前

40 みだれふしたる菖蒲菅原      光秀


――そこで戦乱に終止符を打つために、

信長と光秀による『福音書』計画が実行されることとなった。


41 山風の吹きそふ音はたえやらで   紹巴

42 とぢはてにたる住ゐ寂しも     宥源


――そう、この『愛宕百韻』が終われば……

実行者である光秀は、愛宕神社を去ることとなる。


43 とふ人もくれぬるままに立ちかへり 兼如

44 心のうちに合ふやうらなひ     紹巴


――天狗の太郎坊に、つまり『第六天魔王』に計画の成功を問うて占った御神籤は、光秀の心の内に合ったものであった。


45 はかなきも頼みかけたる夢語り   昌叱

46 おもひに永き夜は明石がた     光秀


――《永遠のエデン》を到来させるという、

途方もない夢物語のような計画であるから、簡単ではないと解っている。

……それを考えると夜も眠れぬ。



47 舟は只月にぞ浮かぶ波の上     宥源

48 所々にちる柳陰          心前


「計画はきっとうまくいくでしょう。

ですから、この連歌の一時は、心を休めてくださいな。

(……ちなみに西行法師の代表句を引用してますよ)」


49 秋の色を花の春迄移しきて     光秀


――儂は、西行法師のように、自らが願った人生の終え方をしたいと思っておる。


そして、『二折裏物語』最後の句は――


50 山は水無瀬の霞たつくれ      昌叱


「水無瀬川」は『万葉集』の時代から歌に詠まれてきた言葉。

『地上からは流れは見えないが、地下に水が伏流している川』を意味する普通名詞であるが、そこから転じて……

《忍ぶ恋》を象徴する言葉として使われる。


そう、つまり――


この愛宕『二折裏』ストーリーは、


織田信長と明智光秀との《忍ぶ恋》を詠ったものであったのである。


そう、神との約束を破り楽園を失った愛する二人は……


……時を経て、


そう師弟愛からなる二人の密かな“神になる”計画によって、

《永遠のエデン》を到来させる――


という、《ラブストーリー》を語ったものなのであった。




次回、次は『三折表』の物語が始まる?!



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