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さくらとして、人として・・・

家の片付け、廃車・・・・

一人・・・孤独・・・

今、自分の居場所をさがしてる。

無駄なことだとは分かっていた。


だけど、

伝えたかった。

ただ知って欲しかった。

胸が張り裂けそうな悔しさと悲しさを少しでも分かってもらいたかった。

できることなら、私の胸を切り裂いて見せてやりたいとも思った。


しかし・・・

「こちらはそんな負担は一切お願いしていませんから・・・・。」 の一点張り。冷たい言葉。

あーぁ。人は、知らず間に残酷な無情な人間になってしまう時があるんだ。


人は、心寄せ合える言葉を求めているものだ。その言葉の一言一言に、涙したり怒ったり喜んだりするものだ。

できるなら、厳しさの中にも人の気持ちを思いやれる、そんな言葉を話せる人になりたい。 私の言葉で心を包み込んであげることができる・・・そんな温かい人でありたい。


SVの言葉は、仕事上の形式的な心無い平べったい言葉にすぎなかった。

人件費に加え多額の廃棄費そして、オーナー、店長の仕事量の割合(オーナー、店長それぞれ12時間ずつ働かなければならない。)・・つまり、経営者としての力不足だと言いたかったらしい。


何万件というコンビニの中のたった一つの店にすぎない。そして、私達は、ただのオーナー、店長でしかないという訳だ。


だけど・・・家族にとっては、たった・・・たった一人の父であり、たった一人の夫、息子だったのだから。


「とにかく、一生懸命に頑張ってきたことを忘れないでほしい。」と、電話を切った。

そして、言った。


「人殺しっ」・・ ・・・


何度も何度も、小さな声で・・言った。

余計に悲しくなってしまった。

涙が溢れ出る。


涙を拭いながら、あっちゃんに、謝っていた。

「 私が、いけなかった。そうよ。私がいけなかった。仕事のことも体のことも、一番私が分かっていたはずなのに・・・。」

私は、あっちゃんの一番の理解者でも、支援者にもなれなかったんだね。


「本当に・・・ごめんね。」


私が・・・

私が、あっちゃんを裏切っていたんだ。


裏切り者は、私だった。


「やっぱり、この家には居られない。」


私は何処に行けばいいのだろう。


ひとり・・・


遺影の前で手を合わせ

癒しの音楽に心を傾け


頬をつたう涙を拭かず

声に出し彼の名前を呼ぶ


何度も何度も・・

何日も何日も・・・・

毎日毎日・・・・

ひとり・・・・・孤独


もうすぐ三ケ月になろうとしていた。


いつまで私は、こうしているのだろう 。


忘れることは決してない。

思い出になんて絶対できない。

「前に進め?」できるはずがない。


名前を呼んでも決して返ってこない。

いつもいるはずの場所にも

もう、あなたはいない。

私の名前を呼ぶことも永遠にない。

二人並ぶことは、もう・・ない・・・。


ただ返事をしてくれるだけでいいのに。

ただそこに座っているだけでいいのに。


ひとり・・孤独・・・・


「孤独だけど・・・孤立ではないと信じよう。」と、自分を励ましながら車に乗った。そして、気がつけば、ここに来ていた。


砂浜に面して植えてある桜の木。

花びらが、地面に落ちるのをためらっている。遠慮しているかのように少しだけ残っている桜の花が、吹いてくる潮風に抵抗して、じっとしがみついている。

枝は、そんな花びらの細やかな願いも知らず、ただ悠然と風の流れに逆らわず自分の体をしならせて踊っている。

力尽きた花びらは、砂浜から巻き上がる砂に混じって一緒に舞い上がる。


そして、静かに地面に横たわる。


あーぁ。ここで過ごした28年の年月。

娘は、吹いてきた希望ある春風に乗って、自分の居場所 へと飛んでいった。


私は、頼もしかった枝は折れてしまっているのに、まだ必死でしがみつき離れようとしていない諦めの悪い「さくら」だ。

吹いてくる風に抵抗し、舞い上がる砂は手で覆い身を隠す。


この場所で今まで通り生きていける訳がないのに。

風の流れに逆らわず、一緒に飛んでみようかなあー。

ぎゅっと掴んでいないで、そっと放してみようかなー。

そうしたら、心が軽くなるだろうか。

そうしたら、また笑えるだろうか。


あっちゃんは寂しくないだろうか。

私が手を放したら・・・・


今、また、私の目の前を小さな花びらが飛んでいった。


なぜか歌っているように見えた。








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