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細やかな?裏切り

いつまで、泣いてていいのですか。

いつまで、苦しんだらいいのですか。

いつまで、待ったらいいのですか。

いつまで・・・・

いつまで・・・?


五月も残り二日となった最後の週末、久しぶりに雨が降った。

ゴールデンウィークから、ずっと晴天続きで、この一週間は、特に8月を思わせるような陽の光だった。それに伴い気温もかなり上昇した。

草も木も花も小鳥たちも・・・・みんな天からの恵みを求めていた。


そして、やはり私の心も乾ききっていた。

五月末、今日は、朝から太陽が全く顔を出さなさい。 午後になると、 窓ガラスをパラパラと雨が落ち始めた。時折、雨が強まって雨のしずくが、後から後から重なり川のようにガラス窓を伝う。ぼんやりそれを見ていると、私の頬に自然と、涙が伝ってきた。

「何故泣いているのだろう。」

涙は、嬉しい時、悲しい時だけに流れるものではないらしい。安心した時にも流れるものなのだ。

涙が、乾ききった心に染み渡った。涙が優しく語りかけてくれているようだった。

地球に雨が必要なように、人には、涙が必要なんだと感じた。


突然の夫の死から始まった一連の出来事。

こんなにも早く大切な人との別れが来ようとは思ってもみなかった。


穏やかだった人生が一転した。


私の人生が終わった。未来への階段が途切れた瞬間だった。


泣いても、叫んでもどうにもならないということを、この四カ月で悟った。


一人で過ごす長い長い夜、想い出の曲を流しながら、声を詰まらせ泣いた。毎日毎日泣いた。泣けて・・・泣けて・・


人間の涙って、何リットルあるんだろうって・・・考えることもあった。


そんな日を過ごして来た。たった一人で過ごしてきた。


現実と幻想・・

私は、どちらの世界で今、生きているのかわからなくなる時がしばしばあった。


本当に私は今、生きているのだろうか。とさえ思う。


人は、人がいてこそ生きられるのだ。

人は、傍に人がいてこそ、「生きている」と、感じられるのだ。

人は、人を愛するために、生まれてきたのだ。

愛とは、生きる力なのだ。


それなのに、今の私は・・・わからない。

生きているのか?

それとも死んでいるのか?


「時間が薬」と、人は言った。


そんな事はない。絶対にない。

悲しみは日に日に深くなるばかりだ。日に日に「一人」であることを思い知らされ、寂しさが募る。


「仕事をしていたら気が紛れる」とも言われた。


そんな事もない。

沢山の仲間の中にあっても、私自身が笑っていても、あっちゃんのことを考える。彼の姿を探し、人と重ね合わせてみる。

「今、あっちゃんも笑っているだろうか。」

「もっと二人で笑いたかったなあー。」と、笑顔を思い出し、胸が締めつけられる。


「悲しみをたくさん味わった人は人に優しくなれる」

これこそ、 大間違いだと知った。

私は、全く優しくなんかなっていない。むしろ、憎しみ・妬みを強く感じるようになった。どちらかと言えば、人が嫌いになってきている。人に優しくなんて絶対にできない。


絶望の淵に立ち一瞬にして消えた愛を「裏切り」だと感じ、今、平穏そうな振りをして過ごしている。


思ってもみなかった。私の人生の中に、弁護士 に助けてもらわなければならないことが起ころうとは。


多額の借金、相続放棄事件に裁判・・・殺人鬼コンビニとの問題勃発。


きっと、これは幻想の世界・・・だろう。と、そうであることを願った。


いつまで・・・

いつまで・・・続くのだろう。


あっちゃんさえいてくれれば・・・


それだけでよかったのに・・・・。


現実は・・・

違っていた。


本当に私の人生は終わった。

未来への階段も途切れた。


あっちゃんの死とともに、 私の過去と未来までもが消え去ってしまった・・・。


一月二十日、あっちゃんの妻としての私の人生は、終わってしまった・・・・のだ。

あっちゃんと二人の未来への階段は、途切れ永遠に閉ざされたという訳だ。

これが、現実なんだ。

だけど・・・・


私は、まだ母である。


私は、まだ嫁である。


私は、 社会人、仕事人である。(必殺仕事人ではない!でも、なれるならなってみたい)


そして、私は、一人の女性である。


私は・・・、

いつかまた、優しい眼差しで人を見つめることができるようになるのだろうか。


いつか、自分のことを許せる日が来るのだろうか。


いつか、全てを受け入れることができるのだろうか。


まだまだ・・

まだまだ・・・先のことだろう。



でも、

いつか・・・ いつか、


人の笑顔が

素敵に見えるようになったら・・

人に優しい言葉が

掛けられるようになったら・・・


ありのままの自分を受け入れられるようになったら・・・

自分を今以上に好きになってやろう。


そして、あっちゃんに心から、「ありがとう」と、言おう。


愛とは、哀しい裏切りだった。真実を隠すための優しい裏切りだった。



愛とは、裏切り・・・・


ならば、

ごめんね。あっちゃん。


私は、今ここで、『嫁』を捨てよう。



私の細やかな裏切りを許して・・・・・。













愛とは、優しくもあり哀しい裏切りだと知った。過去も未来もあっちゃんの死によって奪い取られた私が、今大きな決断をする。まだまだ、難問は解決途中。これからも新たな「ひとり合戦」が始まる。

絶望・・・愛とは裏切りなのか。は、この部で終わりとする。もし、できることなら、これからの「私のひとり合戦」を応援してもらいたい。この小説を書く事で、私は自分と大好きなあっちゃんを客観的に見つめることができたことを嬉しく思い感謝している。

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