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『死んだ俺が1977年に転生して、君へ繋がる人生をやり直す』  作者: れいじ


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■ 第1話 「目覚め」

人は、死んだらどうなるのか。


 天国か、地獄か。

 それとも、何もないのか。


 ――もし、もう一度やり直せるとしたら。


 しかもそれが、自分のためではなく、

 誰かに繋がるための人生だとしたら。


 これは、死んだはずの男が、

 まったく別の人生を歩み始める物語。


 ただ一つ――

 “ある未来”に辿り着くために。

 ――暗い。


 どこまでも、沈んでいくような感覚だった。


 音もない。光もない。

 ただ、意識だけが、ゆっくりと浮かび上がってくる。


 ……俺は、死んだはずだ。


 確かに、あのとき――。


 そこまで思い出した瞬間、ふっと何かが途切れる。


 次に感じたのは、重さだった。


 まぶたが、やけに重い。

 体も、思うように動かない。


 ゆっくりと、ゆっくりと、目を開く。


 ぼやけた視界。

 白い天井。見慣れない色合い。


 ――なんだ、ここ。


 首を動かそうとしたが、うまくいかない。

 代わりに、視界の端に入った“それ”に意識が向いた。


 小さな手。


 しわも少なく、指も短い。

 何より、妙に丸い。


 ……いや、待て。


 自分の手、だよな?


 ゆっくりと動かしてみる。

 思ったよりも、ぎこちない。


 その瞬間、背筋に冷たいものが走った。


 ――これ、赤ちゃんの手じゃないか?


 えっ、どういうことだ?


 混乱する思考の中、足音が近づいてくる。


 ドアが開く音。


 視界に、女性の顔が映る。


 知らない顔だった。


 だが、その表情は、どこか安心したように柔らかい。


 「よかった……起きたのね」


 優しい声。


 続けて、少し震えるような声で言う。


 「徹……」


 ――とおる?


 誰だ、それは。


 いや、待て。


 今、俺を見て、そう呼んだのか?


 混乱する頭の中で、その名前が何度も反響する。


 徹。


 徹。


 徹……。


 違う。


 俺の名前は――


 そこまで思いかけて、言葉が出ない。


 口を開こうとしても、うまく動かない。


 出てきたのは、


 「……あー」


 情けない声だけだった。


 その瞬間、女性はぱっと顔を明るくする。


 「大丈夫、大丈夫よ」


 そう言って、優しく抱き上げられる。


 体が軽い。


 いや、軽すぎる。


 抱き上げられた感覚すら、どこか頼りない。


 ――これ、本当に俺の体か?


 周囲を見渡す。


 壁の色。家具の形。

 どれもどこか古い。


 見たことがないのに、なぜか「昔のもの」だとわかる。


 テレビもない。

 いや、あるのかもしれないが、見当たらない。


 ――時代が違う。


 直感的にそう思った。


 そして、もう一つの事実が、じわじわと浮かび上がってくる。


 俺は――


 生まれ変わったのか?


 理解した瞬間、心臓が大きく跳ねた。


 だが、それを表現する手段がない。


 言葉も出ない。

 体も動かない。


 できることは一つだけだった。


 「……あああああっ!」


 泣く。


 ただ、それだけ。


 自分でも驚くほど大きな声だった。


 女性は慌てたようにあやし始める。


 「どうしたの? 徹、大丈夫よ」


 その声を聞きながら、俺は思う。


 ――泣くしかないのかよ。


 五十年も生きてきて、行き着いた先がこれか。


 情けない。


 だが、どうしようもない。


 そのとき。


 ひょこっと、小さな顔が覗いた。


 女の子だ。


 四歳くらいだろうか。


 好奇心に満ちた目で、こちらを見ている。


 「……徹ちゃん」


 無邪気な声。


 女性が振り向く。


 「優子、静かにね」


 優子。


 ――姉、か。


 女の子は、そっと近づいてくる。


 じっと、俺の顔を見つめる。


 そして、にこっと笑った。


 「かわいい」


 ……いや、中身はおっさんだぞ。


 心の中で突っ込む。


 だが、それも伝わるはずがない。


 俺はただ、その光景を見つめるしかなかった。


 天井。

 古い部屋。

 知らない家族。


 そして、動かない体。


 ――しばらくは、この景色か。


 正直、退屈だな。


 そう思った瞬間、また口が勝手に動く。


 「ああああああっ!」


 ……だから、泣くしかないのかよ。


 情けなさと苛立ちが入り混じる中、俺はただ泣き続けた。


 それが、この世界で最初にできた、唯一の行動だった。

第1話を読んでいただきありがとうございます。


 ここから物語は、

 「記憶を持ったまま赤ちゃんとして生きる」

 という、少し特殊な状況で進んでいきます。


 しばらくは思うように動けず、話せず、

 もどかしい時間が続きますが、

 その中で少しずつ世界が見えてきます。


 そしてこの物語の本質は、

 単なる転生ではなく――

 “ある人物に繋がるための人生”です。


 次回は、時間が少し進み、

 徹が周囲の情報を理解し始めるところから。


 引き続き、よろしくお願いします。

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