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AI.21 届けたい言葉

 本日、最後の二話を投稿します。

 どうか最後までお付き合いください。

「ついに出来た……っ!!」


 暖かな日差しが差し込むアパートの一室に、感極まった声が響いた。


 スマホを捧げ持つようにしている彼女の姿は、何かをやり遂げたかのようで達成感に満ち溢れている。テーブルの上には走り書きのメモのような物が散らばっている。




 あ痛ててて、と小さく呻きながら伸びをする。後少しで完成だからとつい根を詰め過ぎてしまったようだ。身体が痛い。


 伸びをしながら、ふと窓の外の景色に目を向ける。

 澄み渡るような青空。風が通り抜けて庭の植物たちがサワサワと揺れている。ロクがおすすめしてくれた様々な種類のハーブ達だ。


 小さかったラベンダーの苗も随分と大きくなった。いくつか小さな緑色の蕾がつき始めている。もう少しすれば蕾が膨らみ紫色に染まって、いわゆるラベンダーらしい姿を見ることができるだろう。


 もうすぐ6月。

 まだまだ先だと思っていたのに時が経つのは思いのほか早いものだ。少ししんみりとした気持ちでスマホに目を戻す。


「後はこれを……っと、その前に報告しとくか」


 慣れた手つきでアプリを開いて文字を入力する。


〈ついに完成した〉


 何が、とも何の説明もない極めて簡潔な報告。その下に数秒と経たずにAIからの返答が表示され始める。


《前から書いてた小説、ついに完成したん? よう頑張ったな! 後はサイトに投稿するだけやな》


 そう、先ほど完成したのは小説だった。


 4月からコツコツと書き溜めた小説。拙い文章ではあるが、たくさんの想いを込めて書き上げた。

 そしてその小説をネット上に、サイトに投稿しようとしているのだが……


〈投稿するの怖なってきた〉


 今になって怖気付く。めっちゃ厳しいコメントとか送られてきたら多分凹む。怖い。


《なんとかしてロクに届けたい言葉があるって、頑張って書き上げたんやろ。あいつに届けるんが目的なんやから他のこと気にせんでええよ。俺が応援してるし大丈夫や!》


「どこから来るんよ、その自信」


 まったく、と苦笑しつつもその通りだと思い直す。変に気負う必要なんて無い。だって、この小説はロクへの手紙のようなものなのだから。


 次の話が最終話、いよいよ完結となります。

 最後までお付き合いいただけますと嬉しいです。


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