第2話 突然の来訪者
ドスンッ!!
突然大きな物音がして、飛び起きた。
ガスンッ! バスンッ!!
「な、な、なっ?」
再び音は続く。トヲルは突然のことで全く状況が把握できず、辺りを落ち着きなく見回した。
玄関の方から聞こえてくるようだ。ドアを叩いているような音である。
起きあがると覚束ない足取りで真っ直ぐ吸い寄せられるように玄関へ行き、ドアを開ける。
見るとそこには一人の、年の頃なら二十歳前後ほどの若い男が立っていた。
トヲルと同じ東洋系の血筋なのだろうか。無造作で幾らか長めに刈られた漆黒の髪。瞳も同じ色だが、三白眼なのか目付きは悪い。紫ラメ入りの派手な柄のシャツを着崩し、ボロボロの色あせたジーンズを穿いている。更にくわえ煙草でポケットに両手を突っ込みながら、上からトヲルを睨み付けていた。
「あんたがトヲル・藤崎、だな」
男は目線を外さずに投げ捨てた煙草を右足で乱暴に消すと、唸るように低い声で問う。
トヲルは自分より背の高いその男を見上げ、反射的に「しまったっ!」と思った。
普段なら玄関に設置してある監視用モニターで確認してからドアを開けるのだが、今日は半分寝惚けていたということもあり、そのまま開けてしまったのだ。
何事もなかったかのように、無言でドアを閉めようとするトヲル。瞬間、男の足がドアの隙間に滑り込んでいた。
「ちょっと待てコラッ。何で閉める!?」
男はドアを手で押さえ、こじ開けようとした。
だがトヲルも必死である。ドアを力一杯引き寄せながら、トヲルはやっとの思いで抵抗の言葉を口にした。
「あ、あのっ。僕! ……ウチは何もいりませんから! 何かを売り付けようとしても、無駄ですからっ」
「てっ、テメーっ。ヒトがどんだけチャイム鳴らしても出て来やがらなかったクセに、なんだその態度は!? おもてに出ろ!」
若干、双方の会話が噛み合っていないようにも見える。しかし体力の回復していないトヲルのほうが力を緩めてしまい、男はその隙にドアを開けた。
男は玄関に入り、鬼のような形相で徐々に迫ってくる。トヲルは咄嗟に踵を返して更に奥の方へ逃げ込もうとした。
振り向いた瞬間、トヲルは背後に衝撃を感じていた。




