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想起創造の魔法剣士(マジックフェンサー)  作者: 小椋鉄平
ナイルダルク編
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しばしの別れ

「そうなんですね」


 ふむふむと頷く悠人。悠人の中でアンリエッタのカテゴリーは強い研究者という位置づけになっていた。


「で、悠人。いつまでここにいられるんだ? 」


「ええ、まぁ、1日荷造りして明後日にはここを出ます」


 学園長には1日の猶予をもらった。もちろん、その決定に感謝している。学園長なりの配慮だと考えているのだろう。


「ほう、ではその時に見送りくらいはしてやろう。お前には、お前なりのやりたいことがあるのだからな」


「私も昨日知り合ったばかりですが、お見送りいたします!」


「ありがとうございます」


 ひとまず、二人と別れ、学園を散策してみる。ふと、掲示板を見てみると大学通知書が貼られており、相馬悠人という名前と生徒番号が書かれていた。


 表向きは文字通り退学だ。教師以外はどういう経緯で悠人が退学になったのかは通知されていないようだ。


「悠人!」


「おっ」


 声のする方へと顔を向けると、こちらに走って来ていたロビンの姿があった。


「また、久しぶりだなロビン」


「僕はミサイル事件の時に君を見ている。……そんなに長い間君と会っていないと思っていない。それより、これはどういうことだ!? 退学なんて、悠人が何かやらかすとは到底思えない。それに、あの事件だってそうだし隣国との戦争に勝ったのも悠人の活躍あってだろ!? そんな人を退学にするはずない。むしろ、王都を守護したように勲章を与えるはずだ」


 長々と理屈を絡めた推測を述べてくる。ロビンは頭がいい、考えている推測はほぼ事実と一致している。


(言うなって言われてないしいいよな……)


 学園長には内密にするようには言われてない。ただ、あまりおおっぴらにすることでもないと思ったりはするが……。


「概ね、その推測であってるよ。だから、退学なんだ。聞いてないか? 名誉の退学って」


「確かに、みんな口々にそんなことを言っていたが……まさか―」


 やはり頭のいいロビンだ。それだけで気づくなんてなかなかできることではない。ロビンはその人柄さえも加味して推測が立てられる分気付きやすいのかもしれないが。


「そういう事だ。俺は学園ここを離れるよ。俺の中では短かったけどな、お前といて楽しかったよ」


「そうだな。もう少し一緒に居られるかと思ったが、僕よりも遥かに上回る速さで君は成長している。常人じゃ、ありえないってくらい。君を研究対象にしてみたいくらいだったんだがな」


「ははっ、やめてくれ。俺はまだ死にたくはないよ」


 そう冗談を言い合う。


「そうか、これでお別れなのか。僕的には残念でならないけど、暖かく見送りしなくちゃいけないな」


 そう言いながら、ロビンは手を差し出した。悠人はそれに逆の手を合わせて、握る。


「ああ、転校したてで手厚くしてくれたことはすごく感謝している。ありがとう!」


「あっちではもっとヤバいことだらけだと思うけど……死ぬなよ」


「ああ!」


 そう言って、握り合った手を振って別れた。





 教室を見て回る悠人。色々な生徒が思い思いなことをして笑い合う声が飛び交っている。


(こういうところはやっぱ、変わらないんだな)


 元いた世界でもこういう夕暮れ時の緩やかで暖かい雰囲気が教室に流れていたことを思い出す。悠人こそその中の人たちを傍観しているだけの存在ではあったけれども、皆、俺を見つけると話しかけて来てくれる。


 こんなに心があったかくなるのは家以外では初めてであったように思う。


 そういう思いに浸れることこそが悠人にとって嬉しいことだった。わけわからん理由でこの世界に来ても良かったと思える瞬間だと噛み締めていた。


 流石に最上級生の教室は覗かずに、家路につくことにした。


「すっごく有名人でしたね、悠人」


「ああ、あれはすごかったね」


 いつのまにか、俺の後ろを歩いてくるアーニャ。これも馴染みのものになってしまった。ついこの間までは一歩後ろからついて来られるのは違和感でしかなかったのが、今ではさも当たり前のようになっている。


(これもいいこと……なのかな)


 と、自分なりに解釈した。

 先程は、まるで時の人といった感じで生徒たちに囲まれてあることないこと根掘り葉掘り聞かれたのだ。

 そんな騒がしい出来事でさえ今日で最後だと思うと少し寂しい気持ちもあるけれど。


「大丈夫ですよ。悠人は強いです。あっちに行ってもこんな日々の連続に決まってます」

「はは、ちょっと毎日だと疲れてしまうなぁ」

「ご心配なく。そうなったらアーニャがちゃんと警護します!」

「そうなったら頼むよ」


 暖かい一日が終わりを告げ、ついに当日を迎えることとなった。

 一応は退学ということではあるけれども、転移方陣のある校長室で軽い式のようなものを催してくれた。


「新天地でも頑張ってね。本当なら私も行きたいけど、君がこの国にとって有益なのは間違いないし、私は学園長…ここを出来るだけ離れるわけにはいかないの」


 そう言いつつ、サーシャから書状を受け取る。まぁ、退学なのだからこの書状自体はなんの効力もない。


「王都となると何かと事件やいざこざが多い。息つく暇なんてないかもしれんが、元気でな」

「ありがとうございます。アイナ先生」


 横にいたアイナが近づいてそう言った。


「では時間です。アリスフィアのことだからなにかされたらすぐに私に報告すること。いいですね?」

「はい」


 サーシャの言伝に返事をし、転移方陣の中に入る。


「では、ご武運をお祈りしています」


 サーシャがそう言って目を閉じると眩い光に包まれた。

お久しぶりです!

しばらく動かさなかったのですが、ひさびさに開いてみたら書きかけがあったので書いてみました。

続けるかどうかは分かりませんが、終わることはないと思いますので気長にしていただけたら幸いです。

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