表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

実践編

 なんて理屈こねるのは性に合ってないんで、実践編。


 絵の基本がスケッチであるのと同じように、文章の基本も現実をスケッチするのが一番の近道であり、王道なのです。

 実際の生活の中で、われわれは実にたくさんの人に出会うではないですか。親しい家人友人に始まり、おそらく二度と会わないであろう行きずりの、たとえば、旅先でふらりと入った土産物屋の店員や、乗り物で乗り合わせただけの他人まで、常にたくさんの『人』と接しているのです。

 その『人』たちを性格の説明だけで他人に伝えてみましょう。


 こつは外見の描写と同じ。例えば


「あ~、角のコンビニの? あのカワイイおねえちゃん……」

「誰? 昼間の子達はみんなかわいくない?」

「いや、その中でも一番かわいいからさ、すぐわかるよ」

「わかんね~よっ!」


 これは悪い例。

 『一番かわいい』は主観であり、基準にはなりえないのです。誰かと情報を共有するときは共通、もしくは誤差の少ない判断材料として、客観が求められるのです。


「髪は軽く脱色をかけた明るい茶色、肩までのショートボブ。輪郭は丸型で目は大きめ、化粧は薄い。そして、胸がでかい」

「○○さんだ!」


 とやれば完璧。

 これを性格の描写にも取り入れて見ましょう。


 性格に関してはどうしても主観が多くなりがちですが、それは仕方のないことでもあります。目に見える外見と違って、性格は形をもって目に見えるものではないし、行動を観察していても、それは本人の一部分でしかなく、すべては推し量ることしかできないのですから。

 ただ、我々は創作者であり、そのための訓練なのだからガンガン設定をつけたし、バックボーンを捏造して、相手の人格を決定してしまいましょう。

 実はこれ、性格のディフォルメという手法。


 ただし、一つだけ注意。

 人間というのは天邪鬼で、自分のことを解ってもらいたがっているのに、それが他人の口から語られるのを好まない。こういうお遊びは内緒で、本人に気づかれないところで一人でニヨニヨしながら楽しみましょう。


「F氏。理系男子、ときどき理系知識に基づく発言、他人の話のツボをあえて外すことによって奇人に見られようとする癖あり。ただし社会人として相応の対応も可、仕事も人並み以上にこなすので、優秀さゆえの『奇行』と周囲から認識されている」


 なんてことをニヨニヨしながら……え? 内緒じゃないのかって? 

 大丈夫、ご本人はこれ、見てないさ。

 まあ、これは本当にネット上で見たご本人の性格を抽出しただけなので、たぶんリアルでは無口で控えめな好青年なのではないかと、またニヨニヨしてしまうのですよ。


 ただ……まんまキャラクターとして使うつもりなら、性格のこの部分だけあれば成立しませんか?

 しかしこれは「現在の」性格をかいなでたに過ぎないので、そういう性格に育った背景を捏造しちゃいます。


「子供のころから『変わっている』と言われることが多かった。もはやこれは生まれつきの性質なのだから変えようがない。ほかの子供たちが絵本を読む横で、百科事典を開くような子供だった。

それでも、幼いころはその差異に悩んだりもした。そこは私も常人だったと言っていいだろう。

完全に吹っ切れたのは高校のとき、初めてできた彼女に降られた理由が『変人だから』だった瞬間に、だ。ならば変人を極めようと、私は思った」


 え? 事実と違いますと? 

 はいはい、苦情は受け付けません~。だってこれはリアルの人間をディフォルメした、ただのキャラクターだもん~。


 不要な部分はばっさり切る、これディフォルメの基本。

 例えばこれがノンフィクションを書く気なら直接ご本人に取材して幼少期までをたどり、その性格に育つに至った経緯をさがす。

 コメディならもっと簡素で、笑える、ネタになる理由付けを設定の段階から取り込む。


「『三人兄弟の真ん中というのは変わり者の子が多いのよね』と、おばあちゃんに言われて育った。そして、おばあちゃんの遺言もそれであったことから、彼は変わり者でいようと決心してしまった」


 過去をちょっと入れ替えただけなのに、現在の性格が随分と変わってしまいませんか?

 これがキャラクターの妙味!


 例えばこの二人を同じ場面に投入したら、まったく同じ場面が出来上がることなど考えられないでしょう?


ケースA

「それは唐突な告白だった。

ごちゃごちゃと備品の積まれた休憩室で、一緒に休憩中だった彼女が不意に言葉を発したのだ。

『好き』

『何を、ですか?』

『あなたが、好き』

『よく解らない。その文章にはまず主語がない。誰が、の部分が抜けています。いいですか、文章というのは……』

 突如始まった文章作法講座に、彼女はうなだれて涙を浮かべる。

F氏はしまった、心中で思った。

 彼女はバイト仲間の中でも特にかわいい。性格はやや控えめだが、だからこそ浮ついた気持ちではなく、この唐突に思える告白も抑え切れなかった本心の発露なのだと分析できよう。

 ただ、救われることに、彼女はもう一言だけ言葉を発した。

『それでも、好き』

『だから、その文章には主語が――』

 いいかけた言葉を飲み込んで、F氏は、鼻をすすり始めた彼女の肩に腕を回した。

『あなたがきちんと、誰が誰を好きなのか、きちんと言えるようになるまで、こうしていてもいいですか?』」


 やべえ! F氏に怒られる! 絶対怒られるっ!

 それでも止まる俺じゃない~


ケースB

「それは唐突な告白だった。

 ごちゃごちゃと備品の積まれた休憩室で、一緒に休憩中だった彼女が不意に言葉を発したのだ。

『好き』

 F氏はぐるっと休憩室を見回した。もちろん、ここにはF氏と彼女の二人しかいない。

『俺?』

 こっくりと頷いた彼女の、つむじの辺りを見下ろしながらF氏は反省する。

(今の反応は、少し普通すぎたのではないだろうか)」


 ね、違っちゃうでしょ?

 これがキャラクターの『書き分け』と言われる部分です。


 では、実際に『何を書けば』このキャラクターの差が明確になるのか……実はこれにもコツがあるのですが、話が長くなったから、また次回~


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ