1.はじまり
ヤンキー兄弟に囲まれて育った楓は中学生にして気づけば50人以上を束ねる番長になっていた。
いやいや、このままじゃいけない!!女友達は0人。
私はこんな野郎達と血生臭い学園生活じゃなくて、かわいい女の子と「きゃはは、うふふ」な生活を送りたかったのよ!!
そう思い立ってからは早かった。地元からは遠く離れた地の高校に見事合格し、さぁ人生再スタート!女の子達とお花畑で駆け回るそんなバラ色な学園生活!!
が、待っているはずだった…
あの出来事が無ければ!!
私の高校生活は薔薇色??それとも返り血?!
生まれ育った故郷から特急列車で2時間30分。
やってきました、私の新天地!
荷物を運び終えた引越し業者さんに挨拶を済まし、新たな家になる段ボールだらけの部屋で深呼吸をした。
窓からは心地の良い春風が吹き込み私の気持ちは昂った。
あの五月蝿い兄達や、今までの私を知る人は居ない。
私はこの地で普通の女子高生として人生を再スタートさせるんだ!
鼻歌を奏でながら近くにあるダンボールを開けていく。
1週間後には高校生活がスタートするからそれまでには部屋を片付けておかないと。
ガムテープを剥がしダンボールを開ける。
そこには見慣れた字が書かれた紙が入っていた。
“楓へ
もしもの時のために入れておく。 兄より”
嫌な予感が頭をよぎりながら箱を覗き込むと、金髪のショートヘアのウィッグと学ランとメリケンサックが入っていた。
もしもの時ってなに?!兄の頭の悪さに頭を抱える。
私は“普通”の女子高生を送るためにここまで来たのに。
これを使うことは一生ないだろう。一生あってはならない。
いや、でも…
正直、金髪は少し憧れがあった。
髪が痛むし定期的なカラーをしないといけない点から少し抵抗があって出来ないでいた。
まぁ、少しくらいなら…
まだ、女子高生始まってないし??
気がつけば私はその金髪のウィッグを被りコンビニへと繰り出していた。
「おう、兄ちゃん。随分ご機嫌だな。」
コンビニで大好きなプリンを買ってルンルン気分で帰宅していると、低い男の声が聞こえた。
何となく今までの感でこれはカツアゲだろう。
うー怖い怖い。カツアゲされてる人には申し訳ないが関わらないでおこう。
なんてったって私は普通の女子高生になるんだもん。
「おい、シカトこいでんじゃねーぞ。金髪野郎!」
今度は少し怒りが含まれた低い声が聞こえたと思えば、着ていたジャージの襟元が引っ張られた。
は?!私?!!
今この男、兄ちゃんって言ってたよね?
私は金髪じゃ無いし、髪も長いから男に見えるはずが…
そこで重大なことに気がついてしまった。
私、今金髪のカツラ被ってたよね?
それにショートで男に見えてもおかしくない長さの…
服装もいまジャージだし…
私、男に見られてる?!!
しかも私より頭一つ大きい男が6人に囲まれている。
男達は見たところ筋肉のつき方や佇まいから弛んで弱そうな奴からカツアゲをしてるってところだろう。
正直、倒そうと思えば倒せる。
けど、これが学校にバレたら入学前から退学?!!
ヤバイヤバイ、ここは何としてでも薔薇色の高校生活のために逃げなきゃ!!
中学時代の二の前にはなりたくない!!
「調子乗ってんなよ!」
どうやら私が瞑想中にゴチャゴチャ何かを喋ってて無視してしまったのが気に食わなかったらしく私はそのまま輩に投げ飛ばされた。
咄嗟のことだったが受身を取り事なきを得る。
…はずだった
着地と同時にバキッとプラスチックが割れたような音が足元で鳴った。
ゆっくりと音の根源を見れば先ほどコンビニで買ったプリンが無惨にも中身が飛び出ていた。
私の手には何も入ってないビニール袋が握られていた。
おそらく先ほどの受け身で転がり落ちたのだろう。
少し高めのプリンの犠牲は私をキレさせるには十分だった。
「お前ら…プリンの恨み…生きて帰れると思うなよ…」
男どもの悲鳴が夕焼けの空に響く。
はじめまして。烏賊野しおからと申します。
不良の子が普通の女子高生ライフを送るために頑張る話です。
よろしくお願いします。




