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お探しの妻はもういません。  作者: ごろごろみかん。
3.ミレイユにしかできないこと

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20/21

二回目の、自業自得ですわ

私の発言は、予想を遥かに超えたものだったのだろう。クラレンスが唖然とする。


「は……!?」


食事に腐った食材()を盛られていたこと。

そう簡単に許せるはずがない。

この始末はつけてもらうつもりだ。クルルフォーツ公爵家に。


「融資の件ですが、キチンとお返ししますわ。あなたのおっしゃる通り、耳を揃えて、ね。ですが、それとは別に、私はクルルフォーツ公爵家に正式に慰謝料を求めようと思っております」


「これ以上、まだ求めるつもりか!?がめつい女だな!しつこすぎて反吐が出る。いいか、俺はお前なんかと離婚できてせいせいして──」


「詳細はクルルフォーツ公爵家と詰めさせていただきますが、こちらの希望としては、ザッとこれほど」


私は二本の指を立てた。


「二百リュンか」


「桁が違いますわね。二万リュンです」


私の回答に、クラレンスはますます唖然とした様子だった。

二百リュンは、日本円換算だと約四万円ほど。


(本気?クラレンスは本気で二百リュンと言ったの?)


目眩がする。

二百リュンなんて、舐めてるのか。


そう思われても仕方ない金額である。

二百リュンなんて髪飾りひとつ買えない。

クラレンスのタイピンひとつ取っても、その十倍はするだろう。


私の提示した二万リュンは、およそ四百万円程だ。


実際の支払額としては、私がミューテンバルトの家を出ていることもあり、恐らく一万リュン(二百万円)前後に落ち着くだろう。

だけど、こういった交渉毎は、最初は希望額よりも高めに設定しておいた方が進めやすい。


クラレンスから金が欲しいわけではないけれど、慰謝料は融資の返済に充てればいいと考えたのだ。全額返済には足らないかもしれないけど足しにはなるだろう。


それに、これは気持ちの問題でもあった。


どちらに非があるか、明確にするための。

この問題(これ)を、過去にするための。


本人が何を言おうが喚こうが、この離縁の責任はクラレンス、もといクルルフォーツ公爵家側にある。


クラレンスは私の提示した金額に、信じられないものを見る目をした後、唾を吐き捨てるように言った。


「金に汚い女だな。人間性が出てるぞ」


「何とでも。支払いを拒絶するなら、それでも構いませんわ。その時は裁判をして、正式に請求するだけですから。……それで、どうなさいます?お互いの名誉をかけて、四審まで持ち込みますか?」


クラレンスは、例の神器が紛失したことを知らないのだろう。

だから、四審までもつれ込んで、神器を使われるのは彼にとっても都合が悪いはずだ。

自分が妻に毒を盛っていたことを白日のもとにさらされるのは、彼とて避けたいはず。


どちらにせよ、とんでもない醜聞だもの。

私はもちろん彼も、そしてクルルフォーツ公爵家をも巻き込んで、私と彼は一躍、時のひとになる違いない。


私は、それでも構わないのだけれどね。


私は首を傾げてクラレンスを見た。


「どうなさいます?お互いの家を巻き込んでの名誉決戦。いいじゃないですか?そこで決着をつけても」


「ふざけるな。お前は頭がおかしい」


どっちが。


そう思ったけれど、ここで言い返せば私も彼と同じ土俵まで落ちてしまうことになる。無闇に口喧嘩をして、言い負かしても仕方ない。

私の目的は異なるところにあるのだから。


そこまで考えた時、私はあることを思い出し「ああ」と呟いた。


「ですが、あなたは既にクルルフォーツ公爵に見限られたのでしたっけ」


ゆっくりと口にしながら、私はローブのポケットからハンカチを取り出した。それから、苦笑してクラレンスを見る。


「なら、この件には関われませんわね。悪いことを言いました」


「お前……!!」


激昂したクラレンスが突然掴みかかってこようとしたので、私は腕につけていた魔道具──もとはただのブレスレットだったのだけど、私がエフェリアを行使し、魔道具にしたものだ。

それを起動した。


途端、ブワ、と私たちの足元から突然、白煙が巻き上がる。


「ウワッ!?」


私が起動した魔道具は、発煙筒に似た効果がある。私は咄嗟に口元を手で覆い、狼狽えるクラレンスを横目に、ハンカチをレナルディア卿に手渡した。目を瞬く彼は私からハンカチを受け取ると、用途を理解したようでそれで口を覆った。


私はレナルディア卿の手首を、今度は私が掴んでから声をはりあげた。既に視界は真っ白に包まれ、一寸先も見えない状況だ。


「あら、たいへん。今起動させた魔道具は、とある気体を放出するものなのですが──あまり長く吸うと、体に害があるものなのです。これは、不審者撃退用に作ったものですから」


それだけ言いおいて、私はレナルディア卿の手を取って、歩き出した。周りはまったく見えないけれど、この道は何度となく通っているので、覚えている。

私は左に五歩進み、そのまま真っ直ぐに進んだ。クラレンスはY路地の左側にいたので、それを避けて右の道に進む。


「ほらみたことか!!それがお前の本性だ!!告発してやる!!お前が僕を殺そうとしたってな!!慰謝料を払うのはお前の方だ!!この人ごろ……」


そこまで言った時、ガンッ!!と、とんでもなく痛そうな音がした。思わず足を止めそうになったが、そのまま進む。おそらくこの音は──


「ッ~~~~!!クソ!!」


クラレンスは、見えない視界にパニックになったのだろう。手足を振り回して、それが塀に当たったようだ。今の音は、手が塀に当たった音だったのだろう。どおりで痛そうな音がしたわけだ。そして相当痛いと思われる。


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