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奴隷宰相 リュカと西国の異教禁圧編  作者: 近衛翡翠


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異教禁圧

さて、カトゥル帝国の首都で政務を行うリュカに、西国から報告が届いた。

「ダボク教?」

「はい。西国よりも西または南の地域に流布する宗教です。」とリル。

「そのダボク教がどうしたのですか?」とヘレナ。

「なんでも、カトゥル帝国による偶像崇拝の禁止や一神教に反発して、分離独立を狙っているらしいのよ。」とリル。

「それは由々しき事態だね。」とリュカ。「具体的には、どのような地域が分離独立を目指しているの?」

「西国の都から、川を隔てたダンガーラという場所が、分離独立を企んでいるらしいよ。」とマリー。

「じゃあ一度、慰撫宣布のために、西国に赴いてみる?」とヘレナ。

「それがいいかもね」とリュカ。

こうして、西国行きを計画しはじめる決まったリュカ一行。 だが、一つ懸念があった。


***************************


「此度、西国にて騒乱の兆しがあります。ついては、私自らが西国に赴き、当地に安寧をもたらしたいと考えております。」リュカはその日のうちに、テレサ女帝に上奏した。

「ふむ。それはよいな。西国では、イグル人やチット人などの不穏分子が存在するという。」とテレサ女帝は、リュカによる宣撫計画に同意のようだ。

「そういえばリュカよ。」「はい」

「先にそちが陥れられた、クラレットジャグの件があるだろう。」

そんなこともあった。

「その件で、西国の不穏分子たるダボク教が絡んでいるとの噂がある。」

「そうなのですね。今回の慰撫の旅で、ダボク教の真意を見抜きたいと考えております。」

「うむ。くれぐれも気を付けてな。」


「それでは、西国へは私達だけで参るのですね。」とリルが、マリーとヘレナを見渡していう。

「リルは初めての西国だよね。」とヘレナ。「ええ。ガラスに、宝石、絹の絨毯。西国の品はどれも素晴らしいので、一度見ておかないと。」とリル。「まるで旅行気分。」とマリーがあきれると、3人ともクスクスと笑い合った。


***************************


こうして、西国への出発の時が来た。今回は、ドージェのダンドロさんが都・リンベルから帰還するタイミングと合致したので同行させてもらう。

「出発!」と首都を出て、およそ3日は経っただろうか。ぼくらは、砂漠で道に迷ってしまっていた。

「ダンドロさん…この方向で大丈夫ですか?」

「申し訳ございません。何らかの原因で、測量班が測量を間違えたらしく…。どうやら、完全に道に迷ったようです。」

担当者によると、砂漠での道は、主に天体観測や風紋による地形で判断するらしいのだが、今回天体観測に誤差が出たために、道に迷ったとのことである。

「参ったなあ…」と僕らが困り果てていると、そこに大きなフードをかぶった複数の旅人がやってきた。

「旅のお方ですか?」と尋ねてくれた。「実は、西国の都・トルファンを目指す途中なのですが、道に迷ってしまったらしく…」とリュカが説明する。

それからしばらくの間、旅人たちは僕達の傍から離れて、何やら遠くで話をしている。その話が終わると、彼らは提案を持ち掛けてきた。

「よかったら、一緒に行きませんか?我々もトルファンへ、商品を卸す途中なのですよ。」

「そうなのですか!でも、商売のお邪魔してはいけないのでは?」とリル。

「なあに、役人を伴えば、関所の通行も容易ですからな。」とその男は、ガハハと豪快に笑いながら言う。


しかし、その夜のこと。なにやら、様子がおかしい。リュカ一行は、途中の街の宿屋に泊まることにしたのだが、同行の商人たちはどうしても宿屋に泊まろうとしない。彼らは、いつも野宿を選択するのだ。それも、町の近郊からわざわざ離れて。


***************************


「どうしたんだろう?」とリュカ。「お金は負担するから、御一緒にどうぞ。と声を掛けても断られたわよね。」とヘレナ。


「町が嫌いなのかな?」とリル。

「それにしては、町に入るとき妙に周りを警戒してるよね。」とマリー。

リュカはその言葉に小さく頷いた。

「まるで、誰かに見つかるのを恐れているみたいだ。」

「じゃあ、明日踏み込んでみよっか!」とリルは行動派だ。「ええ、何か変なことだったらどうするのよ…」とマリーは反対する。「大丈夫よ。親切な人たちだから。」


そうして、トルファンの手前に着いた次の日の夜。「こんばんは!皆さんと親睦を深めにきました!」と、商人たちが泊まるテントへとやってきたリュカ達。そこには、何やら不思議な模様のタペストリーらしきものが飾られ、お香の香りの中で、皆が何かを行っている。商人たちは、当初固まったが、すぐに状況を理解し、逃げ出し始めた。


「え?え!?」とリュカは、パニックに陥った状況を見て、混乱している。

「リル!これはどういうこと?!」とマリー。

「わ、私にもわかんないよ!」とリル。

「と、とにかく、リュカ様を守らないと!」とヘレナは必死でリュカを守ろうとする。


しかし、多勢に無勢。リュカとヘレナは、商人一行に囚われてしまったのであった。

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