なんだいきなり?
◯登場人物
松岡 修二 23歳
IT企業勤務、システムエンジニア
人付き合いが苦手
松岡 真司 20歳
シュウジの弟。既婚、子供がもう少しで生まれる
松岡 京子 51歳
シュウジの母親
もし、人の心の声が自由に聞こえてきたとしたら、どうなるだろうか。表面ではお世辞やら思ってもないことをぺらぺらぺらぺら言ってても、心の中では俺のことをあざ笑っていたとしたら。
そんな声が聞こえてきたとしたら、俺はどうするだろうか。まぁそんなありもしないことを考えても仕方ないんだけどな。
ただ、それが実際に起こったとしたら、俺はどうするだろう。この目の前にいる女が実は俺のことなんかなんとも思っていなくて、ただ自分の欲望のためだけに一緒にいるだけだとしたら。
俺はそれを知らないフリをして、過ごしていけるだろうか。
◇ ◇ ◇
俺は松岡 修二。23歳のIT企業に勤めるサラリーマンだ。
家族は母親と、3つ下の弟の真司。あ、まぁ母親とも弟とも今は一緒に暮らしてはいない。母親は東京のどこか田舎でひとりで暮らしているし、弟はどこだったか、同じく東京の都市部ではないどこかで嫁さんと2人で暮らしているはずだ。確か、子供が生まれるとかなんとか言ってたような気はする。
俺は元々は東京暮らしだったが、大学を大阪の大学に行き、そのまま大阪で就職をした。システムエンジニアという仕事だ。給料は良くも悪くもないという感じだが、元々金に執着はないから、特に不満はない。
あえていうなら不満は、人間だ。
自分のことを棚に上げていうのもなんだが、人間は何を考えているかわからない。まぁ俺の性格上、小さい頃からそんなに悩みはなかったし、親は、俺が小さい時から母親しかいなかったが、その分、俺も弟も、しっかり育ててくれたと思う。
なら何の不満がある、と言われればそうなんだが。
「ねぇ、シュウちゃん何ぼーっとしてるん?なんか悩み?」
話しかけてきているのは、俺の彼女だ。彼女…というか、たまに連絡をしたり電話したり、ご飯を食べたり飲みにいったり、今みたいに家に行って泊まったりする仲だ。
「んー、なんもねぇよ。あ、今晩も泊まっていっていいか?」
「うんっ、もちろんいいで〜。前からも言うてるけど、ずっとおってもいいんよ?」
「それは俺がしんどいからやめとく」
彼女は会社の同期の飲み会に誘われてたまたま知り合った女だった。年は2個下で、際だって美人とは言えないが、スタイルはいい。あとアレが上手い。まぁそのあたりは察してくれ。付き合ってからは数ヶ月くらいだが、お互いに別にべったりということもなく、会いたくなったら連絡する、という感じ。
それは突然のことだった。
-何がしんどいだよ、むかつくな〜。こっちもアンタに合わせていい女演じてやってんのやろ、アホ!ちょっとお金持ってて、少しだけ顔いいくらいで調子乗るなっての!
!!!
「え、なんだよ、いきなり」
俺が問いかけると、それに彼女のほうがびっくりしている。
「え、私なんも喋ってないで。どしたんシュウちゃん。やっぱ疲れてるんちゃう?」
「いや、絶対喋っただろ。アホてなんだよ。ちょっと金持ってて、少しだけいい顔って、お前それだけで俺と付き合ってんの?」
彼女は物凄くびっくりした顔をした。そして、何故か俺のことを気持ち悪いものでも見るような顔で見てくる。
-私の考えてることわかってるん、コイツ!ヤバイやつやん!え、今までなんも言ってなかったやんな、どうしよ。なんとか上手いこと言って帰ってもらおか…
俺はその頭に響く声を聞いて、一気に冷めた。
「あ〜、ちょっと急用思い出したわー。ごめんな、帰るわ」
俺は明らかに不自然だと思ったが、超棒読みで言った。
「あっ、そうなんやね。うん、うん。今日は疲れてるみたいやし、あまり無理せんとな。また連絡してな」
-ほっ、よかったわ、何も言わんと帰ってくれて。
俺は何も言わずに、彼女の家を出た。
なんだ?何だよ。何が起きた?俺の頭がおかしくなったのか?




