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文化祭開幕


 慌ただしくも楽しい演劇の準備は終わり、文化祭は幕を開ける。今年の演劇は5つ。クリュッセル達の出番は1番最後だった。


「あら、1番最後だなんて……失敗できないですわね」


 ラスティークがそう呟くと、ウィーナとロゼールはブルブルと震え出した。


「き、緊張が……」


「わ、私もですわ……どんなに知っている物語であろうとも、お、大勢の前でとなると……」


 そう言い、『失敗してしまったら……』と涙目になる。そんな2人を見兼ねてラスティークが挑戦的に微笑む。


「あら、それじゃあ、お2人は努力が足りずに敵前逃亡するとでも言うのかしら?」


「そんなことありませんわ!努力はしてきましたもの!それに、相手は敵では……」


 ロゼールが否定の言葉を紡いでいるとその言葉が続く前にラスティークは否定した。


「いいえ、敵前逃亡ですわ。だって貴女方は己の中の不安に押し潰されそうで、負けそうになっているから逃げようと、予防線を貼っているだけですもの」


 ロゼールとウィーナはハッとしたようにする。けれど、ロゼールはまだ何かを言おうと口を開きかけた。ラスティークはそれが音になる前に続ける。


「勿論、これはあくまで私から見た貴女方の様子を私のものさしで測ったものに変わりありませんわ。だから、たとえ貴女方が違うと思っても仕方ありませんの。けれど、本番を目の前にして最悪ばかりを考えていたら、どんなに素晴らしい演技でも曇ってしまう。私たちは人手が足りているわけでも、心強い味方が大勢いる訳でも無いわ。でも、自分を信じて今までの成果を出し切れば最優秀賞は取れると思っているの」


「…………そう、ですわね。私ったらすっかり弱気になってたかもしれません」


 ロゼールがそう言うと自信満々の表情でラスティークが声をあげた。


(演劇のために書き割りを用意したり、東庭園の外れで台詞の練習をしてきた。だから、私たちなら大丈夫)


 彼女の声に合わせた掛け声をあげる。心の中で自分を信じながら。



 出番まで残り1時間。クリュッセル達は用意していた衣装に身を包む。

 主役のラスティークは羽をモチーフとした髪飾りを付け、ふわりとした白いドレスを身に纏う。

 悪魔役のロゼールは黒を基調とした角付きヘッドバンドとこれまた黒を基調とした緩めのシャツとズボンの上にローブを羽織る。

 そして、王子役のクリュッセルはラスティークの持ってきたフィリオスの服に身を包みながら、模造剣を腰に差す。

 ロゼールはクリュッセルの姿を見るなり黄色い悲鳴を上げて倒れかけたところをウィーナが支える。


「ウィーナ、大丈夫?私も手伝……」


「ストップ!待ってくださいクリュッセル様!貴女が支えるとなると余計に事態が悪化しそうなので出来れば僕を手伝うよりも少し離れて下さい!失礼を承知ですがお願いします!」


 一息でウィーナが言うとクリュッセルは役決めの際の言葉を思い出し、そっと距離をとる。


「まさか……本当に倒れるとは……」


「えぇ、私もそうですわ。というか、そろそろ役員の方が案内にいらっしゃるらしいから出来ればその前に慣れて貰わないと困りますわ……ろくに演技もできそうにありませんもの」


 数分後、直視はできないものの無事に歩ける程までに耐性が付いたロゼールはウィーナとラスティークを挟んでクリュッセルとの会話をしていた。

 その時、ちょうどサロンの扉がノックされ、扉の向こう側から声が聞こえた。


「移動お願いします」


 その声にラスティークが返事をすると扉を開いて舞台への1歩を踏み出す。彼女に続く形でクリュッセル達も歩き始めた。

 舞台裏まで来たところでグレイス率いるサロンの『灰被り』の演技が聞こえる。

 衣装は裏を見る限り相当良質なものを利用している事が分かる。

 新しくも、高品質なものでも無い、せいぜい中の上程度のセット。華やかさでは圧倒的に劣ることが脇役を見ていても分かる。

 緊張から早口になりそうで、躓きそうで、心臓が早鐘を打つ。

 少し不安になったクリュッセルがラスティークとロゼール、ウィーナを見ると3人ともすこし緊張した面持ちだった。それでも、迷いを見せる目はしていなかった。クリュッセルは途端に緊張しまくっている自分が馬鹿みたいに思えてくる。

 そうなると、もう、怖いものなんて無いように思えた。


(大丈夫。例え見目がどうであれ、私たちの演技が1番。最後を飾るに相応しいものを見せてあげよう)


 ブザーが鳴り響き、『灰被り』が幕を閉じる。挑戦的な笑みを浮かべたグレイスが特に何もせずに一礼だけして戻っていく。その様子に少しの疑問を浮かべながら4人は手を繋いで確認し合った。

 大丈夫だということを。


 そして、ブザーが再び鳴り響く。幕は上がり、ステージ上にはクリュッセルと少し離れたところにラスティークが立つ。

 スポットライトが彼女たちを照らした。

 最近駆け足でごめんなさい。でも、どうしてもこの話数にこの話を書きたい!っていうのがあるんです。


↓↓↓作者の一言

 今回のグレイスが大人しい理由は次回にあります。楽しみにしててください。

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