謝罪
約二日後、その機会は訪れた。クリュッセルが早起きをしてラスティーク以外が教室に着く二十分前に教室に着くように駆け足で向かったところ、予想通りラスティークが1人、教室の窓から差す光を浴びながら外を眺めていたのだ。
荷物を置いてラスティークの側まで向かう。
「ラスティーク様」
呼びかけに反応するようにしてラスティークが振り返る。銀糸のように輝く髪が揺れ、赤い瞳が彼女を写すとラスティークはフイとそっぽを向いた。
「はぁ……朝から嫌なものを見ましたわ。さっさとどこかへ行ってくれないかしら」
「ラスティーク様、先日は申し訳ありませんでした。誠心誠意を持って謝罪させていただきたく……」
「堅苦しいのは嫌いよ。結局何が言いたいの?」
窓の外を眺めていたラスティークが椅子から立ち上がり、クリュッセルを睨みつける。
「ラスティーク様を怒らせてしまった事を謝りたいですわ。……それにもう一度、私もサロンに行きたいんですの。これから沢山の思い出を作るであろうあの場所に」
頭を深く下げてもう一度謝罪の言葉を紡ぐ。その姿にラスティークは顔を歪めた。
「……謝罪を受け入れるわ。サロンに戻るのも構わない。だけれど、ひとつ聞かせてくれるかしら?」
ラスティークが腕をぎゅっと掴んで顔を上げて喜んだクリュッセルを見つめた。
「ねぇ、どうして……どうしてあなたはそんな事ができるの?私はあなたをまた傷付けたというのに。それに謝るべきなのは私の方なのに……ごめんなさい。あなたの思いを踏みにじって、汚して、傷付けてしまって」
苦しそうにそう話すとクリュッセルはそっとラスティークの手を包み込んだ。
「私は、私のやりたいことをできるだけしています。だから、私がラスティーク様へ贈ったあのブローチも私がラスティーク様に贈りたかったから。ラスティーク様がどうして。と思うような行動をしているのは、私にも非があると勝手に判断したから。それに、ラスティーク様は今、きちんとご自身で謝られたじゃないですか。それだけで私は充分ですわ」
温かい言葉とは少し違うけれど、その言葉がラスティークの心に少しづつ沁みていく。
「だけれど、その謝罪はあなたが謝ってからで……!」
「そんな事、関係ありませんわ。だってこうして涙で頬を濡らしてしまう程に気にかけていただいていた事を知れましたから」
そっとハンカチをラスティークの頬に当て、涙を拭う。離れようとラスティークが壁側に下がるとクリュッセルは距離を離さないように詰めた。
「私は、好いた人には笑顔でいて欲しいと前に言いました。それは喧嘩したり、怒られてしまった後もですの。私は相手が笑顔になってくれるなら、どんな時でも笑って手を振りますわ」
「……どんな時でも笑って手を振るなら、罵詈雑言を浴びせられ、嘲笑の的になりながらでも?」
「えぇ、それがあなたを笑顔にさせると言うなら石を投げられても笑っていますわ。だから、泣き顔をしないで笑って下さいませ」
幸せそうに、愛しそうに微笑みながらクリュッセルがラスティークの事を見つめた。ラスティークはその言葉に応えるように僅かに微笑むとハッとする。
「……クリュッセル。あなた、席を間違えているのではなくって?今はあちらの席でしょう?」
誤魔化すようにひとつ咳払いをして普段の表情に戻ると数日前まではクリュッセルの席だった場所とは反対方向の席を指さした。クリュッセルは思い出したようにあっと驚くと少し赤面してパタパタと荷物を移動させた。
(危ない。私は飽くまで彼女の姿勢に憧れているだけ。この胸の高鳴りは絶対に嘘よ。恋なんかじゃない)
そんな彼女の背中を見守りながらラスティークは一瞬だけ彼女のものになるのもいいかもしれないと思ってしまった自分に言い聞かせる。
用も無いのに再び自分の元へと駆け寄ってきたクリュッセルに少し呆れながらラスティークは三人目に教室に来るはずのロゼールが来るのを会話をしながら待った。
仲直りるんるんきぶんです。最近の文字数からすると少し少なめとなりましたが、書きたい言葉をかけて嬉しいです。
↓↓↓作者より
雪、凄いですね。私のところもだいぶ積もりまして雪かきの時間です。暖房ないと寒いな〜。読者の皆様もこの寒さに風邪をひかないように気をつけてお過ごしください。




