相談
「本当に、私ってば愚か者ですわね。折角の好意も無下にする事しかできないんですもの……」
1人、西庭園に立ち寄って薔薇を眺める。奪われた場所に人影はなく、1人になるのにちょうど良かった。
近くの生垣に手が届きそうで届かない距離で座ると少し俯き、涙を流した。
「あれ、先輩じゃありませんか?どうされ……」
「貴方は確か……」
声に顔を上げるとラスティークの涙に驚いた様子のイメリードが立っていた。イメリードは何も言わずに隣に座ると自身の上着をラスティークの頭にそっと掛けた。
「……優しいのね。話は聞いたりしないのかしら?」
「別に、先輩が話したくないってなら話さなくて良いです。でも、泣いてる人を見かけたら、ほっぽって逃げるような人になりたくないんで」
「……そう」
静かな時間が緩やかに流れる。時折、鼻をすする音が聞こえたかと思うとラスティークが口を開いた。
「これは、独り言なんですのよ。……折角の好意を無下に扱って、相手を傷付けてしまいましたの。素敵な物で、嬉しかった。けれど、使ってしまえば、貰ってしまえば、壊されてしまう事が分かっているから。だから相手を突き放してしまったんですの。本当に、最低な人間ですわ」
自嘲気味なラスティークの言葉にイメリードは少し考えてから青い空を眺めた。
「これも僕の独り言です。何としてもそれを守りたかったり、好意を貰えて嬉しかったって思いがちゃんとあったら、喜びを伝えてから受け取れないと言うなり隠して、誰にも知られないように使えば良かったと思うんですよ。今ならきっと伝えられますよ」
爽やかな風が薔薇の花びらと共に舞いながらラスティークの頭に掛けられた上着も巻き込もうと舞いあげたところでイメリードがパッと上着を取る。
「先輩、頑張ってくださいね。僕、これでも先輩のこと好きなんですから」
少し赤くなった目元を見てイメリードは微笑んでラスティークの背中を押した。
「どうせ、私なんかが作った物だったから……」
東庭園でどんよりと淀んだ空気を醸し出すクリュッセルはガゼボで頭を抱えていた。
「うわっ、どうしたんですか、先輩。こんなところでこんなに落ち込んで。らしくないですよ」
「フィリオス君……少し話を聞いてくれる?」
うるうると瞳をうるませてそう頼むとフィリオスは、ぐっ……と顔を歪めながら少し頬を赤くした。
「……分かりましたよ。でも、どうせ姉様の事でしょう?早くしてください。僕も暇じゃないんで」
「う、うん、分かってる……つもりだから」
そう言うとフィリオスはガゼボへと足を踏み入れた。クリュッセルはそれを見て、ポツリポツリとこうなった理由を掻い摘んで説明した。
「──と、言うわけでラスティーク様を怒らせてしまったの。どうしましょう。私、私、謝っても謝りきれませんわ!」
「別に、姉様なら気にしてないと思いますよ。というか逆に自分の行動を気にしてそうです」
「それでもですわ!どうせ私のエゴですもの!」
拳を握り、決意を強く持った瞳でそう訴えかける。
「と、言うかどうして姉様の事をそんなに気にかけてるんですか?嫌がらせの元主犯格をなんて、かなりの変人ですね、先輩。どうせなら僕……んん、何でも無いです」
「ラスティーク様がどうして好きか……ですの?そんな事、芯の強さと優しさですわ。元々憧れの存在で、実際に見て、その憧れが膨らんだ。ただそれだけですの。好きに理由なんて何通りもあるんですのよ。それなら、私は私なりの理由であの方を、ラスティーク様を好きになって、できることなら振り向いていただきたいんですの」
夢を語るような、幸せそうな声色でクリュッセルが謳う。彼女のその様子にフィリオスは少しだけ胸が苦しくなりながら、笑顔を作った。
「……そう、なんですね。それじゃあ無理にでも謝る機会を作らないと。姉様は決めてしまえば断固として顔を合わせようとしませんから。僕も数回ほどやらかしてしまった事があるので。健闘を祈りますよ」
「えぇ、分かったわ。アドバイスをくれてありがとう、フィリオス君」
はにかむクリュッセルを振り返ることなくフィリオスはガゼボを後にする。後ろで少しだけ元気になった声で『どうすればラスティーク様と仲直り出来るかしら?』と聞こえたが、それがフィリオスの胸を一層苦しめた。
すまん、フィリオス。ルート入りは君だったから……本当にごめんね。私はあなたを別のルートで幸せにするからさ。と、言うことで。後輩組は何だかんだ言って優しく話を聞いてくれるし、静かにそばに居てくれるタイプなんです。だから今回の出番というか基本的に多いのはそこです。仕事量も差がありますし。それに、王子組はとりあえず聞こうと躍起になりがちなんです。
↓↓↓作者のひとこと
節分ですね。歳の数だけ豆を食べましたか?私は食べながら幼稚園児、小学生時代の豆まきを思い出しました。家中が落花生まみれだったなぁ。




