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贈り物


 夏季休暇が終わり、改めて学園へと戻る。授業は準備などを考え明日から。そんな絶好の機会をクリュッセルは逃すことは無かった。

 しかし、ラスティークが何処にいるのか、部屋は何処なのか等の情報は持っていない。ひとまず夏季休暇中に一方的にではあるが頼んだサロンへと足を運び、顔を出そうかと廊下を歩いているとちょうどサロン側から歩いてくるラスティークと出会った。


「ラスティーク様!」


「あっ、あなた!」


 嬉しさのあまり小走りでラスティークの元へと駆け寄るとラスティークは少し視線を逸らして『な、なんの用かしら?私は忙しいんですのよ』と話した。


「ラスティーク様、お忙しい中申し訳ありませんが、もしよろしければ私に少しだけ時間をいただけないでしょうか?」


「何かしら。面倒な話だったり長い時間を要するなら聞く価値なんてないのだけれど」


 ツンとした態度でそう話すラスティークにクリュッセルは顔を輝かせんばかりに笑う。


「先日お話していた贈りたい物の準備が出来ましたの。ですからサロンで……」


「あら、そういえばそうだったわね。でもサロンはもう鍵を閉めてしまったし戻るのも面倒だわ」


 ラスティークがそう言うとクリュッセルは少し落ち込むが直ぐに代替案として東庭園の端、あまり人目につかない場所を提案するが、ラスティークは『今度は一体何をする気なの!?』と少し距離を置こうとした為、人目につかない端ではなく少し高い位置から見ればすぐに見つかる場所を提案した。

 ラスティークが薔薇の生垣の側まで行き、話を切り出す。


「で?私に贈り物とは何なのかしら?大したことの無いものなんていらないわよ」


「そんな……」


「あぁ!分かったわよ。受け取ればいいのでしょう?受け取ってあげるわ。だから早くしなさい」


 クリュッセルがその言葉に百面相のごとくコロコロと表情を変える。そして、呼びかけた。


「エトワール、来てちょうだいアレ(・・)を渡したいの」


 何も無い空間に向かってそう言うと空気が渦巻き、チラチラと雪が僅かに舞う。風の渦が消えると小さな銀色トカゲの姿がそこには有った。


「あら、もしかしてこの方は……」


 ラスティークが首を傾げながらまじまじとトカゲを見つめるとトカゲが言葉を発した。


「あまりジロジロ見ないでくれると嬉しいな。私のこの姿は暑さにはそれなりに強いけど熱視線を向けられたり10分以上だと流石に疲れるから。契約者、この空間に手を入れて。すぐそこにあるはずだから」


 そう言うとエトワールは黒い渦のようなものを出す。クリュッセルは躊躇いなくその渦に手を入れ、ブローチを大切に取り出すとエトワールはすぐに姿を消した。


「今のは……」


「ご察しの通り、エトワールですわ。そして、私がラスティーク様に贈りたかった物はこちらですわ」


 クリュッセルがそっとブローチを差し出す。ラピスラズリとアクアマリンが基調となった青薔薇のブローチだった。

 ラスティークがそのブローチを受け取ると爽やかな風に包まれたような気がした。その瞬間、ラスティークの表情は一変し、怒りを顕にする。


「ねぇ、どうして私にこの様な付与魔法がかかったブローチを渡したのかしら?」


「私は魔法の補助ができる付与が出来ないので、せめて回復と守護をと思ったのですわ」


「あなたは私の事を憐れんでいるの!?私はこれでもあなた以上に強く、防御もできるんですのよ!」


「私はあなたの事が好きでも守ることができないからせめてと……!」


「守る?告白の返事すらしていない上に私よりも弱い癖に?」


「告白の返事はいつまでも待ち続けますし、たとえ断られても私はあなたに……」


「いい加減にして頂戴!私を惨めで愚かだと思っているのでしょう?」


「そんなこと……!」


「例えそうで無くてもこの際どうでも良いわ!暫くサロンには顔を出さないで頂戴。もし許可を貰いたかったらあなたの御友人にでも頼んだらどうかしら?……このブローチはお返しするわ」


 そう言うとラスティークは振り返ることなく東庭園を去る。クリュッセルは追いかけることも声をかけることも出来ずに、ただその背中を見つめるだけだった。





********************



 「いい加減にして頂戴!」


 僅かに声が聞こえた気がした。それは、シャラナーダとガスティンが3階の廊下を歩いている時だった。東庭園でクリュッセルとラスティークがなにやら揉めているようで、上手くは聞き取れなかったがクリュッセルが落ち込み、ラスティークが気にすることなく立ち去って行ったことだけが分かった。


「全く……パーティーの時と言いどうして彼女は……」


「ラスティーク嬢の事ですか?」


「あぁ、少し前まではクリュッセル嬢に嫌がらせをしていたかと思えばいつの間にか共にサロンを作り、今は彼女を悲しませている。はぁ、一体何がしたいんだ……」


「俺にはよく分からないがきっと事情があるのだろう」


「それにしても、だ。あまりに彼女ばかりに執着しているようにさえ感じてしまう。まるで、何かに取り憑かれたかのように」

来週!弟くんとイメくん登場!予定です。ちなみに今週出た攻略対象2人の影が薄いのは単にラスティークちゃんへの好感度の差です。2人より年下組のが若干高いです。弟くんはふつーに高いです。だからです。


↓↓↓雑談

 寒いですね。昨日うっかり滑って氷(雪が溶けて攻撃力アップしたもの)に膝をぶつけました。血は出てないなと思ってたら出ててびっくりしました。みなさんも気をつけましょう。

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