パーティー 3
食べ物
レット⋯ガレット
プラスパン⋯フランスパン
視線を上げて中央塔の入口に向ける。令嬢たちの姦しいほどの歓声の中からフィリオスが逃れるかのように現れると一部の令嬢たちが塔の外に出る。すると堰を切ったように塔の中へとなだれ込む
「…………」
フイとそっぽを向くとラスティークは手元のディルアートに再び口を付ける
(どうせ私が行っても踊ってはくれないでしょうし、これで良かったんですわ。きっと)
そう言い聞かせて俯く。喧騒の中段々と音が遠くなっていくのはきっと気のせいでは無いのだろう
「……中央塔の所、先程よりも人が多いわね」
「そろそろ時計の針か真上を指すからですわね」
懐中時計を取り出してロゼールが告げる
「もう本当に少しだけですわ……10,9,8,7,6,5,4,3,2,1……」
カウントダウンをする様に数字を口にすると針が真上を指して少しの間が空いてからどこから出ているのか分からないほど高い歓声が響き渡る。思わず耳を塞ぎ、顔を顰めると満員電車のようにぎゅうぎゅうと押し合いながら中央塔へ入っていく彼女たちを見てクリュッセルが呟いた
「あの中に入ってまで踊ってこよう。なんて気力はありませんわ……」
心底疲れるかのような顔をするとウィーナは苦笑いを零すとふと思い出した事を提案した
「あはは……まぁ、日が傾き始める頃には外でも踊り始めるのでそのタイミングで踊りませんか?」
「外で?」
「はい、中央塔って僕たちみたいな奨学生には何か入り辛い印象があって、外で日が傾き始めて星が輝き始めるまでの間に好きなペアで踊るんです。ちなみにそのダンスで最後のタイミングで踊っていた両想いの2人は結ばれるという伝説もあるそうですよ。まぁ、先輩から聞いた話なんですけどね」
その言葉にロゼールとクリュッセルは目を輝かせて、ウィーナの手を取った
「「いいですわね!!」」
(これで私にもクリュッセル様とダンスのチャンスが来ましたわ!)
(ラスティーク様、どうやら先程から少し離れたところにいらっしゃるし、動いていないなら最後のタイミングに誘ってしまいましょう!)
2人とも、想い人へ近付く為にうってつけなウィーナの話にとても乗り気で、頬を緩めて抑える初恋の相手にデートを誘われた時のような2人の姿は提案したウィーナでさえ驚くほどに可愛らしかったが纏っている空気が常人と異なり、異彩を放っていた
(普段の態度からして絶対2人とも同性が相手だろうなぁ。まぁ、同性でも踊れるけどその伝説って未だ男女間でしか確認されてないんだよねぇ……)
少し気まずそうに目線を逸らすと令嬢から脱兎の如く走り回るフィリオスが視界に入る。涙目で逃げ惑う彼の姿にウィーナは受けの素質を見出し、ノートをパッと取り出してネタを書き出す。周囲から見れば混沌とした空間で、遠目に見かけたラスティークはドン引き、フィリオスは中心人物にクリュッセルがいた事によって思わず笑ってしまう程だった
「それにしても……本当に美味しいわね」
「えぇ、このガット、卵とベーコンの塩味が美味しさを引き立たせてくれていますわ……!」
「……むぐむぐむぐ」
「ウィーナはとりあえず飲み込んでから喋りなさい」
ダンスをする事を決めてからというもの、生徒会のメンバーと踊りたいという訳でもない3人は食事を摂っていた。クリュッセルはチキンの香草焼きとプラスパン、ロゼールはガット、ウィーナはレットとルースパンを食べている。栗鼠やハムスターのように頬をふくらませながらレットを頬張るウィーナにまた注意しながら2人も食事を楽しむ
クリュッセルはカップを手に取り紅茶を飲もうと運ぶがすっかり空になってしまっていたようだ。立ち上がり、ロゼールたちに微笑む
「……あら、少し紅茶をとって来ますわ。2人とも少し失礼するわね」
早足で紅茶を取りに向かい、ディルアートを手に取ると僅かに銀色が視界に入る。もしかして、と思いパッと見えた方向に視線をうつすと2人隣にラスティークが立っていた
高く結ばれた美しい髪とホワイトダイヤモンドとムーンストーンでできた耳飾り。華やかでいて儚さを持つドレスは彼女の美しさをより際立たせていた
「あっ……」
クリュッセルの視線に気付いたのかラスティークはそう声を漏らすと踵を返して逃げ出す
残されたクリュッセルは少しの間呆然としていたがハッとするとその背中を見失わないように追いかけ始めた
あ〜!ようやく2人を会わせられた!次回は皆さんお待ちかねの対話回です!
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すごく寒くなってきてますよね。私のところは朝はもう1桁です。これから寒くなるので鍋と肉まんの季節です。楽しみ(*´﹃`*)




