パーティー 4
ドレスの裾を踏まないように軽く持ち上げる。勿体ないし、失礼な事だと分かっていたけれど先程手に取ったディルアートをカップごと落として追いかける
普段取り巻きに囲まれ、華々としているラスティークに自信を避けている理由を聞きたいと思ったからだった
(慣れてきたとはいえヒール……とは言ってもローヒールなんだけど、それなりに離れてるしこのまま追いかけるのは得策とは言えない)
怪我をすることも、嘲笑されることも厭わずにヒールを脱いで片手に持つと更に離れてしまったラスティークを追いかけた
人混みを縫うように2人の追いかけっこは続けられる。ぐるぐると回るように走り続け、頃合いを見計らい、ラスティークは中央塔の影に隠れた。息を整えながらチラリと来た方向を見ると遠くの方でクリュッセルが辺りを見回す姿が見られた
「はぁ……どうして敵前逃亡なんてしてしまったのかしら……彼女なんて私が直接手を下さずともどうにでも出来るというのに……」
ぽつりと呟いて地べたに座り込む。風がサラリと肌を撫でると心地良さに少し目を瞑った
(あの時、中央塔から出なければ今頃はシャラナーダ様と踊ることも……いいえ、ありえませんわね。彼は私のことを嫌っているのですから……)
「ようやく見つけました!ラスティーク様!」
少し考えごとをしていただけなのに見つかってしまった。ラスティークがその事実に驚き逃げようとした所をクリュッセルが引き止める
「ど、どうか一度だけでも私と2人っきりでお話をしてはくださいませんか……?」
逃げないように掴んだ左手首の力を緩めて懇願するようにラスティークを見つめる
「ふん……オトモダチごっこをしていた2人を放っておいて私と?随分と余裕のようですわね?」
手を払い除けて嘲るように言い放つ
(ここではこの言葉が最善策。下手に近付けすぎては面倒なことになりますもの。それに、手を掴まれた時の感覚って……いいえ!私に同性愛は生憎あるはずもありませんわ)
「……ごっこなんかではありません。それに私は私のことを応援して下さるその友人がいますわ。だからもう一度、ラスティーク様に願わせて頂きます。どうか、私と2人っきりでお話をしては下さいませんか?」
真剣な眼差しで彼女を見据える。ラスティークは少し面倒くさそうな顔をしたかと思うと答えた
「……えぇ、分かったわ。ただし、決して私の顔を見ずに今すぐに始めることが条件ですわ。私が後ろを向いて差し上げますから手短に済ませて欲しいわね。私も暇じゃありませんもの」
そう言いクリュッセルに背を向け顔が見えなくなってから、ラスティークの返答にクリュッセルが花が綻ぶように笑顔を浮かべた
「ありがとうございます!」
「いいから早く要件を済ませて頂戴。このままつまらない礼儀に倣い話を長々とするようなら私は戻らせてもらうわ」
また歩き出そうとするラスティークの腕を掴むと必死に留まってもらうように願う
「ま、待ってください!私、まだ何も話せていませんわ!」
「わ、わかったから早くその手を離しなさい!!」
ラスティークが思わず振り返ると2人の視線が交わる
「……いいから早く話して頂戴」
視線を落としながら顔をほのかに紅くしたラスティークが促した
「は、はい!あ、あの、ラスティーク様は最近私のことを目に見えるように避けておられますが何故でしょうか……?」
「そ、それは……あ、貴女が気に入らないからですわ!!せ、せいぜい脆弱な人脈で良い令息との婚約もなしに寂しくなってしまうようにに決まっているでしょう!?」
何かにムキになるようにキッと睨みつけながらクリュッセルを見つめる
(そ、そうだったのね……!!……もうこうなったら嫌われていようが憎まれていようが構わない!沢山愛を伝えてその気にさせてみせるしかない!)
「───だからシャラナーダ様に幾ら気に入られていようが最終的に婚約してみせるのは「ラスティーク様」ちょっと……っ!」
決意を固めたクリュッセルは条件も忘れラスティークの顔をじっと見つめた。その真剣な表情に言葉を重ねてきたこと、条件を破ったことに対する苛立ちも忘れて静かに紡がれる言の葉を待つ
「……私は貴女の想うシャラナーダ様に異性としての好意を寄せているわけではありません。私は……ラスティーク様、貴女様をお慕い申しております」
今すぐにでも抱きしめ、叶うならその唇を重ね合わせたいという欲を抑えて淑やかに愛の告白をする令嬢を装う
「な、何を……」
「ラスティーク様の光に照らされて月白色に輝くその髪も、周りに気遣いのできるその優しさも、いつかの日の婚約のために重ねてきた努力も真摯に学ぶその姿勢も全てが好きなのです。私は貴女を愛しているのです!」
頬が赤くなっていくのが分かる。身体に熱が籠っていく感覚がする。それはきっと耳を塞ぎながら紅くなった顔を極力見せないようにしているラスティークとて同じだろう
4歩程度の距離を詰めて耳を塞いでいた手をそっと離して両手で包み込む
「……ラスティーク様、いきなりのことであり、嫌いな私からの告白なんて嫌悪感しか抱かないことでしょう。……それでも、いつかの日に私のこの気持ちに対する返事を聞かせて欲しいんですの。どうか、今すぐに結論を出さないで欲しい。そんな私のわがままをどうか聞いてくださいませ」
誰よりも誠実で慈しみ深く大きな愛を込めた告白。ゆでダコのようになったラスティークはぱくぱくと口を動かした
(どうして……あれほどまで嫌っていたのに、どうして、あんなに突き放しているのに……)
やがて、きゅ……と口を結んでその場から何も言わずに逃げると行く宛てもなく会場の人気のない方へと走り出した
一方、残されたクリュッセルは両手で顔を覆い隠してその場にしゃがみこんで呟く
「……私、遂に言っちゃったんだ」
どうしよう。そんな言葉は音にならずに胸の内に溶かしてしまうと靴を改めて履いて甘い甘いジュースを取りに向かったのだった
書いててテンション上がってました。最近テンションがおかしいです
次回はそれぞれの視点の話かロゼールとウィーナの話を書こうかなって思います
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冷え込みエグくないですか?なに急に。なんで朝は3°Cなの?昼間も12°Cくらいじゃんか。秋はどこに行ったんだどこに。この寒暖差のせいで私のテンションがぶっ壊れて月曜から金曜テンションだよ。読者の皆様は私みたいにならないようにお体に気をつけてお過ごしくださいね!




