庭園にて─後編─
前回の続き
凛とした眼差しがクリュッセルを射貫く
二人のいる庭園に先程まで響いていた小鳥の囀りと虫の織り成す演奏は終わりを告げたのか、風の流れだけが静かな音色を奏でている
「…………」
(ヤバい!!推しに告白って緊張するんだけど!!あ、当たり前か!…え、待って待って!告白ってどうすればいいんだっけ!?)
緊張をしすぎてどのように伝えれば良いのか分からずにクリュッセルはキッとラスティークを見つめる
「どうしたの?私に何か伝える事があるんではなくって?」
此方をキッと睨みつけるように見ているクリュッセルに対し、異変を感じ、問いかけるとクリュッセルは口を開いた
「ラ、ラスティーク…様、あ、あのっ…!あのですね…!」
口を開いたものの、中々話を切り出さないクリュッセルにしびれを切らし
「なんですの!?いい加減にして下さらない!?私、貴女のような人が最も嫌いなんですわ!!言う事があるならばなんでも言いなさい!!」
と、少々キツい言い方になりつつも、発言を促す
「はっ、はいっ!」
(あ〜!ダメだ!『ラスティーク様のことをお慕いしております!私と付き合って下さい!』だなんて推しに言えないわぁぁぁ!………………はっ!あの台詞なら言えるかも!!)
もう、日は沈み空が紺色に染まりつつある庭園。空にはラスティーク様の髪色と同じ銀に輝く月が昇っている。季節は秋だからこそたった二十分で日が沈むようだ
「ラ、ラスティーク様、空を見上げて下さい」
「はぁ?なんで私がそんな事をしなければ……」
何を言われるのか。もしも貶すようなことであれば罵倒しようかと考えていたラスティークは斜め上を行く言葉に驚きを隠せなかった
「良いので!見て下さい!」
クリュッセルの圧力におされ、渋々と言った感じでクリュッセルと共に空を見上げる
「見ましたわよ。……で?そろそろ寮に向かわなければならない時間の様な空に何か?」
『意味が分からない』という風にラスティークは顰めっ面をしながら空を見上げている
「ラスティーク、あの空に輝く月を見て下さい。ラスティークの美しい髪と同じ様に輝く月を」
手を伸ばし、月へと手を伸ばす。まるで、近い様で遠い月を掴むように
「……っ!」
クリュッセルの本心から出た言葉。それを理解したラスティークは驚きを隠せず、向き合ってクリュッセルを見つめた
クリュッセルを月へと伸ばしていた手を下ろし、ラスティークと改めて向き合う。そして、頬を少しばかり紅色に染め、瞳を潤ませながらあの文豪の話を思い出しながら告げる
「ラスティーク様…今宵は、月が綺麗──」
『月が綺麗ですね』そう、彼女への気持ちを恥ずかしがり、有耶無耶に伝えることが無いようにハッキリと伝えようとしたその時、
「そこで何をしている!!」
二人きりの空間に響いたのは男性の声。その声が彼女との逢瀬の終幕を告げる
声のした方へと視線をうつすとそこに居たのは、シャラナーダだった
「いえ、特に何も。ただ話をしていただけですわ」
ラスティークがそうシャラナーダへと簡単に説明すると『それでは私はこれで』と一言告げ、庭園を去っていった
その背中を終始喋らずにクリュッセルは見送った
寂しく感じながら一人感傷に浸っているとシャラナーダから
「大丈夫かい?泣いているようだが…何か酷いことでもあの悪女にされたのかい?」
心配をしている声色をしつつ問いかける。此処でラスティークとの時間を邪魔されたことを告げずに泣くと勘違いをされる。そう思い
「いいえ、大丈夫ですわ。ラスティーク様の言う通り、ただ話をしていただけですの。……それでは、私はこれで」
と、告げてその場を後にして寮の自室へと戻った
夕食は部屋へ食事を持ってきてもらった。そして一人、静かに食事を摂ると入浴と歯磨きを済ませた
ベットへ入ると庭園で伝えることが出来なかったこと、邪魔されてしまったことを思い出してしまい、一人啜り泣きながら夢へと沈んでいった
次は番外編でリャイナ目線の話を書きたいと思います。
本編の続きはこの日の話から少し後の話になる予定です。




