文化祭回り 2
「はぁ……クジの結果とはいえ、貴女と回ることになるなんて……」
「仕方ないでしょう?クジですもの。私も出来ればあの庶民……いえ、ウィーナでしたわね。彼女と回りたかったですわ」
あからさまに顔を合わせないようにするラスティークとロゼールは先程のクジで組まれたペアだった。両名共に憧れの人あるいは比較的話しやすい相手と組みたかったのだが、クジの結果は見ての通りで少し気不味い空気が二人の間に流れていた。
「……というか、演劇の練習の際に思ったのだけれど、貴女、最初のうちは私に向かって散々“クリュッセル様にあまり近付かないで!ガオーッ”とかいう空気を出していたのに今となっては牙を抜かれた猫のようになっていますわよね」
「なっ!べ、別に私は貴女のしてきた事を許したわけでも忘れたわけでもありません!ただ……ただ、私はクリュッセル様に笑顔になって頂きたい。幸せになって欲しい。そのためだけに貴女に協力したに過ぎません」
ふい、とロゼールが顔を逸らすと偶々作品の展示がされている教室が視界に入る。ピタリと足を止めるとラスティークがそれに気付いて声を掛けた。
「あら?この教室が気になるの?」
「別に、そういう訳ではありませんが単に目に付いただけです」
「待ってくださる?」
再び歩き出そうとするロゼールをラスティークが引き止める。そして、笑顔で提案した。
「私、この展示が急に、本当に急にだけれど無性に気になるんですの。良ければ見ませんこと?それに、こんな事になったとは言え、一応は何かを見て回りませんと割に合いませんわ」
「……仕方ないですわね。そこまで言うなら付き合いますわ」
少しだけ、ほんの少しだけ嬉しそうにロゼールはラスティークの後に続いてその教室へと足を踏み入れた。
展示されていたのは、数々の絵画だった。最近の物ばかりという事を考えるにこれはきっとどこかのサロンで描かれたものなのだろう。
色合いが鮮やかなものがあれば、モノクロのものもある。
愛らしい動物や美しい花々が描かれたものがあれば、よく分からないもの──良く言えば前衛的なものまで。その数およそ20作品に及ぶ展示だった。
疎らな人影は何も言わずにただ作品を見ては興味無さげにすぐ次の作品に移っていく。
二人はバラバラになりながらではあるがゆっくりとその展示を見ていた。
まるで時間がそこだけゆっくりと進んでいるかのように。
「ウィーナ、早速だけど私、お腹が空きましたわ。貴女は?」
「勿論、僕もペコペコです。早く食堂のブッフェに行きたいです」
一方でクリュッセルとウィーナは二人と別れた後、食堂へと向かう。なぜなら、この日限定で特待生も入る事ができ、自由に飲食できる為であった。
ウィーナは目をキラキラと輝かせて心弾ませながら少しだけ早足になりながらクリュッセルをリードする形で向かった。
食堂はまだ人が少なく、殆どの席が自由に座れる状態だった。二人はまず初めに好きな料理を取ると、用意されていた飲み物を選んで窓際の席へと座った。
「……ウィーナ、その量、全部食べれるのよね……?」
「勿論です!食べれるうちに沢山食べてたらこうなりました!それにこの学園の料理はどれもこれも美味しいですから幾らでも食べれそうです!」
苦笑いを零すクリュッセルの目の前には大皿3枚分に盛られた料理やフルーツ、スイーツ。そして4つのマグカップになみなみと注がれた飲み物が広がっていた。
(そういえばパーティーの時にも相当量食べてたわ。というか何?この子は小説家なの?え?フードファイターとか目指してるわけじゃないわよね??)
「そ、そうなのね」
若干顔を引き攣らせて笑いながら誤魔化すとクリュッセルは手元にある料理を口へと運ぶ。
いつもと変わらない味の、美味しい料理だった。
クリュッセルがそっと微笑んでローリップを飲んだ。最近は供給量が減っていたから、あまり飲む機会が無かったな。なんて思いながら少しだけ酸っぱい紅茶を楽しむ。ふと顔をあげるとウィーナの料理が何処へ消えているのかというスピードで消えている事に気が付いた。
少し心配になったクリュッセルはおずおずと声を掛ける。
「……ウィーナ、喉につまらせたりしないでね??無理に全部食べようとしなくていいんだからね?」
「むぐっ……!……大丈夫です!僕はこれでも相当入るんですよ。だから心配は要りません!」
ドヤッと宣言するウィーナを見てクリュッセルは考えることを止めた。そして、再び食事へと戻り、黙々と食べ進めたのであった。
昨日投稿出来ませんでした。ごめんなさい。
文化祭編はまだ少し続きます。というか書きたいです。こういうの書くのめちゃくちゃ楽しいです。




