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謁見

重たい扉が開き、遥か続く長い廊下。


その最奥の玉座にグリンフィールド王国国王、ジェラルド・グリンフィールド様がいらっしゃった。


「国王陛下、クロフォード、ただいま戻り、ご報告に参上致しました」


クロフォード様の最上級の礼に倣い、私もアメリアから習ったばかりの最上級の淑女の礼で膝を着き、頭を垂れる。


「ご苦労だった。クロフォード。面をあげなさい。フェリスティア嬢も、遠路はるばるご苦労でした。顔をあげてください」


アメリアに事前にジロジロ見てはいけませんと言われていたにも関わらず、金銀と宝石に彩られた玉座に鎮座する国王様に、思わず目が釘付けになってしまった。


明るい茶色の髪に、緑の瞳はクロフォード様そっくりだが、王太子様よりも優しげな目元だ。


しかし、口元は自信のある笑みを覗かせており、目元と相まって余裕と包容力を醸し出している。


隣には、女王陛下が座っていらっしゃる。


柔和な笑みを浮かべ優雅に腰掛けているが、焦げ茶色の瞳がお客様に興味津々!といった感じで輝いてるのを隠しきれていない。

クロフォード様の表情はお母様譲りのように思える。


白のドレスが上品で、金色の緩くウェーブがかった髪によく似合っている。


「お忙しい中、お時間をいただきありがとうございます、陛下。神託の巫女、フェリスティア嬢をお連れ致しましたので、ご報告させていただきます」


~・~・~・~・~


「報告ご苦労、クロフォード。フェリスティア嬢、ここまてまお越しいただきありがとうございます。ご自身についても、この国についても記憶がないということで、さぞ不安かと思うが大丈夫かな?」


「はっはい!!国王陛下にまでご心配をおかけし申し訳ございません!私は大丈夫です!!」


湖で見つけてもらってから城に到着するまでの経緯を、クロフォード様は簡潔に淀みなく報告していった。

前世で言うなら仕事のできる営業マンという感じかしら?と妄想&油断していると、突然、国王陛下に話しかけられ、思わず上ずった大声で答えてしまった。

お恥ずかしい…。


「グレイソン、フェリスティア嬢について、わかったことはあるかな?」


クロフォード様と部屋に入った時にはいなかったはずのグレイソンが、いつの間にか私達のすぐ後ろに控えていた。


「はい、陛下。クロフォード様からフェリスティア様についてお聞きし、国民台帳を調べましたが該当するお名前はありませんでした」

「そうか…引き続き調べてみてくれ。フェリスティア嬢の身元がわかるまでは、城の貴賓室で過ごすといい。フェリスティア嬢はそれでも構わないかな?」

「もったいないお言葉でございます。ご配慮いただきありがとうございます」

「ではグレイソン、併せて手配を」

「かしこまりました」

「フェリスティア嬢もクロフォードも、とりあえずはゆっくり休みなさい。雨の件については、私から国民に説明しよう」

「はい、お願い致します、父上」


~・~・~・~・~


その後、国王陛下から国民に、次の神託の巫女が見つかったこと、新月の夜の次の日に雨が降るとお告げがあったことが発表されたそうだ。

新月の夜は3日後。


お告げというものは、国民からかなり信頼されているようで、まだ降っていないのに国民達はすっかり安心し切っている。

と、ミリーが貴賓室で待機する私に伝えに来てくれた。


「うぅっ、これで雨が降らなかったら…」


神託の巫女と言うものが、あまりに過大な信頼をされていると改めて知り、胃が痛くなってきた…。


「心配なさらなくても大丈夫ですよ、お嬢様!さて、気分転換にというわけではないですが、お夕食のご用意をさせていただきたいのですが、お嫌いなものなどございますか?」

「いえ、多分ないと思います…あの、夕食はどこで食べるのでしょうか?もしや国王様と…」


顔が引きつっている私に、ミリーも苦笑いだ。


「いえ、このお部屋にご用意させていただきます。特に女王様がぜひご一緒に晩餐を!と息巻いてらっしゃったのですが、今日1日お嬢様もお疲れかと思いましたので、アメリアの方でまた次の機会にということにさせていただきました」

「ありがとう!アメリア!ミリー!」


礼儀作法もなっていないのに、いきなり王族とディナーなんて私には荷が重すぎる。


あからさまにガッツポーズをする私にミリーは苦笑しきりだ。


「それでは早速ご用意させていただきますね」


~・~・~・~・~


夕食後、私は完全に放心状態だった。


前菜から始まり、スープにお魚にお口直しにお肉にデザート…しかも、そのすべてが豪華でもちろん美味しい。


ミリーが後ろで見守る中、(1人で食べるのも寂しいので、一緒に食べないかと誘ったが、滅相もありません!と断られてしまった)できるだけ上品に食べようと緊張して、味なんかわからないかも…と思っていたが、心配ご無用。

私の短い一生の中で間違いなく一番おいしい料理だった。

万が一、お告げが当たらなかった!といって、このお部屋から追い出される日が来ても後悔しない…というくらいおいしかった。


「フェリスティア様、寝所のご用意が整いました」


アメリアとミリーが2人揃って1日の終わりのご挨拶に、とやって来た。


「本日は色々とありまして、大変お疲れかと思いますので、ごゆっくりお休みください。明日はご朝食前にお支度のお手伝いに参ります」

「おやすみなさいませ、フェリスティア様」

「今日は本当に色々ありがとうございます、アメリア、ミリー。2人もゆっくり休んでね」


挨拶をして寝所とやらを振り向けば、これまた本やテレビの中でしか見たことがない、自分が5人は寝れそうな天蓋付ベッド。

リネン類はもちろん最上のさわり心地だ。


緊張続きで眠れるかと思っていたが、心配ご無用。

ベッドに潜り込んで3秒で眠りに落ちた。

お読みいただきありがとうございました!

つづきは明日の夜9時台に投稿予定です。

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