↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/105

その後5 裁判の行方3

今回も普段より長め&読みにくです…

「あっはっはっは!!ひーおっもしろーい!!楽しい女の子だね~」


ハロさんは宙を転げ回りながらお腹を抱えて笑った。

目尻には涙まで滲んでいる。

だからこの辺りの話はしたくなかったのだが、ルーベン様に「正しくすべてを伝えてきてください」と言われていたのでやむを得ない。


「…ハロさん、そろそろお話の続きに戻りたいのですが…」

「は~わらった~。うん、つづきね~。それでバランタイン家の裁判はどうなったの?」

「リード様、リューク様、ロザリア様も真否の石を使って証言に偽りのないことを確認し、その他の方からもこの件にバランタイン家が関わっているという証言、証拠は出ませんでしたので、本件に対してバランタイン家の関与はなかったという結論になりました」

「じゃ、無罪ってことだね」

「いえ、少なくともリカルド公爵様には騎士団長としての責任があります。その部分については罰金が課せられることになりました」

「かんとくふゆきとどき?」

「そうです。ロザリア様の行動が評価され、罰金額は減額になったものの、リカルド公爵様の騎士団長としてのお給金は半年分没収となりました」

「ふ~んきびしいんだね~」

「公爵様ご本人は「軽すぎる」と仰っていましたが」

「え~自分がやったわけじゃないんだから、いいじゃんね~。ねぇねぇ他の裁判はどうなったの?」

「責任感の強い御方でらっしゃるようなので…。はい、バランタイン家の後に開かれたのがルモンド家の裁判でした」

「あっ!サキュスをそだてた家だ!」

「はい、ルモンド家は毒草栽培、毒草による傷害、王政転覆ほう助、陛下らの暗殺未遂の罪で裁かれることになりました」


~・~・~・~・~


「陛下!!我らルモンド家は騙されたのでございます!!サキュスなどの薬草をあのように使われるなど思いもよらず、最後はアナスタシア家から脅されて泣く泣く栽培に携わっていたのでございます!」


しばしの休憩を経て、国王陛下の宣言の下、ルモンド家の裁判が開始された。

が、冒頭、陛下の罪状確認と本件に至った経緯を問われ、それに対して始まったのは、見る者を呆れさせるピカサ・ルモンドの情状酌量を求める泣き芝居だった。


「ピカサ伯爵?私は罪状とその時の状況をそなたの口から()()に聞きたい。よく話を整理して順序よく問いに答えてくれるかな?」


陛下はいつもの笑顔で問うているが、あきらかに困惑している風だ。


「陛下らの暗殺未遂などもってのほか!我らルモンド家は未来永劫、王家に忠誠をもって尽くしてまいりたい所存でございます!どうかわかってくださいませぇ!!」


そう大声で言い切ると、ピカサ様は大粒の涙と鼻水とよだれで顔中を濡らして被告人席に座り込んでしまった。

証人席に座る者も傍聴席に座る者も陛下すらも押し黙ってしまう。

芝居ですらなかったあまりに惨めな伯爵の様子に、皆呆れ返ってしまったのだ。


「…国王陛下、恐れながら申し上げます。父に代わり、私に発言の許可をいただけないでしょうか?ピカサ・ルモンドの息子、ピサロでございます」


冷めた静寂の中、恐る恐るといった感じで小さな声をあげたのはルモンド伯爵家の長男のピサロ様だった。

同じ学院の生徒であったが、ピサロ様は1つ上の学年のため、私がピサロ様を拝見したのは3回。

図書館でたくさんの本を抱えて歩いているの見た時とたまたま廊下ですれ違った時、そしてパーティーの際にピカサ様に連れられルーベン様に御挨拶にいらした時。

そのいずれの時も、男性にしては低めの背をさらに丸く小さくして歩いているのが印象的だった。


「許可しよう。父上に代わって私の問いに答えてくれるなら」

「ご温情に感謝致します。恐れながらご説明申し上げます」


ピサロ様はそのように御礼を伝えると、覚悟を決めたように前を向き、辿々しくも丁寧に説明を始めた。


~・~・~・~・~


「当ルモンド家は王都の北西部に領地をいただき、管理しております。以前、ルーベン公爵様からもご指摘があった通り、サキュスを育てるには絶好の栽培環境の土質、気候にございますが、農作物は単価の安いイモ類しか育たない、決して恵まれた土地ではございません。これまで当家は代々領民と共に細々とそれらを育てやって参りました。ただ領地発展のため、イモ類を育てるばかりではいけないと他に栽培できる食物、植物の研究を祖父の代から始めました。祖父は物静かで領地経営よりもそういった研究を好む人で、私は幼少期から祖父に様々なことを習い、祖父が亡くなった後はそれらの研究を引き継ぎました。祖父は研究の結果、領地で様々な薬草の栽培が可能なのではないかと仮説をたて、私はそれを実際に栽培することで立証致しました」


私は以前、ルーベン様が薬草についてはアーリア家が薬草の管理を事業として扱っていることを思い出した。

その際、「本当はもう少し栽培の幅を広げたいのですが、危険なものも多いためなかなか情報を外に広げることができない」と仰っていた。

ピサロ様とお祖父様が薬草研究をしていたということは、褒められた話ではないかもしれないが、ゼロから成功させたということは学術的にはすごいことだ。


「一方で父は祖父とは違い、領地経営に非常に積極的でした。行動力や交渉力もあり、領地をより豊かにしたいという野心をもった人です。父は祖父や私の研究をより迅速にルモンド家の事業に生かし、自身の代で家をより大きくしたいと考えていたのだと思います」


王家主催のダンスパーティーの際、ピカサ様がルーベン様のもとへ御挨拶にいらっしゃったのも、その野心故だったのかもしれない。

ルーベン様は下位貴族から上位貴族へのよくあるすり寄りや息子娘の結婚についての相談として、あまりお相手にはなさらなかったものの、領地を経営する伯爵としては、そういった営業姿勢もあるべき姿なのだろう。


「しかし、父は…いえ、我々ルモンド家は成果を急ぎすぎ、禁じ手をとってしまったのだと今ではわかっております」


ピサロ様は気持ちを落ち着けるように、ご自身の胸に手を当て1度深呼吸をし、話を続けた。


「学院の夏期休暇に入る少し前、アナスタシア伯爵が当家に自らおいでになりました。アナスタシア家と当家は以前より、たまに当主同士が狩りを共にしたりする仲でございましたのでお見えになること自体は不思議ではありませんが、夜も更けてから最小限の護衛を引き連れ、人払いをした上で父と長い時間話し込んでいるのはいささか不審でした。2人きりで2時間ほど話した後、私は部屋に呼ばれ、アナスタシア伯爵から薬草研究について問われそれに答えました。また、夜間でなにも見えない状況でしたが、伯爵に「ぜひに」と言われ、研究用の畑…薬草を植えた畑をご案内致しました」

「そこには、サキュスの他、今回の件で使われた薬草もあったのかな?」

「はい、陛下の仰るとおりでございます。栽培自体が禁止されていることは存じておりました。しかし…学術的興味から手を出してしまいました。申し訳ございません」

「判断は後だ。続けてくれたまえ」

「はい、ご案内した時はただ遠目に畑をご覧になっただけでお帰りになりました。しかし、後日その畑に参りますとちょうど今回の件で使用された種の、云わば毒草だけがきれいに意図的になくなっていました」

「それを盗んだのはアナスタシア家だと考えているのだね?」

「はい、父をはじめとする当家の者は薬草を見分けることはできません。アナスタシア伯爵は薬草の特徴や見分け方を私に詳しく問うていかれましたので。毒草は危険です。すぐに父にこの事を訴えたのですが、父はこの事について他言無用、黙っているよう私に言いました。そしてそのすぐ後、王国内で謎の病にかかる者が相次ぎ、それを巫女を名乗る女性が聖水を飲ませ癒しているという噂を聞きました。その症状や対処法が盗まれた薬草を応用すれば再現可能であることから、事の重大さに気が付きました。しかしそれは悪夢の始まりでしかなかったのです」

「その後どうなった?」

「私が噂を聞いて1週間ほど経ったある日、父の書斎に呼び出されました。そこにはアナスタシア伯爵もいらっしゃいました。伯爵は私に「先日の薬草は大変役にたった」と御礼を仰いました。もちろん私は自らお渡しした覚えはございません。しかし、伯爵には「そのようなことを言っても誰も信じない」、「薬草栽培はすぐに出所がわれる」、「お父上も了承済みだ」と言われました。父の方を見てもうなだれるばかりです。アナスタシア伯爵が何をお考えかはわかりませんでしたが、なにか大きな良くないことに巻き込まれていることはわかりました。そして続けて、「もしも薬草の件をバラされたくなければ、サキュスをはじめとする毒草を早急に大量栽培するよう」言いつけられました」

「君はその命令に従ったんだね?」

「…はい、許可なく薬草を栽培することは罪に問われます。伯爵家の者がそれを行ったとすれば、家は危機的な状況に陥るでしょう。それだけはなんとしても避けたかったのです。指定された毒草は手元に株が残っており、研究の結果、すぐに発芽させる方法もわかっておりましたので決して出来ないことではありませんでした」

「そうして栽培された毒草はアナスタシア伯爵の手にわたり、(くだん)の犯罪に使われた」

「その通りでございます。クロフォード殿下がこの城内ですべてを解き明かされたその時まで、私は毒草の栽培を続けました」


最後は涙声になりながらも、ピサロ様は説明を終え、その場で父の隣に座り込むと頭を床に擦り付け謝罪なさいました。


「最初こそ他意はなかったとはいえ、今回の件は私が育てた薬草なくして起こることはありませんでした。毒草栽培、そして毒草が用いられたことによる傷害、王政転覆ほう助、陛下らの暗殺未遂の罪、すべてを認めます。そして世界樹様と多くの方々に守られてきた大地を汚し、国に暮らす民を傷つけたことをここに謝罪致します。罪に対し、当然釣り合うものでないと自覚はしておりますが、私にはこれくらいしか差し出せるものかわございません。これらの罪、ルモンド家として私の命で償いたいと思っております。どうぞお考えいただけないでしょうか」


宜しくお願い致します、と再びピサロ様は頭を下げた。

ピサロ様の悲壮な決意に、広間は再び静寂に包まれた。



いつもお読みいただきありがとうございます!

ブックマーク&評価も励みになっております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。