その後4 裁判の行方2
ここから各人物のセリフが長い&説明調のため、特に視覚的に非常に読みにくいです。
ご容赦ください。
「そのような形で裁判は始まりました…ハロさん?」
ふと見ると、始めこそ腕を組み「ふむふむ」と話を聞いていたハロさんだったが、いつの間にかあぐらをかいてふわふわと飛んでいる。
「…大丈夫…つづけて~」
心なしか目がとろんとしている気もするが…。
私は報告を続けることにした。
~・~・~・~・~
まず始めに行われたのは、バランタイン家の裁判でした。
こちらには家の代表としてバランタイン公爵様が被告人席に立ちます。
公爵様のお子様達ーリード様、リューク様、ロザリア様は状況の説明があるため、証人席に座っています。
心中はお父様のことが心配なのでしょうが、さすが騎士貴族というべきか、皆様そんなことはお顔に出さず、しっかりと前を向いていらっしゃいます。
「リカルド・バランタイン、そなたはバランタイン公爵家当主にして、同家が代々勤めてきたグリンフィールド王国騎士団現団長であるな。そして長男、リード・バランタインは第1近衛兵団副団長、次男、リューク・バランタインは第2近衛兵団員である」
「はい、その通りでございます」
「リカルド、そなたは事件の前に私から受けた国境周辺警備についての視察の命令、そして併せて第1近衛兵団の半分の団員を引き連れての演習を移動日を含め約40日の予定で行っていたということで間違いないか?」
「はい、仰るとおりでございます」
「証人席にいるリードも父に同行し、主に演習のリーダーとして団を引率した。そしてリュークは時少し遅れて、王太子クロフォードの隣国への外遊に同行したということで間違いないか?」
「「はい、仰るとおりでございます」」
「これについては城にも公式な勅命書が残っているので証拠がとれている。さて、まずはリカルド、城を出発してからの行動を説明してくれ」
「はい、城を出発して1週間で南の国境の町、ヘルンに到着致しました。こちらは隣国マルネシアとの国境に位置しておりますが、マルネシアでは近年、軍独裁政権と国民の間での小競り合いが続き、国境周辺でも小さな戦闘が散発しております。私はその状況の確認と国境警備について話し合い、また第1近衛兵団の遠征演習の視察を2週間で行う予定でした。警備に関する話し合いも終わり、演習も佳境に入っていたヘルン滞在23日目、城を出発して30日目に城よりクロフォード殿下のお名前で“大至急、城に戻れ”との命令が伝令係によってもたらされました。本来公務のため他国にいるはずのクロフォード殿下直筆の書面、そして伝令係も殿下の護衛として同行したはずの第2近衛兵団員であったため、至急王城に戻った次第でございます。ただ、戻った時にはクロフォード殿下が極秘裏の調査を終え、すべてを解き明かそうという時でした。王城の1つ手前の町で殿下からの使者と打ち合わせをし、その時の状況と今後の予定を聞いた私は、毒草に冒されていない遠征に参加していた近衛兵団を自ら率い、国王陛下と王妃様の救出作戦を決行致しました」
「クロフォード、今のリカルドの説明に異論ないか?」
「はい、陛下。リカルド公の説明に相違ありません。巫女の偽者が仕立てあげられ、私の婚約を勝手に破棄した件の大まかな調べがつき、事件の道筋が見えたところでリカルド公宛に伝令の使者を遣わせ、王都に戻ってきてもらいました。この事件の犯人がわかり、その証拠や陛下らの居どころの見当がついたところで使者を送り状況を説明し、私がその証拠を元に犯人達を捕縛する裏で、リカルド公には陛下らの救出を命じました」
「リカルド、そなたは巫女の偽者が仕立てあげられた件、そしてその経緯である毒草の栽培、国内での流布、毒草を用いて国王である私や王妃、国の守り手でもある近衛兵や貴族達を傷つけ、クロフォードの婚約を断りなく破棄するなど王室の体制に混乱を生じさせた件、そのすべてに関与していないと断言できるか?」
「はい、世界樹様に誓い、断言致します」
「ここに真否の石を」
陛下がそう仰ると、文官が黒塗りの美しい小箱をもってきて蓋をあける。
そこには透明の水晶のような手のひらサイズの楕円形の石が鎮座していた。
「これは世界樹様より初代国王が賜り、代々王家が受け継いできた宝玉、真否の石。質問を投げ掛けられた者がこの石を持ちながら答える。その答えに偽りがなければ石は白く濁る。もしも答えが偽りであった場合、石は黒く濁る。これをリカルドに持たせなさい」
文官からリカルド様に石が渡される。
場内の空気がはりつめたものに変わるのがわかった。
「リカルド、改めて問おう。そなたはこれらの一件に自ら、そしてバランタイン家として関与していないと誓えるか?」
「はい、誓います」
リカルド様の言葉に応じるように石は色を変える。
色は―白だ。
広間から詰めていた息が漏れる音がした。
ロザリア様のお父上が関わっているはずがないとわかっていても、いざこうして試されると本人はもちろん、周りも緊張するものだ。
「リカルドの今の説明は真と認定しよう。続いてクロフォードとリューク、そなたらは私からの命令で、先方へのご挨拶や今後の交易などにつての相談のため、北の隣国ヨルダノンに行っていたね?こちらも勅命書が残っているので真偽に問題はない。クロフォード、城を出発してから戻るまでの経緯の説明を」
「はい。リカルド公らの一団が城を出発して10日後、私はリューク・バランタインを含む第2近衛兵団を供につけ、ヨルダノン王国へ出発しました。途中、各町の視察を行いながらヨルダノン王国の城に着くまで3週間を予定しており、15日目に国境を通過する予定となっておりました。しかし、出発から13日目、道中の森の中でバランタイン家の令嬢、リュークの妹でもあるロザリア・バランタインが早馬に乗って私たちのもとにやってきたのです」
「ロザリア・バランタイン、その経緯は」
「はい陛下。父が城を発ち18日後、クロフォード殿下が城をお発ちになって8日後、陛下の御名で貴族等への召集命令が届きました。バランタイン家は当主である父、また名代となるべき兄らも不在のため、親交のあるカサンドラ家に代理出席を依頼し、後に母と共にその場で巫女の偽者の断罪とクロフォード殿下の婚約破棄が参集の内容であったことを伺いました。その様子や内容がおかしいと感じ、なんと表現しましょうか王国にとってなにかよくないことが起きているのでは、と感じました。杞憂かもしれませんが、なにもせずに、なにかことが起こって後悔するよりも、行動を起こして後悔したほうがいいと考え、私の独断でクロフォード殿下の御一行にこの事態をお伝えし、真偽を確認すべく、馬を走らせた次第でございます」
「ロザリア嬢としては、父上のいる南のヘルンへ向かう手もあったはずだが、なぜクロフォード一行の方へ向かう決断をしたのかな?」
「理由は2つございます。1つ目はヘルンよりもヨルダノン国境方面の方が私にとって土地勘があり、また馬を走らせやすい道であったこと。2つ目はこの断罪も婚約破棄もおそらく虚偽であり、もしもの際、王族であられるクロフォード殿下直接のご指示が必要になる可能性があったためでございます」
「ん?ロザリア嬢がこの偽巫女騒動と婚約破棄が虚偽であると判断したのはなぜだ?」
「クロフォード殿下がフェリスティア様を心の底から愛していらっしゃるのに婚約破棄などするはずがないからでございます。殿下はかねてより近衛兵であり、親しき友としてもお付き合いいただいている次兄リュークに「フェリスティア様の心根のお美しさはまさに聖女のようだ」、「あの天色の髪が揺れるたびに心臓が波打つのを止められない」、「彼女とファーストダンスを踊ることができた」、「求婚が断られたらどうしよう、立ち直れないかもしれない」、「どうしよう、俺の婚約者がかわいすぎる」、「学院の夏期休暇中、仕事したくない。フェリスティアと旅行やデートに行きたい」、「彼女が俺のそばからいなくなったら生きていけない」などなど。私にも「フェリスティアの好みのプレゼントはなんだろうか」などと聞いてこられた程でございます。そんなにまでもフェリスティア様そのものを溺愛なさっているのに、なぜ急転直下、「巫女でなかった」などというフェリスティア様のたかだか一面のみを見て婚約破棄などなさいましょうか。少なくとも婚約破棄については偽でありましょう。また、この騒動で本当にフェリスティア様を失うことがあっては、我らが国は王太子殿下をも失ってしまいます。いち速く殿下にご報告にあがらねばと考えた次第でございます」
陛下がいつもの余裕ある笑みのまま、目を見開いて固まっていらっしゃる。
傍聴席にいる貴族たちも似たようなものだ。
ポカンとする者、事前に配られていた資料をめくる手が止まり固まっている者。
被告人席に立つリカルド公爵は頭を抱えている。
そして私達…クロフォード様はご自身の前の机に突っ伏している。
腕から見えている耳は赤くなっている。
私は両手で顔を覆い、必死で真っ赤になった顔と今にも叫び出しそうな口を押さえていた。
「ふっ!ふふふ…あ、ごめんなさい!あんまりかわいいエピソードだからつい!」
生暖かい静寂を破ったのは、陛下の玉座の1つ後ろにお座りになっていたシェリル王妃様だった。
「…ロザリアは冗談とか通じないから…」
リューク様が苦笑いでぼそりと呟いてらっしゃいました。
妹にクロフォードのフェリスティア溺愛ぶりをしゃべってしまっていたリュークはこのあとめちゃくちゃクロフォードにキレられることになります、という後日談です。




