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世界樹との邂逅2

なかなか遅くすみません

「これからが本番だね」


無事に世界樹様と和解することができ、皆がほっとできたためか、辺りは和やかな空気に包まれていた。


しかし、クロフォード様だけが厳しい表情のまま、ポツリとつぶやいた。

心配になり、その顔をのぞきこむと少し疲れたような笑みを見せてくださる。


「毒草に汚染された大地を元に戻さなくていけない。実際に毒草が植えられたエリアから毒素が染みだすよう汚染が進んでいるようなんだ。これを浄化して元通りにするためには長い時間がかかるだろう」

「そのことについては問題ない」


そう仰ったのは世界樹様だ。


「フェリスティアが嵐を散らした時、金の雨が降っただろう?あれは浄化の雨だ。元々嵐による風で大地の上にあるものを全て亡きものにし、雨で大地を浄化するつもりだったのだ」


改めてもしも嵐を消し損ねていたら…そう思うと体の芯がひんやりとする。


「此度は雨だけが地上に注いだ。ゆえに雨の降った場所は浄化されたはず。もちろん十分とは言えんがの」

「世界樹様、ありがとうございます」

「偶然だ。礼には及ばん」


クロフォード様はほっとしたお顔でお礼を伝える。

ただ雨が降った範囲は、国を覆うほどではなかったはずだ。

毒に侵された土地は本当に浄化されたのだろうか。


1人思案していると、クロフォード様が教えてくださった。


「大丈夫。フェリスティアが雨を降らせたのはちょうど毒草を植えたピカサ伯爵の領地の上だったんだ」

「害された場所はわかっておった。そこを重点的に壊滅させ、浄化したかったのだ。嵐の卵は一つ一つが我の意思。我の願いを叶えようとしたのだろう。土地のことはよい。しかし、お主のもうひとつの問題は我ではどうすることもできん」


その言葉にクロフォード様は唇を噛み、苦い表情を浮かべる。


「世界樹様、クロフォード様?どういうことですか?」


~・~・~・~・~


「父と母の意識が戻らないんだ。サキュスを嗅がされた量と期間が長かったせいだ」


クロフォード様が苦しそうに話されたところによれば、サキュスを使って近衛兵が最初に洗脳された後、国王様と王妃様は監禁されてしまったらしい。

陛下だけがお持ちの「国王命令」がだせる羊皮紙の場所などを聞き出し、“急病のため寝たきり”と言える状態にするため、大量のサキュスが咲き乱れる部屋にお二人を閉じ込めたのだ。


そもそもクロフォード様が外遊を切り上げ、予定を早め国にお戻りになったのは、婚約破棄・断罪の状況を知り、不審に思ったロザリア様が極秘裏に国を脱出しクロフォード様にお伝えしたのがきっかけだったのだそうだ。

ロザリア様の報告と追ってすぐに届いたエレーナ様からの情熱的なお手紙により、今回のことが自らの意思どころか国王陛下のご意志ですらない、国を脅かす事態であることを確信。

帰国後、ルーベン様や信頼できる臣下のみで調査団を結成、エレーナ様と親交を深めるフリをしながら状況を調べ始めたのだそうだ。


疑っていることを悟られぬようにするため、陛下の居所や状態を無下に確認することもできず、証拠を固めてアナスタシア家やルモンド家を断ずる段階でようやく陛下らにお会いすることができたのだそうだ。


その時にはすでに、お二人とも毒漬けになっており、意識ははっきりとせず、意思の疎通がはかれない状況になっていた。

すぐに薬を飲み、薬草のプロであるルーベン様や王室医が経過を診ているものの、体内に取り込まれた量が多かったため、回復には時間がかかると言われたのだそうだ。


「そんな…世界樹様…国王様、王妃様は…」


声が涙ぐんでしまい、二の句が継げずにいる私に世界樹様は優しく諭す。


「人間の今はわかっても、未来までは我にはわからぬ。ただ、おぬしらには“想い”という力があるのだろう?それを信じるしかない。治療をしている者達や、なにより王や王妃自身のそれを」

「…はい」

「まぁ手助けくらいはしてやろう。フェリスティア、これを持っていくがよい」


世界樹様はそう仰るとご自身の髪を揺すり、若葉のついた枝を私の手元に振り落とした。


「我の葉をつけた枝だ。国王達の休む寝所に生けておくといい。周りの空気を清浄に保つことができる。直接に毒を消すことはできぬが療養の助けくらいにはなるだろう」

「世界樹様!ありがとうございます」

「今まで石に込めていたのと同様に水に力を込め、枝を生けた花瓶の水をそれと毎日取り替えよ。さすれば葉は枯れずに済む」

「承知致しました。ありがたく頂戴致します」


クロフォード様と二人、改めて深くお辞儀をすると、周りで見守っていた精霊達が集まってきて次々に私達の頭を撫でていく。

まるで励ましてくれているようだ。


「フェリスティア、きっと大丈夫!姿はみせられないけど、ぼくもお見舞いにいくよ!」

「ハロさん、ありがとうございます」


最後にハロさんが飛んできておでこにキスをしていく。


「そろそろ頃合いだな。向こうもまだ混乱しているだろう。二人とも自らの世界に戻るといい」

「世界樹様!最後に1つ宜しいでしょうか」


クロフォード様が決意の表情で世界樹様を見つめる。

世界樹様は無言でクロフォード様に続きを促した。


「この度の事、そして世界樹様の存在と過去を国民に伝えたいと考えております。我々は今こそ、今まで世界樹様に支えられ生きていきた歴史を知り、先王との約束を果たす時だと思うのです」

「…クロフォード、そなに任せよう。我はここで成り行きを見守る。心の準備はできておる」

「ありがとうございます。必ず嘘偽りなく、民に伝えます」


私はそっと、しかし強く隣のクロフォード様の手を握る。

クロフォード様のお側に立つものとして、私もしっかりと頑張らなければ。


「クロフォード、フェリスティア、これからおぬしらを元の場所に送り返す。今後このような形で会うことはない。…息災でな」

「世界樹様、本当にありがとうございました」


二人でお礼を伝え頭を下げたその時、私達の周りを強い風が吹き荒れた。

その風によってふわりと体が浮かび上がる。

とっさにクロフォード様が強く抱き締めてくださった。


「世界樹様!!本当にありがとうございました!!どうぞ末長く息災で!」


風に掻き消されながらも声を張り上げたが、感謝してもしきれない、この気持ちは伝わっただろうか。


(我の方こそ、ありがとう―)


意識が遠のく中、幻のような囁きが耳元をすり抜けていった。

お読みいただきありがとうございます。

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感謝です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王も王妃も自業自得だよね(笑)覚悟がある事とやるべきことは違うしなんの抵抗もせず諦めたが如く受け入れるぐらいなら端からなるなよ。
2022/02/05 08:47 退会済み
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