精霊の気持ち
「フェリスティア大丈夫?きゅうけいしなくてへいき?」
「ご心配おかけし申し訳ございません。私は大丈夫なので先を急ぎましょう」
嵐の卵を探す旅に出て3日。
ほぼ不眠不休で動き、嵐の卵を消すために霊力を使い続けているため、私の体力がもたない。
精霊さんは基本的に食事や睡眠を必要としないということで、私が足を引っ張ってしまっている形だ。
ご協力いただいている身なのに申し訳ない。
「やっぱりダメ。フェリスティア、1回お休みしよ?」
ハロさんはそう言うと、普段は私の意思で動いてくれている緑のじゅうたんを自分の風で近くの森へと着陸させた。
~・~・~・~・~
「はいフェリスティア、これ、あまくておいしいよ」
「すみません。いただきます…」
ハロさんさんが森の中でとってきてくれた果物を2人で並んで食べる。
「ねぇフェリスティア、そんなにあやまらなくていいんだよ?」
「…ハロさんは何も悪いことをしていないのに、私の都合で振り回してしまっています。それが申し訳なくて」
「これはぼくが好きでやってるんだからいいんだよ。それにフェリスティアだって悪いことしてないよ?」
「ですが…」
「フェリスティアは優しいね。でもほんとうにこれはぼくがやりたくてやってるんだ。きいてくれる?」
「はい」
「母さんね、大地がよごされた時、とってもおこってた。でもたぶん、それ以上にかなしかったんだとおもうんだ」
「世界樹様が悲しんでらっしゃったんですか?」
「うん、母さんが赤ちゃんの木だったときね、「木がうごくのは変だ」って人間にもやされそうになったんだって」
「ひどい…迫害にあったのですね」
「そのとき、母さんをたすけてくれたのが、今のこの国の王様のご先祖様だったんだって」
「もしかしてその方がグリンフィールド王国を創建した方ですか?」
「うん」
「母さんはそのことに感謝して、その人がこの土地に平和な国をつくりたいっていったとき、協力してあげることにした。2人は人間と精霊がお互いの力で大地をゆたかにしあうことを約束したんだって。その時にその証としてつくったのが『約束の石』なんだ」
言葉を失ってしまう。
両者の間にはこんなにも長い絆があったのだ。
「約束したけど、たぶん、母さんはいつもどこかでこわがってたんだ。その人だから優しくしてくれた。他の人間はちがうんじゃないか、またもやされちゃうんじゃないかって。だから今回、おこって嵐をおこしたけど、でもまだ人間をしんじたい気持ちもあって、まよってるから“嵐の卵”にしたいんじゃないかな」
「世界樹様はずっとおつらい思いを抱えてらっしゃったんですね」
「まぁぼくの想像だけどね」
精霊さんはふわりと飛び上がると元気に私の回りを飛び始めた。
「だからね、ぼく、嵐の卵をぜーんぶけして、大地もきれいにして、母さんに他の人間のことはよくしらないけど、フェリスティアはちゃんと大地のことをかんがえてるよ!ってつたえたいんだ!フェリスティアはぼくらに優しいよ!って」
「ハロさん…ありがとうございます。では頑張らなくてはですね!」
「うん!頑張ろう!」
こんなところで座り込んでる場合ではない。
私もハロさんのように元気に頑張らなくては。
そう思い、勢いよく立ち上がった時だった。
「いたぞ!脱獄した罪人だ!!」
私はあっという間に兵士たちに囲まれ、捕らえられてしまった。
~・~・~・~・~
完全に油断していた。
ハロさんとの話に気をとられ、近づいてきた兵士たちに気がつかなかったのだ。
あっという間に捕らえられ、連れてこられたのは謁見の間だった。
あの時と同じように多くの貴族が、国王陛下の玉座へと続く紅い絨毯の脇にびっしりと並び、こちらを見ている。
刺さるような視線が自分1人(ハロさんは「一緒にいく!」と仰ってくださったが、精霊は巫女にしか姿を見せないきまりだ、と説得し1度世界樹様の元にお戻りいただいた。)に注がれている状況に畏縮してしまう。
「お集まりの皆様、間もなく王太子殿下がいらっしゃいますのでお待ちくださいませ」
クロフォード殿下がお見えになる。
書面での婚約破棄から初めてお会いする。
そう思うと心臓の音が急に大きく聞こえてくる。
しっかりしなきゃ、と思うのに指先がどんどん冷たくなってきた。
「王太子殿下がお見えです!!」
文官の呼び掛けに、貴族達は最上位の礼をとる。
私も同様だ。
冷静に、冷静に。
玉座の奥から王太子殿下が登壇なさる。
「皆様、頭をおあげくださいませ」
文官の合図で礼からなおる気配がした。
「罪人、フェリスティア・アーリア。頭をあげろ」
クロフォード殿下―。
文官に言われ、恐る恐る頭をあげると目の前には厳しいお顔の殿下とその傍らにエレーナ様が寄り添っていらっしゃった。
その2人のお姿に涙が滲む。
本当に私は殿下の婚約者ではなくなってしまったのだ。
「罪人よ、本来貴様の罪への罰は“斬首刑”ですでに確定している。しかし、此度は何故に脱走を企てたのか、貴様の言い訳を聞いてやろうという王太子殿下のご恩情により開かれた場だ。感謝しろ。お集まりの皆様、お耳汚しになるかと存じますが、どうぞ王太子殿下のお優しさに敬意を払い、しばしお時間をくださいませ」
そこまでを一息に言い切ると文官は、殿下達と集まった貴族達に対し、恭しく礼をした。
「さぁ罪人よ、最後のチャンスだ。言い残した事があれば言うがよい」
これが最後のチャンス。
私は静かに深呼吸をし、気持ちを整え前を向き口を開いた。
60話到達です。ここまでお読みいただきありがとうございます!




