告白
お陰様でようやくここまでたどり着きました。
いつもお読みいただきありがとうございます!
「少し風が出てきましたね。寒くないですか?お迎えが遅くなってしまい申し訳ございません」
「大丈夫です。あの、王太子様にご足労をおかけしてしまい、こちらこそ本当に申し訳ございません」
散策に案内を付けてくださると聞いてはいたが、まさかその役が王太子様とは思っていなかった。
泊まりがけの公務とこれからお仕事でお忙しいだろうに、申し訳ないことをしてしまった。
「お気になさらず。私が自分からやると言い出したことですから」
「え?」
「それよりほら!あの張り出している所が“精霊の間”ですよ」
そう王太子様が仰って指差したのは、城の3階、南西側の壁から張り出して作られた一室だった。
「壁面のステンドグラスはこんな風に付いていたんですね」
私が外から精霊の間を見たかった理由、それは部屋のステンドグラスだ。
精霊の間は天井のステンドグラスが印象的だが、部屋半分ほどの壁にも青や緑のステンドグラスが埋め込まれている。
これが部屋の中に柔らかで波や風を思わせる光を取り入れていて、内部をより明るくそして神聖なものにしているのだ。
「本当に綺麗です。見られてよかったです。ありがとうございます」
「フェリスティア嬢、あちら側を見てみてください」
「!すごいです!!」
お城の周囲には白い石畳が敷き詰めらている。
その真っ白な地面に、ステンドグラスの大きな光の影が映り、美しい模様となって漂っているのだ。
思わず駆け寄り、その光の中に立ってみる。
太陽光の強さや角度によるのだろう。
青や緑の波状の光は四方数十メートルにもなる巨大なもので、幻想的な海の底に立っているようだった。
「この光の影は季節や天気、日射しの強さなどの条件が揃わないと見られない珍しいものなんです」
王太子様もいつの間にかこちらに追い付き、同じく光の中に立っている。
その姿はおとぎ話の王子様そのもので、思わず見とれてしまう。
「今日、貴女にこれを見せられて本当によかった」
「本当に素敵なものをありがとうございます」
「いや、こちらこそお礼を言わなきゃいけないんだ。絶好のチャンスをもらったからね」
「チャンスですか?」
王太子様と目が合う。
その瞳があまりに真剣で目が離せなくなる。
「今日、お迎えにあがるのが遅くなってしまったのは、案内役のお役目をいただくのに時間がかかったのと、国王陛下やルーベン神官長に先に話をしてきたからです。きっと貴女はその辺を気になさるだろうから」
「王太子様?一体の何のお話でしょうか?」
「両者とも貴女の思いのままに、貴女自身の意思を尊重すると言っていました。だから、これから話すことは、誰への気遣いもいりません。貴女の気持ちを教えてほしい」
クロフォード王太子様は一体何の話をなさっているのか…。
全く話が読めない。
「初めて会った時は記憶がない中、不安なはずなのに、水不足の国民を心配してくださったこと、優しい方なのだと思いました。」
私もあの日、湖畔で助けていただいたことを思い出す。
初めて見た王太子様は、本の中の王子様のような麗しさだった。
「雨を待つまでの間、体調を崩したと聞いた時、貴女の力になりたい…貴女を守りたいと思いました」
あの時、バルコニーに突然現れて本当にびっくりした。
でも心細かったあの時、王太子様からいただいた励ましは私に勇気をくださった。
「学院のダンスパーティーの時、貴女の初めてのダンスはぜひ僕がお相手したいと思って、リュークに貴女が他の方を相手にしないよう、護衛してもらっていたんです」
…そういうわけだったんですか。
「あの時は色々と話せて本当に楽しかった。そして王室主催のダンスパーティーで、僕を気遣う言葉をもらって、胸の内が温かくなるのを感じました」
私はあの時、王太子様の素晴らしすぎるご尊顔のアップに卒倒するかと思いました。
「今回の公務、キアヌの人たちのため、色々と考え、力を尽くしてくれたこと、本当にありがたかった。そして、ただ優しくて守られるだけの存在でない、貴女の強さを見た気がしました」
この世界に来てからの、短いけど鮮烈で大切な思い出の数々。
本当に色々なことがあったのだ。
…ただ、王太子様はなぜ急にこんなお話を?
「2人で貴女の作ったアップルパイを食べたとき気づいたんです。貴女と話していると、普段気を付けている口調が素に戻っている。王太子としてではなく、クロフォード・グリンフィールドという1人の人間として話せていること」
「ようやく自覚しました。僕はそんな貴女を好きになっていたんです。貴女と共にこれからを生きていきたいんです。僕の妻になっていただけませんか?」
私はずっと自分なりに努力してきた。
勉強したり、教養を身に付けたり。
それは好きでやっていたわけじゃなくて。
そうやって努力して、求められるものを身につければ、愛してもらえると信じ込んでいたから。
結局、元婚約者はそんな私を選ばなかった。
愛してはくれなかった。
両親だって、私を愛してくれていたか怪しいものだ。
でも、クロフォード王太子様違った。
私の身に付けたものではなくて、そこに至るまでの私自身を見てくださったのだ。
「…ありがとうございます」
一筋、熱い涙が頬を伝うのがわかった。
うれしい。
誰かに好きだと言ってもらえた。
一緒に生きたいと言ってもらえた。
しかもそれを、クロフォード王太子様に。
「ぜひ王太子様と共にこの先の道を歩ませてください。宜しくお願い致します」
王太子様が頬の涙をそっと指でぬぐってくださる。
そして私の耳元で囁いた。
「ありがとう、なにがあっても必ず君を守り、愛することを誓うよ」
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次話ですが、明日は投稿をおやすみします。
明後日以降、またよろしくお願い致します!




